先日、氏の”Not A Penny More, Not A Penny Less”を読んだのですが、非常に面白く、感銘を受けました。そんな中、ブラック・フライデーセールなんでしょうか、Kindle版ですが氏の本がなんと55円で売っており、安値につられて購入、読んでみた次第です。
ちなみに、こちらも安かったので同時購入笑
英国ベストセラー作家の獄中記です。ベルマーシュという無期刑の多い刑務所での体験記。
もうそれ以上でもそれ以下でもありませんが、日本語版の帯は「堀江貴文氏 推薦！！」とのこと。これでおおよその方向性は推測できるかもしれません。
数奇な人生の数々
面白かったのは、まさに小説より奇なる受刑者のエピソードの数々。
私にとって一番印象が強かったのは、54歳のトニーの話。中流家庭の出でロンドン大学に入学するも父が勧めたアクチュアリーの勉強が肌に合わず退学、友人と肉屋を開店し、大繁盛させる。結婚もし2人の子ももうける。でも30頃には長時間労働にうんざりし、35歳で店を売り引退（早い！）。数週間であまりの暇さにジャガーの販売代理店を始めると、これまた熱中してしまい一儲け、その店も売る。二度目のリタイア時に妻から家庭での時間を大切にしないと離縁すると言われている中で暇つぶしも考えねばと、荒れたパブを購入。気晴らしのつもりが14軒ものパブを持つに至りとうとう離婚、全てを清算。そんな中で出会った女性は家族で事業をやっている人。彼女の家に転がり込むとファミリービジネスというのがなんと麻薬の売買。そんなのに関わらなくてもトニーは十分な金があるのだが、どうしてもその不備が気になってしまう。で、ビジネスのイロハを教えるうちに深くかかわるようになり、遂には名実ともに社長に。最終的には、麻薬取引とは関係のない家賃の取り立てに行く際に、その家にたまたま麻薬が隠されており別件逮捕。なお彼は、量子力学の教科書を執筆していたりとか、色々とエピソードがあります。
他にも、ウイリアムという麻薬取引のかどで受刑している人のバックグラウンドがすごかった。6人の兄弟と5人の姉妹（つまり併せて12人きょうだい）がいるが、兄弟7人全員と妹ひとりが受刑中で合計112年の刑とのこと。しかもその母親は兄弟全員に聖人の名を贈るという皮肉な結末。
このようなエピソードの宝庫である刑務所生活ですが、罪を背負っているということ以外、普通の社会と同じように、独自の秩序が保たれているのは興味深いところです。また、相当数が心に傷を負っていたり、行政の不備からか刑務所で麻薬中毒になるなど、色々と考えさせられる記載も多かったです。
なぜ捕まった？
他方で、なぜアーチャーが逮捕に至ったのかというのは本を読むだけではよくわかりません。あとがきでも偽証罪ということは触れてはいるのですが、それ以外はやはりよくわからない。で、英紙ガーディアンのネット版なぞを見ると、浮気はしているわ、売春婦は買うわ、そういう事実はないと秘書に言わせようとしていた、ということ（おおまかに）のようです。なかなかワルじゃないですか！
ちなみに浮気相手の写真というのもGo viralしちゃっています。
詐欺話に引っかかったり、それをネタに小説を書いたり、この御仁、良くも悪くも型破りな方ですね笑
おわりに
ということで、英国人気作家アーチャー氏のノンフィクション体験記でした。これはこれで面白いのですが、やはり氏の作品はフィクションの方が面白いかもしれません笑
ちなみに、筆者の名前はJeffrey Archerと綴るのですが、Geoffrey Archerという方（作家！）もいるらしいですね。刑務所職員からサインを頼まれたら他人の本だったっていう悲しいシーンでの一節です笑
評価 ☆☆☆
2022/12/04
こちら、この前読んだ氏のデビュー作。本当に面白かったです。
