海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

2021-01-01から1年間の記事一覧

七人に七様の人生と七様の決断 - 『物語のおわり』著:湊かなえ

人によって考えや感じ方は違う。この至極当然な考えが本作のテーマだと思います。 未完の小説『空の彼方』をめぐる7人の物語。この未完の小説が北海道を旅する旅人たちの間を行き交う。そしてその終わり方をそれぞれ7人が考えるというもの。 面白いのは、や…

キリスト教についての興味が中程度(?)以上の方は読んで損しません ― 『なんでもわかるキリスト教大事典』著:八木谷涼子

キリスト教って何なのか?知っているようでいまいちよくわからない。ちょっと勉強してみたい。そんな方は結構いるのではないでしょうか。 私の場合、興味の始まりはユダヤ陰謀論(笑)。そして世界史で十字軍やビザンチン、そして米国史を学ぶうちにキリスト…

株屋が業務説明を英語でするときには重宝しそう ― 『英和和英デリバティブ証券化用語辞典』著:可児滋

基礎的で実直な辞書・辞典だと思います。 デリバティブってホントによく分からなくて、私もいろいろと本を読んできましたが、本書は非常に基礎的な部類に属すると思います。 デリバティブというより、株式市場や先物市場の用語、テクニカル分析の用語なども…

こどもの無垢をいつくしむ大人向け小説 - 『赤毛のアン - 赤毛のアン・シリーズ1』著:モンゴメリ 訳:村岡花子

私が子供のころから有名だった本作。どうも女子向けというイメージもあり、子供のころから手を伸ばさずにおりました。長じて後、数年前にローティーンになった娘に読書習慣をつけるべく本作を与えてみたのですが、「つまらない」「眠くなる」との反応。そこ…

密度の濃い世界史本。というか教科書! ― 『詳説世界史研究』編:木村靖二、岸本美緒、小松久雄

かつて息子の高校受験用に契約したスタディサプリ。コンテンツ見放題なことをいいことに、一念発起して大学受験用の世界史の講義を聞き始めて早一年。猿人の発生から現代までを4回通して視聴し、思いました。耳だけでなく目でしっかり文字で追って内容を読み…

金融系ユダヤ陰謀論(やや不満がのこりました) ―『金融の仕組みは全部ロスチャイルドが作った』著:安部芳裕

いわゆるユダヤ陰謀論をコンパクトにまとめたものです。タイトルにもある通り金融の内容に比重が重いのが特徴だと思います。 お金の仕組みについては面白い意見かと ユダヤ陰謀論の系譜にあたる本だと思いますが、これまでの陰謀論と比べて新味が感じられる…

読んでみて!としか言えない、傑作ミステリ ― 『THE MURDER OF ROGER ACKROYD』著:AGATHA CHRISTIE

いやあ結局驚いた。ああ、そういう事か!と最後に膝を打つ。 多作のアガサ・クリスティーの作品群の中でも代表作として挙がることが多い本作。確かに面白かった。 (因みに今回もインド亜大陸版につき表紙はAmazon版と異なります) あらすじ とあるイギリス…

救いのない今を生きるポーランド女性たちの物語 - 『カティンの森』著:アンジェイ・ムラルチク 訳:工藤幸雄、久山宏一

カティンの森事件という事件をご存じでしょうか。 第二次世界大戦中、約1万人のポーランド人将校がソ連公安当局によって虐殺されたといわれている事件です。 ja.wikipedia.org 事件発覚以降戦後も引き続き、ソ連に進攻したドイツ軍の仕業であると言われてい…

超常現象を小気味良く解決。ガリレオシリーズ第二弾- 『予知夢』著:東野圭吾

もうこれ虐待に近いのかもわかりませんが、中2の娘に毎月1冊本を読ませています。ページ数を日数で割って、1日どのくらいまで読めば終わるかとかカレンダーに書き込ませます(こんなんしたら面白いものもつまらなくなるかもしれませんが。。。)。まあ3か月…

十字軍行軍の徒花と消えた特殊法人 ― 『テンプル騎士団』著:佐藤賢一

世界史の講義で、講師が「テンプル騎士団はフリーメイソンの源流であるという噂も」と聞き、その神秘性に惹かれ、何か新たな事実が分かるかも?と本書を購入。 学生時代は中世というのは一番つまらないし中世を研究する人たちの気が知れない(ごめんなさい!…

