皆さんこんにちは。
仕事がにわかに忙しくなり、読書はしているものの、備忘録がつけられぬ状況です。
本書も、一週間前に読了したもの。
より短く、端的に記録する、というのもで良いのかもしれませんね。
はじめに
村上春樹氏の短編小説。1983年出版なのですが、村上氏のデビューが1979年であることを考えるとかなり初期の作品になると思います。
軽妙で幻想的
どうも村上氏の作品のイメージというと、<僕>という、アイデンティティ・クライシスに陥った主人公が新しい彼女との出会い・性愛を通じてカタルシスを得る、なんて簡単にいうとファンに怒られそうですが、そういうイメージがありました。ごめんなさい。
で、本作はどうかというと、全般的に軽やかです。
短編ですし、内容や書きぶりも軽妙で、なんというか80年代の都会的、不夜城のオフィスビルやタクシー、飲み屋街の喧騒、そういう雰囲気が合うような短編群だったと思います。
加えてちょっとシュールで幻想的。ここが村上テイストっぽい感じでもあったと思います。
作品群
ちなみに作品のタイトルを挙げておくと以下の通りです。全18篇。
「カンガルー日和」「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」「眠い」「タクシーに乗った吸血鬼」「彼女の町と、彼女の緬羊」「あしか祭り」「鏡」「1963/1982年のイパネマ娘」「バート・バカラックはお好き?」「5月の海岸線」「駄目になった王国」「32歳のデイトリッパー」「とんがり焼の盛衰」「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」「スパゲティ―の年に」「かいつぶり」「サウスベイ・ストラット」「図書館奇譚」
一番気になったのは「図書館奇譚」でしょうか。
図書館でトルコの収税の歴史を調べに来た中学生くらいの男の子が図書館の秘密?の部屋に閉じ込められる、という話。謎の美少女と羊男に助けられ何とか脱出するという筋ですが、「羊をめぐる冒険」(1982)や「ダンス・ダンス・ダンス」(1988)に登場する羊男が、ここでも登場します。
また、「彼女の町と、彼女の緬羊」も北海道の小さな緬羊の村をリポートするテレビのワンカットを題材にしており、羊繋がりを感じさせます。
その他、シュールな感じが軽妙かつ村上氏らしいと感じたのが、以下の作品。
くたびれた運転手が自分は吸血鬼だと言い張る「タクシーに乗った吸血鬼」。あしかが青年の家に押しかけ、「象徴性」とか「形而上学での」などの晦渋な言葉を使い寄付を募る「あしか祭り」。謎の名菓とんがり焼きのレシピコンクールに参加した「僕」とその内情・裏構造を冒険譚風に語る「とんがり焼の盛衰」。
ショートフィルムのような味わいです。
それ以外にも気軽に読める作品でいっぱいでした。
おわりに
ということで村上氏の作品も月イチのペースとなってきました。
私の大学時代(90’s)は村上作品というとバカ売れ・ベストセラーみたいな印象だったので、今も時代背景を振り返りながら、未読でもある意味懐かしく読めます。
でも、近年の若者に村上作品がどう映るのかちょっと気になります。
会社の中にいる日本人に本をどれくらい読むか聞いてみようかしら(村上春樹とかよまないかな)。
評価 ☆☆☆
2024/07/21