皆さん、こんにちは。
リモートワークの功罪について問わず語り。
私の勤務する会社はかなりフレキシブルで、特例ではあるものの、理由があれば自宅勤務(しかも外国の実家から)を相応の長さで認めてくれる柔軟さがあります。
私の場合、親が半ボケだったり、自身も脳にメス入れていたりするので、突然ぶっ倒れたり辞められるよりもマシ、また仕事自体も完全に内勤でありリモートでも十二分に成果が出るから、ということはあります。
一方、その恩恵に浴している自身から省察すると、実は慢心が生じてくるのは否めません。慢心というか、なんだろう、”out of sight, out of mind(去るもの日々に疎し)”が、より近い。
内勤となると、その関係者が顧客と見做せますが、物理的距離が大きいと何だか顧客なんてどうでもよくなる(ゴメンナサイ)気持ちがあります。
通常のルールですと自宅勤務は週二回までで、これだと毎週どこかで顧客と顔を合わせるわけで、こういう気持ちにはならないのです。
と考えると、昔の人はうまいこと言ったものです。ならば、遠距離連恋愛というものも、一般則に反するあり方なのかもしれませんね。
実は私も大学院時代は今の家内と東京―大阪の遠距離でしたが、これが続いてしまいました。なぜかと立ち返ると、恋愛というより、既に家族という体であったのかも、と考えた次第です。
いまの会社とはまだ「家族」じゃないなあ。
でももう少しキチンと仕事せねば。本年も仕事の目標もきちんと立てているので実行していきます。
では本題に参ります。
はじめに
1994年にデビューされた柳美里氏。もともと演劇系の方で、劇作家としてのデビューを経て小説家に。1997年の芥川賞受賞はじめ、数々の文芸賞を受賞。
本作は、彼女の2012年『自殺の国』が文庫化に伴い改題されたもの。
初、柳美里
それなりに本を読んでいるふりをしていますが、柳美里氏の作品は初めてでした。
そして、心を動かされました。自分のなかの「不安」な部分を揺すられた、敏感な部分を扇子でそよがれたような感触です。
こんなはなし
本作のメインは、市原百音(もね)、高校一年生。
高校受験で失敗し、第一志望の公立はおろか、第二志望の私立にも落っこち、滑り止めの私立へ入学。さらにそこで組んだイツメン(いつものメンバー)のなかでは地位が低く、学校生活は鬱屈としている。
家庭では両親の仲が良くないなか、母親は弟の中学受験に熱中し、父親は仕事で帰宅が遅いのが日常。自分は無視されているような、愛情を感じないような日々。かつて味方であった祖母はもうこの世にはいない。
百音は漠然と希死念慮を抱き、掲示板で自殺スレッドを立てて同士を募る。その志願者らと待ち合わせ、自殺を図るが。。。
圧倒的な疎外感
当方、筆力が無く平凡な粗筋しか書けず申し訳ないです。しかし、読中に私の中に去来した主人公の疎外感たるや、圧倒的でした。
人が多い場所、多ければ多いほど、自分以外の世界はまるで作り物の嘘のような世界だと感じること。教室だったり、駅の雑踏だったり。
しかし、教室の中での他人からの目線の厳しさ・自分あてのくすくす笑いはやっぱり現実で、それは心に刺さる。だから現実なんだ、と。
混み合う通学電車のなかで、ここまで物理的距離は近いのに、でも隣人は赤の他人。そして彼らはプライベートな会話を惜しげもなく晒して、そして立ち去ってゆく。まるで隣に誰も居なかったかのように。私が存在しないとでもいうかのように。
家庭でも、門限ギリギリに帰ってきても、母親は目を合わせようともせず夕食の準備をはじめ、弟も目を上げずに勉強に集中する。私って、別にいても居なくてもいいじゃん?
こうした疎外感の表出は、主人公百音のものというより、筆者自身が感じたものではないかと、ハラハラした気持ちで読んでいました。
同じようなざらつく気持ちは、村田沙耶香氏の『コンビニ人間』を読んだときに似たものを感じました。
但し、村田作品の場合、一般社会のプロトコルに合わせようとする能動性が感じられました。が、本作の場合、あきらめ・絶望のような、むこうみずさ・思考の放棄のような、他者がもう救ってあげられない危うさ、この世界からあの世界へまたいでいるさなか、のような「とりかえしのつかなさ」を感じました。
最終的に主人公は生き残りますが、主人公の結末よりも、その途上の気持ちの描き方に心を揺さぶられました。
おわりに
ということで柳美里氏の作品は初めてでした。面白かったです。今後も柳作品を読んでみようと思います。
改めて落ち着いて振り返ると、電車の擬音が多用されたり、周囲との距離感が上手に描かれており、高校や大学受験などで使われたりするかも、と感じました。
そうそう、瀧井朝世氏の解説も、ひとつの小品のような面白さでした。
ざらりとした読後感、イヤーな感じを味わいたい方にはおすすめ出来るかもしれません。
評価 ☆☆☆☆
2025/04/04

