皆さんこんにちは。
私と家内は居所のアジアの端から。大学生と高校生の子供たちは日本から。つまり現地集合。
私と家内は20年ぶりのハノイでしたが、ハノイは大分変わったという印象。観光客だらけ。でもハロン湾とかはかなり整備されたなあと感じました。当時は竹船でおばさんたちがよって着てこれ買えあれ買えとうるさかった。今はそういう物売りはあのあたりにいません。
さて台風のおかげで子どもたちはフライトが一日延期となり、急遽ホテルを2名で一泊延泊するなどしつつ私たちは居所へ戻りました。旅にトラブルはつきものですね。
子供は親をみて育つと言いますが、完全に親の趣味を踏襲し親無しでもエンジョイした模様。でも二人とも(妻も)読書だけは踏襲してくれませんねえ笑
そんなさなかに読んだのが本作。
はじめに
2009年の伊坂幸太郎氏の作品。
2000年初頭の奇想天外なエンタメ作品を彷彿とさせる先の読めない作品でした。
相変わらずの軽妙な語り口、個性的なキャラ、そして想像もつかない結末。
ってか、悪魔祓い、株の誤発注、西遊記、これらの要素が絡むエンタメ作品って、想像できますか!?
ある意味珍妙な物語
特長的なのは二つのストーリーが次第に交錯してゆくところ。
一つ目の話は、イタリア公認の悪魔祓いの「エクソシスト」遠藤二郎の話。
かつて憧れだった近所の「辺見の姉さん」の子の眞人の引きこもりにつき、この「姉さん」から相談に乗ってほしいと依頼を受けたもの。
もう一つの話は、ロジック・因果を突き詰める五十嵐真の話。彼は300億円の株式誤発注の原因を探るということでシステム会社から証券会社へと派遣されるという設定。
どちらも、軽妙で冗談だか本気だかわからん会話をベースに話が進みますが、これらを結ぶのが「西遊記」の孫悟空。このあたりはかなーり、奇妙。
ただ最終的には、「じっくり耳を傾けること」「話すこと」みたいなテーマが見え隠れしてきたと思います。人の心理や感情を一方的に判断するのではなく、観察や会話から徐々に理解しよう、みたいな。
また、私のキャリアのスタートが証券会社向け勘定システムの開発ということで、誤発注ネタはちょっと厳しくも楽しく読みました(証券コードと単位株をキーにしてチェックロジックを入れるべき云々、心の中で突っ込みを入れる等)。
伊坂幸太郎氏の第二期作品
ちなみにですが、解説で栗原裕一郎氏が述べている通り、2007年の『ゴールデンスランバー』以降を第二期とし、『モダンタイムス』『あるキング』『バイバイ、ブラックバード』などを「モヤモヤシリーズ」「肩透かしもの」と呼ぶそう。本作『SOSの猿』もこちらに属します。
どうも、当初からのファンはこの作風がどうも好みではないとか。
あーね、あーね。確かに分からなくもありません。エンタメのどストライク、とはちょっと違います。
何というか、より深いテーマに抵触するように感じ? 個人的には違った意味で好きですが。
『モダンタイムス』は国家という大きな装置が暴走したら?という仮定はAI時代の昨今、あり得なくもない未来だと感じます。『あるキング』は逆らえない運命や、それに対する自己の構え、みたいなことを考えさせます。『バイバイ、ブラックバード』はそうですね、確かに奇妙な小説でした。ただこちらも、五股男性が逆らえない運命が見えるなかでもベスト?を尽くすという意味では『あるキング』と似通っています。
もし本作を読んで「伊坂幸太郎って言われるほど面白くない」と感じたかたは是非デビュー以降2007年頃までの作品を読んでいただきたいと思います。
おわりに
ということで伊坂作品でした。
旅行中に読んでおり、記憶がおぼろげなところを頭から記憶を絞りながら書き留めました。失礼しました。
評価 ☆☆☆☆
2024/08/14