皆さん、こんにちは。
近頃感想を書くのが遅れています。
本は読むには読むのですが、形に残すのが面倒で。。。
ほぼ他人を意識せず、時に自分で見返しても、良く分からないこともあるレビューなのに。それでも面倒くさい。
以前、三行だけの書評ブログ、みたいなのを見ましたが、私も字数制限をもうけるかどうか悩みます。15分で考えて10分で書き上げる。5分で誤字チェック。そういう書き方ができないものかなあ。
はじめに
作品群のタイトルを拝見していると系統としては「世界ふしぎ発見」「ウルルン滞在記」的な体当たり潜入系の取材記録が多いという印象。
本作は2013年の作品で、旧ソマリアから独立した?、そして国連も承認していないソマリランドなる国、さらにはプントランドなる地域?、さらには未だ内戦的状況から抜け出せない旧ソマリア南部(旧ソマリアー[引く]ソマリランド-[引く]プントランド)の様子を描いたもの。
体当たりフィールドワークは、ユーモラスも興味深い
いやあ、面白かった。
これは凄い。お金と時間を使って、地域に入って、友を作り、そして習慣に浸かる。
高野氏の作品を読んだのは初めてですが、もう、旅行記と呼ぶには失礼過ぎる出来栄え、誤解を恐れずに言えば文化人類学的フィールドワークといっても過言ではないと思います。
せっかちでギャアギャア煩く、そして地元の人がいなくなると早速カモ外国人から金を巻き上げようとするソマリ系の人々。
イスラム教徒で酒が飲めないソマリの人々とカート(覚醒作用のある葉っぱ)宴会で盛り上がり、分け入り、仲を深める。
半分カモにされていると分かりつつもお金を費やし取材をすすめるその肝の座り方、地域の人のはなしをユーモラスに描写する筆力、そして弩級で並外れた出逢い(大統領報道官、元海賊、族長たち、若手テレビ支局長など)、どれをとっても面白かった。
私は行く気はないけど、ソマリランドやソマリ系の人々の性格は実に興味深いと感じました。
人質ビジネスと海賊
それから。
本作で取り上げらていた海賊ビジネス。
日本でもソマリア沖で海賊が出るという話は一昔前によく報道されていたと思います。
本作を読むと「このことだったのか」と良く分かります。
ソマリ民族というのはなんでも契約社会だそう。罰を犯したら金で解決。イザコザも金で解決。部族と部族のイザコザはこうして解決する慣習が残っているそう。
そういう下地にあって、外国船籍の「積み荷」(人ではなく)を、他国のマフィア等とつるみ、襲う。そして積み荷をカタに身代金を取って儲ける。
他国のマフィアからは運航予定や積み荷の情報を得る。ソマリ民族は実行部隊。船を襲い、積み荷を確保し、最終的にお金で解決してもらう。
最近では護衛船がついてそうそう簡単に襲えなくなったらしいが、悪い人たちというのは実にグローバルに働くのだなと、変な感心をしてしまった。ローカルな慣習とグローバルなマフィア情報。これぞグローカルか、と。
平和国家ソマリランド
もうひとつ。
というか本作の主題であるソマリランドという超平和国家。
国連の所謂形式的手順を大きく踏み越して、超速で国家を作成してしまったソマリランド。ある意味で利権となる資源がなく、後進地域であり、部族社会が残ったゆえにうまく「部族民主制」が機能している実態に驚き。
他方南部ソマリアは、旧宗主国イタリアにより、長老が取り締まる部族的紐帯が破壊されたことから、今もって「リアル北斗の拳」という状況に陥る現実。
国連とそこから出る補助金で食べていくという南部ソマリア、あるいは貧しくも民主制で平和を実現しディアスポラ(在外人)からの仕送りで国を運営するソマリランド。地域的・手法的にもその中間をいくプントランド。
21世紀の今になっても、未だに19世紀の帝国主義の影響で地域の平和が得られないという現実。生態系と同様、文化や慣習も不可逆的であるのかとひしひしと実感。意図的に破壊した文化や慣習と、その後のカオス。文化や伝統の力、それがない時の影響、これらは小さくないと感じました。
おわりに
ということで初めて高野氏の著作を読みました。
とても好きなテイストです。今後も価格が安かったら是非買い求め読んでみたいと思います。
旅行好き、外国好き、異文化好き、知らないものを知りたい人、アフリカ好き等々にはお勧めできる作品かと思います。
評価 ☆☆☆☆
2024/11/10