皆さん、こんにちは。
映画、見られますでしょうか?
サブスク文化が隆盛を極める今、映画を映画館で見る機会は減少傾向にあるかと思います。
さて国外では日本文化の普及を目指してか、当地では毎年日本映画祭なる催しがあります。これがまたお値打ちな価格設定(一本330円程度。なお当地の標準値段は一本660円程度)。
であればと、今年も2日で6本の映画を見るという、修行のような視聴をしてまいりました。
いやあ、やっぱり映画っていいですね。
音響が効いた映画館で視聴するのはやはり迫力があり、興奮するものがあります。
ということで本題に参ります。
作品と筆者
1998年に『果つる底なき』で作家デビュー。2011年『下町ロケット』で直木賞受賞。
銀行員の経験を生かした作品の他、サラリーマン・社会人としての立場に呻吟する作品が多い。
本作『民王』は2010年発表、2015年には遠藤賢一、菅田将暉らキャストにてドラマ化。
エンタメに振り切った作品
これまで幾つか池井戸作品を読んでまいりました。
そのどれもが、業界の旧弊に苦しむ真面目な社会人だったり、斜陽産業の厳しさだったりを描いていたりして、非常に心に沁みたものです。
で本作『民王』。
これはどちらかというとエンタメに振り切った作品、といっても良いかもしれません。
金と女にまみれた政治家と、そのぼんくらの息子が入れ替わってしまったというのが本作のモチーフであります。
漢字の読めない息子が首相として答弁をしたり、息子の体を借りた首相が無意識にオヤジくさい話を女友だちに仕向けたりと、露悪的な作りになっているともいえましょう。
またこの入れ替わりは、複数政治家の家族(親子)同士で起こっていることから、とある政治家は息子と、また他の政治家(男)は娘と入れ替わったりしています。
まあ男親が娘の体をコントロールするとその違いに驚くわけで、そうした描写もあり。
頑張る人が相応に報われる結末
なお、結論ですが、意外とあっけなく、そして爽やかに終わります。
思えば池井戸氏の作品は完全なる勧善懲悪、とまではいかないものの、正直者は相応に報われる形で結末を迎えるものが多いと思います。
本作でも、金まみれ・女まみれの首相武藤泰山は、入れ替わりを通じて若き日の志を取り戻し、最終的にはなかなかナイスな政治家に生まれ変わり、一つ法案を通して結末に向かいます。
まあそういうハッピーエンドは、陳腐と言えなくもないですが、エンタメとしてはある意味この結末の方がよかろうかとは思います。
おわりに
ということで久方ぶりの池井戸作品でした。
肩の凝らないエンタメ作品、久方ぶりの読書など、息抜きには最適の作品かと思います。
評価 ☆☆☆
2025/09/13

