海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

ホテルが舞台の群像劇。杉江氏の渾身の解説が印象的 |『夏の名残の薔薇』恩田陸

はじめに

最近、月一で読んでいる恩田氏の作品。

今回の作品、結構ドラマドラマしているな、というのが印象ですかね。

 

概要

内容をザックリ言うと、夏の人里離れた高級ホテルで繰り広げられる群像劇、といったところ。

 

一代で財を成した沢渡グループが運営するホテル。先代の娘たち(と言っても既に60過ぎ?)三人がホステス(招き主)となり、ゲストたちと交流するというもの。

奇怪な事件が起こったり、身内の不実が暴露されたり、過去の不祥事が明らかになったり。

人里離れた格式高いホテルは「密室」であり、まさに用意された「舞台」。そして事件は起こるべくして起こる、そんな予定調和さえ感じさせます。

 

解説の分析の細かさに感嘆する

本当に申し訳ないのですが、私が小説読むというのは、言わば消費しているだけなんです。

だから感想なんて、端的に言えば面白かったか面白くなかったか、誤解を恐れずに言えば、実はそれだけ。

 

今回の作品は、その二分法でいえば面白かったに入りますが、これをもう少し砕けば、ドラマ的だなあ、とか、全部で6章あるもすべて異なる人物での一人称語りである点が面白かった、とかまあそんなもんです。

 

ところが、巻末の杉江松恋さんの解説がこれまた細かい。

恩田氏作品群のカテゴライズから始まり、そのうち本作はこれこれに属する、だとか、「記憶」というワードをテーマにして他作品と本作品との共通点を探ったり、あるいは「祝祭」というワードをキーに、恩田氏の作品にビールを飲むシーンが意図的に表れると主張したり、と。

 

おそらく、好き・ファンだ、というエネルギ―が、作品群に共通点を見出したり、分類することに喜びを感じさせたりするのでしょうが、文字通り作品の「消費」者としてはなんか軽い気持ちで申し訳ない、とちょっと済まない気にすらなりました(笑)

 

まあでも、恩田氏の作品は結構読んだので、改めて恩田作品ロードマップを見返した気分にもなりました。

 

おわりに

ということで一カ月ぶりの恩田氏の作品でした。

ホテル、密室、事件、ということで舞台映えしそうなエンタメでした。丁度夏のホテルが舞台ですので、残暑がきついこの時期、お休みでホテルに滞在される方など是非いかがでしょうか。

 

評価 ☆☆☆

2024/09/07

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