あらすじ
瀟洒なホテルの中庭で、気鋭の脚本家が謎の死を遂げる。容疑は、新作の主演女優候補である3人の女優にかかる。警察は彼女たちに、脚本家の変死をめぐる一人芝居を演じさせようとする。しかし、この「出来事」自体が、それを執筆中の劇作家による戯曲の設定であり、さらにその物語も多重構造を持つ。虚実がめまぐるしく反転する、芝居とミステリが融合した作品。山本周五郎賞受賞作(2007)。
演劇のマトリョーシカ構造!?
恩田氏というと青春系、モダンホラー系などありますが(注:勝手なカテゴライズ)、この演劇的な作品も恩田氏の一つの特徴かと思います。
で本作などはまさにドンピシャの作品です。
当初二人の女性が対峙する場面で始まりますが、これがそもそも演劇のワンシーン。そもそも当の演劇の内容が脚本家と女優をめぐるいさかい?から発展する殺人事件。で、こうした演劇を脚本家が書いているという話。その話を我々が読んでいる、と。
読み始めた当初は、この入れ子がすんなり理解・類推できないと、お尻がむずむずと気持ち悪わるーい感覚に陥るかもしれません笑。
なお、小田島雄志氏(東大名誉教授)によると、これ、劇中劇中劇、だそう。こんがらりますね。
俳優心理をえぐる
もう一つ。
本作、女優が三人も出てくるのですが、俳優心理の描写がなかなか興味深いと思いました。
演じているキャラを冷静に見つめる自分がいたり、「素を演じる」ということの難しさであったり、他の演者との自然な掛け合いから所謂「フロー状態」になるとか(そういう趣旨の話)。
演じることにおいて、鳥瞰する自己がいたり、没我の状態があったり、他者とのあうんのリズムが生まれたり。そのような1ノッチ深めの心情描写は非常に面白かったと思います。
おわりに
ということで一か月ぶりの恩田作品でした。
やや複雑すぎるきらいはありますが、その複雑さこそが本作のアクであり、味わうべき部分であると感じました。
推理モノ、入れ子構造、演劇、等々のファクターにアンテナが反応した方には是非手に取ってもらいたいです。
評価 ☆☆☆
2025/06/02

