皆さん、こんにちは。
本を読むときの興奮。
個人的には読む前ってのはピークの一つだと思います。
とりわけ初めての作家さんとか、良く見知らぬジャンルのものとかはワクワクが高まります。そういう時は裏表紙の賛辞も楽しく読めます(大抵大袈裟だけど)。
で、今回読んだ(以下感想をかく)洋書は実はもう上の空で、次の作品(今読んでいる洋書)を手に取ってワクワクしていたのでこういう事を書いた次第です。
ちなみにですが、本読んでる時に沢山紙片にメモ書いて挟むんだけど、今回も殆ど使わずに感想を書いています。皆さん読中のコメントとか本に書いたり付箋とか使ったりしますか? ってか振り返ります? 私は日常でも振り返りが苦手でして。。。
ということで”上の空”とは書いたものの、以下本題です。
でも面白かったですよ。
作家紹介
ハワード・ジェイコブソンは1942年マンチェスター生まれのイギリス人小説家、評論家。ケンブリッジ大学で英文学を学び、シドニー大学などで教鞭をとった後、作家活動を開始。
彼の作品は、特にユダヤ系英国人の葛藤をコミカルかつ辛辣に描いたものが多く、自らを「ユダヤのジェーン・オースティン」と称す。2010年には『The Finkler Question』でブッカー賞を受賞。その他、『The Mighty Waltzer』、『J』(2014 ブッカー賞 short-listed)、『Shylock is my name』など作品多数。
概要
本作は、非ユダヤ人の主人公Julian Tresloveが、ユダヤ人である友人のSam Finklerと元教師のLiborとの交流を通して、ユダヤ人としてのアイデンティティや現代社会におけるユダヤ人のあり方を模索する物語。友情、喪失、帰属意識、反ユダヤ主義といったテーマが、ユーモアと辛辣さを交えて描かれている。
英語ムズイ。でも英国版伊坂幸太郎みたいな感じ?
上の筆者についても、作品についても、AIに作ってもらいました。
にしても今一つしまりのない味の味噌汁みたいな書きぶり。もうひと手間入れてくれると良くなるんだけどなあ。
で、本作ですが、一番印象にあるのは、洒脱で面白く、悲しいということ。とりわけ前半はユーモアにあふれ、伊坂幸太郎を英語で読んだらこんな感じなのかな、と思った次第。
ところが、とにかく英語がムズイ。
倒置、関係節の多用、難解な単語の数々、イディッシュ、やや古めな俳優らの固有名詞。こういうのが混ざり合って、もう辞書なしでは読む気がしませんでした(筋が追えなくなるので)。で辞書を片手に、ぶつぶつと逐語訳をつぶやきながら読んだ次第です。いや本当にこうでもしないと意味が分からないの。
でも、主人公Tresloveの自省や心象描写でI should do what I should doとか、ちょっとひねったというか回りくどい表現が多く。ゆっくり読めば面白さは分かります。
今回ばかりは日本語訳があれば是非一度読んでみたいと切に思いました。が、どうやらない様子泣 あーあ。
人の出自は変えられない
面白さの中心は非ユダヤ人のTresloveが作り出します。
高校時代の友人(Finkler)は口が減らない屁理屈屋で、彼をユダヤ人の典型として、面倒な奴をFinkler, Finklerishみたいに呼ぶんです。
ところが当のFinklerは、オックスフォードの哲学科を出て、役に立つ哲学みたいなテーマで本やテレビで引っ張りだこ、果ては美しい奥さんと結婚しながら、浮気を繰り返し(彼なりの屁理屈の論理がある)している。
一方Tresloveは結婚もできずせっかく入社したBBCでは速攻で閑職に追いやられ、そこで細々と誰も聞かない深夜ラジオプログラムを作っている自分に嫌気がさす。結局退職した後は「そっくりさん」事務所に勤め、誰かのそっくり(全く似てない俳優のことが多い)さんとしてバイトに励むパッとしない生活。恋愛もからっきしで、二人の女性に振られたきり結婚もできず。ちなみに彼、50代。ということはFinklerも同じ。
そんな中、かつてTresloveとFinkerを教えた先生のLibor(ユダヤ人)と三人で集まるという所が実は物語のスタート。
Liborは80代で最愛の奥さんを亡くし、Finkerは若くして(そこまで愛していなかった)奥さんを亡くし、そしてTresloveはなくすものもないという状況。
Tresloveは自身の情けなさから、ユダヤ人になれば自分は変われる、と感じ、Liborにお願いしてイベントに出たり、ユダヤ人の彼女を作ったり、イディッシュを勉強したり、引き続き迷走・爆走します。
悲しみパート
物語の後半1/3程度から徐々にトーンは悲しみに包まれます。
Tresloveのないものねだり(いくら真似しても生まれながらのユダヤ人にはなれない)、Finklerの率いていた団体からの退陣や、シニカルだった亡き奥さんを回顧し悲しむこと、またLiborが最後死に追いやられることなど、トーンは暗さを増してきます。
こういう展開で筆者が伝えたかったことは何なのか良く分かりませんが、個人的には理想を追い過ぎるとか、自分優先で生きていると最後は空しいのかなあ、と感じました。そう読みたいのでそう読めたのでしょう(因みにこういう表現も実際原文では多い)。ただこれ、TresloveとFinklerに関して言えばそう。
他方、結婚前は銀幕の美女との噂が絶えなかったLiborは結婚後は妻一筋で、妻の死から立ち直れず最後は自らを死に追いやったのですが、彼の生きざまはどう読めばよいか、良く分かりませんでした。
なお、この死の一因となったとみられるTresloveのドッキリ告白があり、無邪気さ・言いたいだけの告白、こういうある種の大人げなさ・無分別はそれだけで害悪、ともいえると思いました。
よく、浮気をした後で良心の呵責に耐えられずゲロるってのが有りますが、そういう話が本作でも出てきます。聞いたほうが気分悪いし、聞いてどうすることもできないし、みたいな。ナイーブさに見せかけた害悪のまき散らしだと感じました。
おわりに
ということでブッカー賞受賞作品を苦労しながらも読破したという話でした。難解だけど、その回りくどくも洒脱な表現、そして筋は確かに面白いんです。
読後に今更ながらに気付きましたが筆者の苗字はJacobson。モロにユダヤですよね。ヤコブ(Jacob)の息子(son)って(なお創世記でヤコブは兄のエサウとどっちが家を継ぐかでもめて父イサクを騙したのでした)。
どうりでユダヤ色たっぷりの作品が書けるはずです。
また、今回ほど単語をもっと覚えたい、知りたいと思ったことはありませんでした。今更ですがどうすれば英単語増強できますかねえ。か、だれかこういう逸品を早く日本語訳で出してくださらない?
評価 ☆☆☆
2025/07/14
ブッカー賞受賞作品は以前以下を読みました。


