概要
本作『失敗の科学』は、失敗を恐れず、むしろ積極的に学びの機会と捉えることの重要性を説いています。成功する組織や個人は、失敗の原因を徹底的に分析し、そこから得られた教訓を次に活かすことで進化します。特に医療分野と航空業界を対比させ、前者が失敗を隠蔽しがちな閉鎖的な文化であるのに対し、後者は失敗を共有し改善に繋げるオープンな文化を持つことを指摘。失敗を許容し、そこから学ぶ「開かれたシステム」を構築することが、進歩と成長の鍵であると主張します。
総評
まあ、読み物的には面白かったと思います。
航空業界が徹底的に失敗をあぶりだし、機内デザインからオペレーションから要員配置など多くの日常業務を「失敗」から得られる教訓をもとに洗練化している、と。
それに対し、医療機関はミスを偶然と見做し、その間違いを分析せず、むしろ分析や調査結果を信じず、自分の考え(まさに信念?)に固執するという。
医療機関の旧態依然たる状況に背筋が冷えるとともに、英国自転車チームの「マージナル・ゲイン」の考えなど、勇気づけられるお話もありました。
またある事象とその結果との因果についてRCTという手法を使い、政策やアクションの効果の有無を確認し、「そうなると思う」をデータで検証(データで否定・肯定する)方法などは興味深かったと思います。
現実に応用できるか?
では、この本を読んですぐに現実に応用できるかというと、それはちょっと難しいと感じます。
私のやっている仕事は数字をまとめるような仕事なのですが、DBからデータをダウンロード、エクセルを駆使してピボットテーブルを作る、マクロで集計をする、最後に報告用フォーマットにコピペするなど、兎に角マニュアル作業が多い(マクロを組んで大分楽になりましたが)。
私もかつてシコタマ間違いをしまくって、自分で作ったミスを発見するのに数時間かかるのが良く続いたものです。
いま部下が同じ状況ですが、やはり失敗に対して自己認知が出来ないと、失敗を生かすことはできないよなあ、と感じています。
彼女は、自分が作った成果物にも関わらず「これ、数字が合いません」とか平気で言います。「何故ですか? どうやって作ったのですか? 調べてください。手順を一つずつ追ってください」などと突き返し、時にミスは見つかるし、時に見つからない。
その間違いについて毎回ここがこうだああだと一応指摘してるのですが、一向に改善しません。むしろ彼女をうまく引き上げられない私がおかしい、と思われている節もあります。ただ、自己認知を促すべく禅問答みたいに質問に質問で返すことが多いのですがこれが悪いのかもしれません笑
かつて私が一人で業務をこなしていた時は「あー、こんなクソみたいな仕事で、しかも自分の仕出かしたミスで午前一時まで仕事するなんて耐えられない!」と切れたときから自分のミスを直したい、と強く感じ始め、どういうミスがどういうタイミングで起こるのか、自分に興味が出てきました。またこうやって省察できるとプロセスの余分な部分や時間がかかっている部分についても良く見えるようになったのですがねえ。
で話は戻りますが、本書。
失敗に取り組むにはまさに組織的にやらないと難しいでしょうね。ミスを取り仕切るような人材が必要でしょうが、ただミスを指摘するだけの部署を作ってもどうしようもないでしょうし、所謂「(失敗を尊ぶ)カルチャー」の醸成も必要でしょう。でまたこれが難しい。
RCTについても統計の専門家がいれば、何らかのイニシアチブの効果を社内で確認する、或いは外注して調べることもできると思います。ただそういう余資があるような団体も今日び珍しいでしょうね。
おわりに
ということで、一時有名になったビジネス書を読んだという事でした。
ビジネス読み物としては面白いです。が、仕事に生かそうと意気込む人は空振りする可能性が高いと思います。
までも、参考にはなります。自分の仕事の在り方を改善したいという方は、読んでおいて損はない本だと感じました。
評価 ☆☆☆
2025/06/18