シンプルな例文に微妙なニュアンスをのせる例文。上級者向き英語本― 『ロジカルイングリッシュ 英語力は文法より「話す順番」で決まる!』著:有元美津世

アジアに渡ってきて早8年目。業務の連絡は英語を使いますし、厳しいインドなまりや華僑のなまりにも大分慣れました。アジアでは何とか英語で意思を伝えることができると感じますが、いかんせんストリートファイト仕込みという引け目が未だにあります。 今年…

没落する日本で生き抜く宣誓 ― 『日本の没落』著:中野剛志

本作は、官僚・評論家である中野剛志氏による、ドイツの歴史家シュペングラー『西洋の没落』の解釈本というのが端的な説明になると思います。 曰く、100年前に書かれたシュペングラーの著作には、現代社会の諸相(経済成長の鈍化、グローバリゼーション、地…

タイトルまんまですが、基礎的銀行経理の本。 ― 『Q&A 業種別会計実務9 銀行』著:トーマツ 金融インダストリーグループ

本棚整理と復習を兼ねて再読。本サイトを見てくださっている奇特な方には申し訳ないのですが本ポストは普通に読み飛ばしてください。。。 実務書であり、題名がこれ以上内容を表すこともないと思います。そのまんま。 当然のことながら経理財務の方向けの本…

今年一番のインパクト。自分を変えるプリンシプルのつくり方 ― 『PRINCIPLES』著:RAY DALIO

事のはじめはメンターからの一通のLINE。7月の暑いさなか、相変わらずぶっきらぼうに以下の動画リンクだけが送られてきた。 youtu.be 16分の結構長めの動画。見ると、どうやら本のサマリーのようです。 ・・・この本を読めという事だと忖度する。まあ確かに…

中世イタリアを堪能しました ― 『デカメロン(下)』著:ボッカチョ 訳:平川 祐弘

いやー、長かった。でも中世イタリアを堪能しました。たっぷりと。 タイムスリップができるのなら一週間くらい中世に飛んでみたいなあ等と思いました。作品のように結構退廃的だったのか、あるいはやっぱり宗教的価値観の軛にぎっちぎちにつながれたような社…

恥部をさらけ出す話の数々こそ、人間中心主義の証か ― 『デカメロン(中)』著:ボッカチョ 訳:平川 祐弘

本作表紙にはオレンジ色の背景で黒字ででかでかとタイトルがあります。 どうやら家内も娘もこの本のタイトルが気になっていたようです。デカメロンって、音の響きも口に馴染みますよね。。。娘に至っては自分の知らない食べ物か何かかと思ったの事でした(「…

中世世界の豊かでエロい人間模様を描く ― 『デカメロン(上)』著:ボッカチョ 訳:平川 祐弘

世界史を勉強中、14世紀のペストの大流行のトピックで出てきた作品。読みたいとずーっと考えていたのですが、この度、上中下をまとめて購入しました。すべて読んでから記録を、と当初は思ったのですが、自らの更に老化しつつあるサメ脳(要は容量すくない)…

アクセルとブレーキを両方踏んでいる。だから変われない。 ―『なぜ人と組織は変われないのか』著:ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー 訳:池村千秋

変わりたい、変わろうと努力している。なのに全然改善できない。そんな思いを抱いたことはないでしょうか。 痩せたいけど、甘いもの・脂っこいものを食べちゃう。勉強しなければいけないけど、携帯見ちゃう。話を聞けるよい父親になりたいのに、また怒鳴って…

隣の大切な人の存在が私の日常を作ってくれている ・・・- 『僕らのご飯は明日で待ってる』著:瀬尾まいこ

人は大切な人を失ったとき、どのようにすれば回復できるのか。 時間が解決してくれるというのは一つの真理かもしれません。しかし、喪失の傷はあまりに深いもので、どれほどの時間がかかるのか想像すらできません。 人が受けた傷は人によってしか癒されない…

ストレステストの根本思想は経営そのもの ― 『これからのストレステスト』編:大山剛

そんなの想定して意味あるのか?という想定。 10mを越す津波がやってくる。原子炉がメルトダウンする。近所の都市銀行が破綻する。 起こる前はあり得ないと考えていたことが起こる。これが現実です。 その一見起こり得ないこと、「例外的だが起こりうること…

