皆さん、こんにちは。
突然ですが、私は大学の時の専攻が哲学でした。
落ちこぼれなのにうっかり院までいってしまって、そこでようやく身の程をよくよく理解して、修士を終えて就職しました。
思えばあの時、院でピカイチでできる人は、ハイデガーやハーバーマスを専攻する一方で既に高校や学部時代に吉本隆明、丸山眞夫、西田幾多郎、九鬼周造、小林秀雄とか、日本の思想関連の作品を既に読んでいたものです。
他方、私のようなナンチャッテ院生は、ようやく大学デビューで西洋哲学をかじり始め、日本の思想家なんてよう知らんと。自分の専攻の作品を読むも、文献の難しさにむしろ圧倒されていたものです。院に入っても、頑張ってはいたもののドイツ語の原典一冊読むのにひーひ―言っているくらいで、日本語訳を読めば読んだらでウトウトしてくる始末。増してや修論なんか人様に見せるようなものにはなりませんでした(読み返すと甘酸っぱさでいっぱいになる)。
結局なにも分からずに院卒になっています。でも以来、哀愁と愛着を持っている思想系の学問。いつか少しでも分かるようになりたいと思いつつ手に取ったのが今回の作品。
帯のまとめ、内容違うと思うなあ。。。笑
概要
本作『日本とドイツ 二つの戦後思想』は、「過去の清算」を軸に、第二次世界大戦後の日本とドイツの60年間の思想的歩みを比較するもの。国際軍事裁判や占領統治から始まり、両国が戦争責任や国家のあり方、マルクス主義、ポストモダンといった思想課題にどう向き合ってきたかを、類似点と相違点を浮き彫りにしながら論をすすめる作品。
昭和以降の現代の思想状況を整理
いやあ、これ、面白かった。
ちょっと前の昭和の思想史って、近いようでなんだか分からなそう、取っつきづらそうじゃないですか。
ちょっと小熱い思想系の本には、確かに丸山眞夫とか吉本隆明(ばななさんのお父様)とかがよく引用されていましたが、そこまで実際手を伸ばす気にはなかなかなりませんよね。
ドイツの思想も私が知っているのは、好んで触った(読んだとか言えない)ハイデガー以前の現象学でしたが、それ以外は全然知りません。というか分かりません。ましてやフランクフルト学派とか隣国のポストモダンとか、もう同じ専攻なのかっていうくらい分からない感じでした。
で本作は、20世紀以降の現代思想(とくに敗戦以降)、とりわけ日本とドイツのそれを、かなりキレイに整理してくれていると思います。
日独の敗戦の受け止め方から、思想の発展をひもとく
こうした現代の思想状況を整理するにあたり導入しているのがドイツと日本という第二次世界大戦の敗戦国の思想状況。
この視点のユニークさが本作の内容を豊かにしている点だと言い切りたいと思います。
『エルサレムのアイヒマン』も引用されていますが、凡庸な、むしろ真面目な人間が盲目的な悪を行うことになるという事実。あるいはベルリンが分割され、同じ国の中に共産主義が居るという事実。
ここから、啓蒙主義や理性、さらにはドイツ的なものを疑ってかかる、それにとって代わるものを探すという機運からフランクフルト学派(ハーバーマスのコニュニケーション理論など)などが出てきたとします。
他方日本は敗戦国である一方で、加害者としての側面はあまり顧みられず、むしろ原爆被害国という側面と天皇制維持という国策から、屈折した自己省察しか行われていないと論じます。またドイツと比較すれば共産主義は地理的にも遠く、比較的自由に受容され(あるいは豊かすぎるくらいに解釈され)、各派閥が枝分かれしてゆくとしています。
この政治的状況が思想界にも影響を及ぼしているとするものです。
フランスのポストモダンへ収束!?
やがてフランスでは、ドイツ思想界があれだけ避けてきた『ドイツ的なもの』を評価する流れが生じ、さらには無意識や含意などを含めた主体、あるいはそれらが表すものを研究する流れがでてきた、と。
これが日本でも紹介されるにつれ、(筆者曰く)エッセイだか思想書だか分からないフランス系の作品が増えてきたとかどうとか。
ドイツでも、ハーバーマスのようなゴリゴリの理性の最終形で行きついたコニュニケーションを押すフランクフルト学派は勢いを弱め、ポストモダンの流れをくむ一派が近年力を持ちつつあるとか。スローターダイクの名前が挙がっていましたね。
おわりに
ということで、仲正氏の現代思想史(日独仏中心)のサマリー本でした。
状況の見取り図としては、ポンコツの私には非常に有用でした。特に世界大戦敗戦を契機とした日独のマルクス主義の受容の差異とその思想史の展開というのが非常に分かりやすかった。さらに日独両国とフランスのポストモダンを絡めて説明することで、現代思想の展望が大まかながらよく理解できたと思います。
思想系に興味はあるけど難しそうで怖い、あるいは今まで挑戦してみたけど挫折した人にはおすすめ出来ます。また現代思想を学びたい人が入門書として読むのにふさわしい本だと思います。
こういう本があると、思想系にチャレンジしたくなるなあ、と感じました。
評価 ☆☆☆☆
2025/06/10

