これまでの社会人生活で、金融に携わって参りました。
証券システムのITエンジニアとして、リテール証券のドブ板営業員として、そして銀行の管理部門スタッフとして。
どの職種でも商品知識とともに、歴史や経緯を知るべき(というか知りたい)と思い、業界関連本につき乱読を重ねてきました。
で、今回手に取ったのが今回の本です。
歴史って、紐解く度に自分の無知を知らされますね。
という事で本題に参ります。
概要
著者の板谷氏は、証券業がバックグラウンドの方。海外駐在や機関投資家営業等を経験し、キャリアの最中に著述も始めた模様。
本作は、そのような板谷氏による、金融史を世界レベルで見たまさに金融世界史の本。
とにかく守備範囲が広い
まず読んで感じたのは、良くも悪くも広範な守備範囲、ということ。
よく言えば包括的となるのでしょうが、悪く言えばまとまり(特徴)がない、という事になりましょうか。また、証券業出身の方らしく、株式マーケットに関する記述が多かったという印象です。
上記の印象は、私の過去の読書から来ております。
先ず、米国金融史でいうと『アメリカ金融革命の群像』をかつて読みました。こちらは米国の近代金融史にフォーカスが当たっており、内容は具体的。割賦販売やクレジットカードの発展だとか、投資信託の始まりとか、現在我々が当たり前に使っている金融商品が米国で難産の末に産み落とされた歴史が綴られます。
また日本でいえば銀行の歴史、とりわけバブル前後にフォーカスを持ってきた『ドキュメント銀行』はこれまで日本の銀行が、戦後どのような体制でバブルを迎え、そして再編へとたどり着くのかがよく理解できます。
面白かったインデックス投資vsアクティブ投資
然るに本作、とにかく広い。日本だけでもない。米国だけでもない。現代だけでもなく、何なら古代の貨幣制度、そして金利の仕組みからモダンポートフォリオ理論のその先まで。
改めてですが、世界史の名に恥じないカバレッジ。
その中で私が一番面白かったと感じたのはやはり現代、15章:投資理論の展開、でしょう。
証券投資の世界では市場効率仮説という話があり、世の中の情報というのは瞬く間に共有され(効率化)、情報格差によって他人を出し抜くということは極めて難しい、とします。従い、株式投資においては素人も玄人も基本的には同じ情報に接しており、保持する情報では差がでない、とします。
こうした内容はひとえにアクティブ投資を否定する運びとなり、逆にインデックス投資主義者を濫造することになるのだと思います。
他方、バフェットのような天才がバークシャーの株価をインデックスを上回る成長率で成長させてきたことを見ると、これはアクティブ投資にも理があるケースもある、となります。
この、インデックスかアクティブかのBlack and White型の議論ですが、筆者の結論は、『市場はほどほど効率的だけど一部はやはり非効率』という、こなれた妥当な結論になります。中小型株効果などを取り混ぜ、概ね市場は効率的だが、一部の投資家(ファンドマネジャー)はマーケットに評価されていない割安株を見つけられる、というものです。
とても分かりやすい説明になっていると思いました。
そういえば、私の元同僚がファンドマネジャーとかやっていますが、彼とバフェットを比べられうるかというと…。あいつは普通のやつだなあ。
ファンドマネジャーを天才かどうかなんて素人はなかなか見分けられないですし、サラリーマンは本業こそがメインですから(同語反復!)、本業やプライベートに最大限コミットしつつ世界成長をフォローするのならばやはりインデックスなのでしょうかね。
投資はなかなか難しいっす。
おわりに
ということで板谷氏の作品は初めて読みました。
私の大好物の歴史と金融をミックスした素敵な作品でした。
サブタイトルに戦争とか入っていますが、そこまで戦争の金融について気になりませんでした。きっとこれはこれで専門書を読んでもいいかもしれません。
巻末の参考図書などを見て、関連図書を読んでゆきたいと思います。
評価 ☆☆☆
2025/07/22

