海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

米国人女性による骨太な中世フランス料理歴史書 | 『味覚の歴史 フランスの食文化-中世から革命まで』バーバラ・ウィートン 訳:辻 美樹

年初に一時帰国した際に実家の本棚から持ち帰った積読本(20年弱!)です。

 

私事ですが、家内は結婚後退職し、どういうわけか調理師学校に通いだしました。おかげで私は専業主婦兼調理師というとっても贅沢な奥様と時を過ごせているのですが、そうした結婚前後にむくむくと湧いてきた食への関心から本作を買ったのだと思います。

 

当時、株式投資で儲けたお金がありました。ビギナーズラック。その金で、プロポーズ後に行った『ひらまつ』の素晴らしいコースを思い出します。残念ながら味は「おいしい」という印象しか記憶にありませんが。それよりも強く記憶に残るのは、私のメニューにはプライスが掲載され、家内のメニューにはプライスがなかったことです。話がかみ合わなくって、結局見せ合いっこしましたけれど笑

二人で10万円くらい使っちゃいましたが、良い思い出です。

 


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ひとこと

ズバリ、フランス中世の料理歴史書

 

骨太な中世フランス料理の歴史

本作、骨太な料理歴史書です。もうそれ以上でも以下でもありません。

とりわけルネサンス前の中世からフランス革命前後くらいまでの期間のフランス料理の変遷をたどっています。

・・・

14・15世紀の王侯貴族による権威の誇示という位置づけから、16-17世紀にかけ、口承によるレシピが紙・印刷による流布により、料理が開かれてゆく様子を描くのも乙なものでした。

・・・

フォン・ド・ボーなどもこの時期に開発され、いわゆる「レトルト」?の原型を見るといってもよいかもしれません。ただ、記述は中世フランス料理の軸から離れず、「即席・レトルト」からの切り口はそれ以上は深まりません。

・・・

あと一つだけ蘊蓄。フランスにイタリア料理のテイストを持ち込んだのはカトリーヌ・ド・メディチだという都市伝説。筆者はこれは違うとの意見です。そもそも仏伊は以前より交流も多く、カトリーヌが嫁入りに来仏したときはまだ14歳、しかもその当時夫は王位継承は確定しておらず、カトリーヌの影響力はそこまでなかっただろう、とのことです。

まあ、それはそれで「へぇー」ってなりますが、金持ちの貴族が嫁入りに母国の文化とともに料理も持ち込んだ、というストーリのほうが、なんというか華があって「らしい」ですよね笑。

 

この米国人の筆者、何者!?

それとね、実は作者はアメリカのおばちゃん(失礼しました!)。いや、本当に偏見ではありますが、米国人はLサイズのハンバーガーとダイエット・コーク(こちらもLサイズ)をこよなく愛し、味覚という点ではいまいち!?という印象があります。

この米国人女性がどうして料理に関心を持ち、図書館に通い調べものをしながら、最終的に自分で本を書くまでに至ったのか、むしろそちらのほうが少し気になりました。Wikipediaを確認しましたが、料理研究家的な立ち位置は分かりますが、詳細はよくわかりませんでした。

 en.wikipedia.org

 

米国の料理関係者というとジュリア・チャイルドが有名ですね。私には半分以上メリル・ストリープの印象ですが笑

 

好きなものを見つけ、その対象を熱心に追い求める姿は素敵です。きっと筆者も苦しくも楽しく執筆したのかな、と夢想しました。

おわりに

ということで長尺の中世フランス料理の歴史本でした。

フランス語も分からず、料理用語(これまたフランス語)もほとんど分からんので、文字だけで内容を追うのは少ししんどかったかもしれません。

それでも、「食べる」という行為、人には欠くべからざる行為であり、無限の組み合わせと工夫が可能な分野です。フランス料理といういちカテゴリーだけではありますが、その変遷の豊かさにしばし酔いしれました。

 

本作品、料理好き、フランス好き、中世ヨーロッパ好きにはおすすめできる作品かと思います。

 

評価     ☆☆☆

2023/05/17

 

 

 

 

貴重なお時間を頂きまして、ありがとうございました。

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