世界史で読む人類と感染症の歴史 ― 『人類 vs 感染症』著:岡田晴恵

感想を一文で申し上げるならば、非常によくまとまっており、面白くためになる作品だったと思います!! タイトルにもある通り、本作は人類と感染症との絶えざる闘いを歴史的事柄を交えて説明しています。病原菌が種としての生き残りをかけて宿主に感染し子孫…

不機嫌な「ちびまる子ちゃん」が毒を吐く ・・・- 『円卓』著:西加奈子

先日日本にいる息子から船便で本が届きました。ブックオフでまとめて買っておいたものを段ボールで年に数回送ってもらっています。 実は買ったのは二度目。読み始めて、あ、これ読んだことある!と気づきました。前のはすでに売ってしまい気づきませんでした…

宗教改革の起爆剤となった諧謔の書 ― 『痴愚神礼賛』著:エラスムス 訳:沓掛良彦

エラスムス。 確かにマイナー。訳者があとがきで嘆く通りです。世界史ではルターの宗教改革のくだり、そしてトマス・モア(『ユートピア』の著者)の友人というくだりで出てくる位ではないでしょうか。しかし一度読めば、本作が豊かなヘレニズム的教養の詰ま…

宗教は集団になると恐ろしい?宗教集団アメリカ!? ― 『キリスト教でたどるアメリカ史』著:森本あんり

総評 この本はアメリカ史?についての本です。しかし、焦点を当てるのはむしろアメリカの歴史のダイナミズムの下に隠れる宗教の強さ。あるいはこうも言えるかもしれません - 宗教という隠れ蓑にひそむ人間の汚さ・狡さ。 いずれにせよ、イデオロギーは人を…

リベラル願望に潜む差別意識、でも大家族パーティーやってみました! ― 『IT’S ALL RELATIVE』著:A.J. JACOBS

以前米国人の知人と話をしていた時、私が思想系が好きだと言うと彼が教えてくれたのがJames Altucherです。 jamesaltucher.com このJamesは、超ではない有名人をゲストに呼び話を聞くというPodcastをしており、私も通勤途中で聞きながら面白そうな人がいたら…

市場を出し抜こうとすることそのものが敗者のゲーム。市場平均(インデックス投資)で十分 ― 『敗者のゲーム』著:チャールズ・エリス 訳:鹿毛雄二

皆さん投資してますか? 個別株をマーケットで売買したり、持株会で自社株を月々購入したり、あるいは毎月分配型の投資信託とかを買ったりしていますか。 若い頃は私もしました。個別株、外国株、投信と色々やりました。幸いタイミングが良く100万ちょっとく…

会計から知るタイ・マレーシアのお国柄 ― 『タイ・マレーシアの会計・開示制度』著:御園恵、的手美与子 監修;平松一夫

今年は自分の仕事や業界の復習をしています。併せて在住している東南アジアのことも勉強・復習しようと思い手に取ったものです。 グローバル化が叫ばれて久しいです。 会計の世界でもIFRSという国際会計基準への収斂が少しづつ進んでいるように思います。た…

ヒトとの繋がり・人的資本の重要さを考えました ― 『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』著:宮台真司

21世紀をいよいよ迎えるという1990年代、若者文化の分析と小難しい言い回しを手に登場した氏。一世を風靡した感がありましたが、当時高校・大学時代を過ごした私は(つまり若者です)「けっ、俺の事なんか分かられてたまるか」とばかりに見向きもしませんで…

小気味良いエンタテイメント!ガリレオシリーズ第一作 ・・・- 『探偵ガリレオ』著:東野圭吾

ワクチン接種後気分が優れず、やる気が起きない倦怠感にとらわれ、普段読んでいる本も集中して読めない日が2日程続きました。そこでもっとライトな本を読んでみようと思い立ち、もう二回は読んでいる本作を試しに読んでみる。普通に面白く読めました! 東野…

社会学の名著!注釈がやたら長い・・・―『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』著:マックス・ヴェーバー 訳:大塚久雄

世界史で宗教改革になると必ず出てくる著作です。本棚で10年以上積読になっていることに薄々気づいていましたが、手元の日本語の本がなくなってきて(海外だとこういうのが面倒)、渋々読みだしてみた次第です。 ・・・ 世界史や思想史で頻繁に言及される本…

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