海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

孤児院出身の二人の異なる人生。 |『境遇』湊かなえ

ここ数カ月、野球の先発投手よろしく自分の読書にローテーションが出来つつあるのを感じます。

伊坂幸太郎村上春樹恩田陸湊かなえ西加奈子、の諸氏。このあたりがローテーションの柱。次の候補として呼び名が上がるのが塩野七生中村文則白石一文の諸氏。

これらを順繰り順繰り回していくような読書です。

 

本当は、日々割り当てているビジネス書、英語のペーパーバック、そして聖書がメインで学びたいところ。で、その合間・息継ぎ・息抜きとして小説を読みたい、という意識ではあります。

 

残念ながら、結果として小説を読む量が圧倒的に多い笑 まあ脳の血管を詰まらせた前科がありますので、あまり無理せず、一日一歩、Baby stepで成長することを心がけたく思います。

ということで本日のローテーションは三週間ぶりの湊氏の作品です。

 

はじめに

イヤミス湊かなえ氏による2011年出版の作品。ドラマ化が前提となっての書下ろしとのことで、当年末に朝日放送系列にて放映。

 

 www.asahi.co.jp

 

 

あらすじ

異なる孤児院出身の陽子と晴美。

一方は孤児院からすぐに里子として引き取られ、大事に育てられた上に政治家の妻として輿入れ。他方は18歳まで孤児院に留まり苦学の末に新聞記者に。

学生時代の、とあるボランティアで知り合った二人は同じ境遇を経験した友人として以降信頼を深める。

時はくだり、政治家の妻として奔走する陽子は、親友晴美の話を絵本にしたところ、これがヒット。インタビューやテレビ出演が続き、夫の政治活動にも影響を与えるかと思われるさなか、愛息の裕太が誘拐される。一体犯人は・・・。

 

愛憎たっぷりに描く人間描写

実は読み始めから、何か劇的な始まりだな、二時間ドラマみたいだな、と感じていました。

あとがきを読んだところ、もともとドラマ放映を前提とした書下ろしとのことで、なるほどと納得。

 

相変わらず湊氏の作品は面白いですね。何が良いかって、やはりバッチバチに陰湿な人間模様描写です。

 

本作でいえば、同じ境遇を経験している晴美と陽子ですが、親友然としているなかでどこかすれ違いがある。

また政治家の家に嫁いだ陽子ですが、後援会長の娘亜紀(本当は陽子の夫正紀と結婚するつもりだった)との無言の確執がある。

そして嫁姑関係として、跡継ぎを生まない子どもは嫁ではないとか、どこの馬の骨か分からない人を連れてきてなど、あからさまな当てつけを食らう。で、陽子は対して無言。

 

これらは、ドラマですので誇張はあるものの、世間でもままある典型でもあり、それが読者あるいは視聴者の支持を生むのでしょうかね。

 

日本文化かどうか分かりませんが、はっきり言わずに遠まわしに嫌悪感を示すところがドロドロして良いです笑 特に陽子の子ども(跡継ぎ!)の裕太が誘拐されて、みんながテンパってきて、今まで胸にしまっていた鬱屈みたいなのが徐々に出てくるところがまたイイですね。バトル勃発的な雰囲気が笑

 

ドラマ配役も気になる

さて、先にも述べましたがドラマ化されているということで、改めて配役を見ますとこれがまた興味深い。

政治家の嫁陽子は松雪泰子さん、そして親友の晴美はりょうさんが演じます。

陽子の夫で政治家の正紀が沢村一樹さんというのは、ふうん、という感じなのですが、親友でサポーターの岩崎さんを演ずるのが東幹久氏。二枚目俳優の彼が依怙地で頑固な印象の岩崎をどう演じたのか気になります。

その他、正紀の秘書に収まった(元・嫁候補)亜紀を演ずるのが田畑智子となかなかの個性派をキャスティング。

 

今となっては配役の顔に「懐かしい~」みたいな気持ちが強いのですが、オンデマンドでどこかで見れたらいいなあ、と思いました。

 

おわりに

ということで湊作品を読了した次第です。

相変わらずのエンターテイナーぶりでした。やや陳腐と感じる展開も、だからこそのマンネリ的予定調和的な部分に快感を感じます(え?感じない?)。

 

ドラマ好きの方にはお勧めできる作品でした。おひとついかがでしょうか。

 

評価 ☆☆☆

2024/07/12

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