海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年もセカンドライフ等について思索したく。

透析患者の苦しい死に方。地方医療に光明あり |『透析を止めた日』堀川惠子

皆さん、こんにちは。

 

最近、暗めというか、病・死・老などに関する本を読んでいます。

こうした事実はそれ自体は悲しいものですが、不遜な言い方をしますと、驚きの連続。

体の衰えや病など、死へ至るプロセスはとかく忌避されることが多いのですが、そのためか、知らないことが多い。故に読むと、そうなのか、と学びになります。

 

これらの予習が今後役に立つ、少なくとも心の準備の一端になるといいなと思います。とはいえ、机上の理論という言葉があるくらいだから、実際にはそれどころではなく『んものすごく』大変なんでしょうが。

 

ということで、今回は透析患者の看取りに関するノンフィクションです。

 

 

はじめに

本作は、ノンフィクション作家である堀川惠子さんの夫に起こった看取りの現場を綴ったもの(前半)。さらに、彼の苦しんで逝った事実から、透析患者の死の事実、緩和ケアの不足、それに立ち向かう医療現場の実情(後半)をレポートしています。

 

透析というもの

透析は大変だ、というのは良く聞いておりました。

とは言え、実際にはどの病気も大変であり、その大変さは優劣がつけがたいと思っていました。

しかし、本作を読むと、腎不全、その後の透析というものがいかに辛いかということが良く分かります。これは絶対的に辛そう。

 

腎臓というのは体の不純物をろ過してくれる臓器というのは中学生の生物でも勉強すると思います。しかし、腎臓が機能しなくなると、実生活に大いに影響します。

まず、尿の排出が出来なくなる。そのため毎日水分コントロール(水をガブガブ飲めない)、塩分・油分コントロール、そのほか食事制限が大幅に課されることになります。

なお、この水分コントロールが辛いため、敢えて運動をして老廃物を体外へ排出、その分を水分でとるということを筆者のご主人はされていたようです。それほど渇きは辛く飲水は潤う。

 

更に患者は、一週間に三回の透析を行わねばなりません。

クリニックや病院へ赴き、一度に4時間ほどかかる血液の「浄化」を行うのです。

透析患者は、腕に出と入りの二か所のシャントを建造し、そこから血液を機械へと流し、透析します。

これはあくまで人工の「浄化」であるため、100%腎臓の機能を再現することはできず、漉すべきものを漉せず、漉さずともよいものを漉してしまう現状があります。つまり肉体的に負担が大きい。

加えて一日のうち四時間を病院で過ごすとなると、早朝病院へ行く、夕方会社をはや抜けする、あるいは中抜けするしかないですが、仕事をしながらの透析はどれほど大変であるか想像に難くありません。

 

体そのものも辛く、会社という組織でも罪悪感に苛まれることになるのは容易に想像できます。

 

「ゆるやかに」死ねない透析患者

本作後半で詳述されるように、本作の隠れたテーマは緩和ケア、安らかな死、であると思います。

透析というのは、それはそれは体に負担があるようで、末期になると体の痛み・負担がひどく出てくるようです。

他方で、透析を止めるという手段は殆ど病院から許してもらえず、透析を止めたら止めたで、腎不全・尿毒症で数日で死に至ります。それも苦しみながら。

 

家族はジレンマに陥ります。透析を受けさせて患者を苦しめるか、透析をやめて(というか許してもらえないけど)苦しんで死へ至らしめるか。

家族は安らかに逝って欲しい、本人ももう死にたい、と望んでも、家族も患者も苦しむことしかできないのが現状なのです。

 

現状緩和ケアというのはがん患者のみが対象という、行政の「きまり」も大いに影響しています。

 

最期まで夫を苦しみぬかせて逝かせてしまった筆者は、そのためか、本作後半では、より体に負担の少ない隔膜透析という方法を行う鹿児島の地域医療をルポしています。

ここでは、都心の忙しすぎる医者とは一味違う、人を中心にじっくり向き合う医療の在り方が紹介されています。

 

なお腎臓病末期の患者に如何に既存の医療が冷たいかにつて、先日読んだ『家で死ぬということ』も引用されていました。

 

おわりに

ということで、初めて堀川氏の著作を読みました。

お二人の馴れ初めや仕事と家庭とのいろいろも、余すところなく書かれており、頭が下がります。

それでもメインはやはり、患者の死にざま、死に方、そしてそれを医療がどうとらえるか、という話です。

 

いつ死ぬかは分からないのですが、どう死ぬかは、こうしたノンフィクションで一端を垣間見ることが出来ます。そして、できれば自分も家族も、楽に逝きたい、逝って欲しいと願っています。現状が(一部は?大部は)そうでないわけで、そうした現状を伝えてくれる本作は非常に貴重であると感じました。

 

病気や死について直視するべきと考える人にはおすすめ出来る作品です。

 

評価 ☆☆☆☆

2025/04/07

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