皆さん、こんにちは。
日本では毎年8月になると戦争関連の特集がテレビや雑誌などでされますね。
かつてはそうしたものを、非常に説教くさいもの、と感じていました。
長じて、とりわけ壮年になってからは、積極的に戦争モノを渉猟する自分がいます。
その理由といえば、凄惨と不条理の極める現場の兵士らの話から、日本の組織論や文化論に発展する話に興味を持ったというのがひとつ。もう一つは、この年頃で大病を幾つか患い、自らの死を見つめるようになったことがもうひとつ。つまり死と隣り合わせで行軍する軍人たちが何を思ったのか、どういう心構えでいたのか、そしてそこから自分が学べるものは何か、を考えるためです。
で、最近ブックオフで見つけたのが本作であります。
あらすじ
実在の特攻兵、佐々木友次氏が9回の出撃から生還した生涯を、本人へのインタビューをもとに描いたノンフィクション。絶対命令に逆らい、なぜ命を守り抜けたのか、命を消費する日本型組織の問題に迫る。
体験者が口をつぐむ理由
本作、公正は概ね3パートに分かれます。
先ずは、特攻兵佐々木友次氏の生い立ちと9回の出撃および生還の過程。次に筆者鴻上氏と佐々木氏の対談内容、そして最後に所謂日本論のようなもの。
類書を幾つか読んできたため、戦争の悲惨なところ、とりわけ若くて優秀な兵隊が価値のない死に追いやられるシーンは多く読んできました。それは本作でも散見されます。
しかし、今回本作を読んで非常に印象にあるのは佐々木氏の寡黙さです。
これは無口というわけではありません。むしろ敢えて語らず、否、むしろ語りたくないという種類の寡黙であります。
ではなぜ語りたくないかといえば、畢竟それは理解されないからでしょう。というよりも体験者にしか分からない雰囲気というものがあるのだと思います。
当時、日本は、そして軍部はかなりおかしかったとは思います。
爾後、その異常さ声高に叫ぶでもなく、淡々と、たまたま生き残ったと語る佐々木氏の姿勢に、当時の異常さ・彼我の違いの大きさを感じずにはいられません。
それは被災・被害の体験者と周囲との圧倒的な違いに似ているのかもしれません。
筆者のねらいとは
他方、この古傷に塩を塗るかのようにインタビューを行う鴻上氏は、ある意味ちょっと悪者にも見えなくもありません。
でも、氏の考えもやはり分かる気もします。
異常な雰囲気のなか、上官に立てつき、筋を通すことがどうして可能なのか。
日本という国で、雰囲気・気合、精神論が跋扈する。この手のものは、今でもやはり亡霊のごとくあまねく世間に通底していると昭和生まれの私は感じます。その雰囲気・精神論がより明示的だった昭和初期、しかも国家総動員と全体主義が盛り上がるなか、その中でも筋を通す・理を通すということが可能である個人を発見した。その心の持ちようは、日本において、新たな可能性なのでは、と筆者は考えていたのかな、と感じました。
因みに最後のパートは鴻上氏による日本文化論の雰囲気が大いにありました。『失敗の本質』や山本七平『一下級将校の見た帝国陸軍』もそうでしたが、原因追及を行うと、このあたりの話になりますよね。
おわりに
ということで鴻上氏の戦争関連本でした。
これまで幾つか戦争本を読んできました。上官を拒否し、かつ無事に日本に生還したという方は初めて見ました。あるいは戦争末期だったから可能な姿勢だったのかもしれませんが、戦争関連本としてはちょっと新しいテイストであったと思います。
評価 ☆☆☆
2025/09/08

