海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

文芸・エッセイ・ドキュメンタリ

労働者の苦境のなかに、ちょっぴり光る幸せをユーモラスに。 |『魔が差したパン』O・ヘンリー 訳:小川高義

O・ヘンリーは昔読んだ気がします。 近年は気にもしなかったのですが、読書系ブログ界隈(まあ私が見回るところ)ではたまに言及されていたので気になっていました。 今回手術のために日本に帰国していますが、母親の「積読」文庫にその姿を発見、読んでみた…

ふんわりやさしめ西作品 |『しずく』西加奈子

西さんのイメージ 西さんの作品は、なんというか、「癖のある」感じの印象。 いつも関西弁の女性主人公が出てきて、ちょっと繊細だったり、あるいは男勝りのユーモラスなキャラだったり。 その一方で擬態語や擬音語のチョイスが読者をはっとさせ、唸らせると…

次第に全貌が明らかになるエログロ・サスペンス |『民宿雪国』樋口毅宏

皆さん、こんにちは。 上の子の高校卒業式に参加してきました。 いやあ、青春っていいですね。式が終わった後は講堂から出て、生徒一同で制服のネクタイ(通称『たくあん』:金色・黄色だから)を一斉に放り投げるというシーンも。その後は生徒同士、仲間同…

ニューヨークトリビアと凶悪犯との対決 |『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー、訳:池田真紀子

皆さん、こんにちは。 この前約10年ぶりにYahoo!オークションを利用し、文庫本をバルクで購入しました(塩野七生さん関連ですが)。 実は事前にメルカリも見たのですが、概観としてメルカリは高く、Yahoo!オークションは軒並み安いという結果でした。 同じ商…

2人の刑事の掛け合いから繙かれる3遺体の真実 |『パズル』恩田陸 

皆さん、こんにちは。 そろそろ異動の時期ですね。私は外国でこじんまりと自らサイロを築いてぼちぼちやっています。しかし、所謂駐在さんはそうはいきません。異動の示達があります。 私の一つ下の上司君は、次はなんとブラジルだそうです。と、遠い・・・…

話すこと・吐き出すこと・受け止めること。終末に救い。 |『十二人の死にたい子どもたち』冲方丁

皆さん、こんにちは。 この前あっという間に二月が終わったとか言っていました。舌の根が乾く間もなく、日本へ帰国致しました。 これから両親の確定申告を代行します。溜息が出ますが、引退世代の年金額が凄まじい・・・。私は逆立ちしてもこんな額はむりぽ…

ノワール系エンタメ小説。最後のツイストにガクブル |『去年の冬、きみと別れ』中村文則

皆さん、こんにちは。 あっという間に2月が終わってしまいましたね。早いもので2/12が消化されてしまいました。 仕事でもプライベートでも「これやりたい」の年間計画を立てたものの、早速遅延気味です。 PDCA的にはCAをいかに上手にやるかが個人的な課題で…

ユーモアと不穏さの通底する音楽短編 |『夜想曲集』カズオ・イシグロ、訳:土屋政雄

皆さん、こんにちは。 高3ボーイズが日本へ帰っていきました。うちのムスコはもう少しこちらにいる予定です。 そして程なく私もまた日本へ一時帰国。ムスコ君の高校卒業式、大学入学式、そして脳のパイパス手術とイベントが続きます。 仕事や生活にリズムが…

新たな作風の模索!? 伊坂作品に珍しい短編集 |『ジャイロスコープ』伊坂幸太郎

皆さん、こんにちは。 息子を含めた高校三年生4人組。せっかく東南アジアの端っこまで来てくれたのだからと、やれ世界遺産の街へだとか、やれこれがおいしいから食ってみろとかで、有給をとってあっちこっちへ連れまわしています。 4人もいると性格も行動も…

読み口良すぎ。宝石をタイトルにした多様なストーリー。 |『サファイア』湊かなえ

皆さん、こんにちは。 高校卒業前の今、ムスコがこちらに友人3人を引き連れて帰ってきました。で、なんというか実に面子が多様。 うちの子が一応アジアハーフ。連れてきたのは、ドイツ在住15年の子(英語の方が得意)、カナダと日本のハーフ、そしてこの前初…

お笑いなし!?大阪の夜の街を綴る純文学作品 |『地下の鳩』西加奈子

皆さん、こんにちは。 突然ですが、最近体調がよろしくありません。よく眠れないのです。 これまで食事、運動、睡眠、とコンディショニングにはそこそこ気を遣ってきました。月初に旅行から帰ってきてから、旧正月のあいさつ回りを経て、昼夜逆転・飲食過多…

作品の書き口と大分ギャップがある!夢想家?天然? |『とにかく散歩いたしましょう』小川洋子

読了してから一週間近く経ってしまい、印象が薄れてきています。 こういうとき、電子書籍というのはちょっと面倒ですね。読中メモは残せますが、私の端末は手書きのようにササっというわけにいかない。というのは私の持っている端末がかなり古いからですが。…

作家の多才ぶりを見せつける奇想短編集 |『いのちのパレード』恩田陸

皆さん、こんにちは。 私はそもそも本好きではありましたが、社会人になってからはそれ程本は読んでいませんでした。きっと読んでも10冊あったかどうか。 思い返せば、本をゴリゴリ読むようになった切っ掛けは2つほど。 10年前、日本から逃げるように海外に…

安定の「静謐」さで世界を優しく描く。 |『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

皆さん、こんにちは。 当地では旧正月を迎えました。 激しく鳴り響く爆竹を十数分と親族との過食?とを堪能しました笑 改めて思いますが、華僑の方々は本当に家族を大事にしますよね。集まりが大好き。そして話好き。私は広東語が喋れんので、連れていかれて…

軽妙な筆致でワイルドな軽自動車旅行を綴る。楽園、見つかりましたか? |『今夜世界が終わったとしても、ここにはお知らせが来そうにない。』石澤義裕

皆さん、こんにちは。 とうとう居所に戻ってきました。 当初、ローマからアブダビで乗り換えの予定でしたが、ローマでの出発が遅れ、乗り継ぎに接続できず。結局、アブダビからドーハ、ドーハから居所へ戻ってきました。 驚いたのは、EUでは飛行機が当初予定…

意外に読める女性の恋愛バトル!? |『彼女の嫌いな彼女』唯川恵

イタリアで一番?印象に残ったピサの斜塔。 皆さん、こんにちは。 とうとう短い旅行も終わりに近づきつつあります。これまでヨーロッパはフランスと今回のイタリア、二つしか行ったことがありません。で、もし、住めるとしたら、と考えると、やはりイタリア…

社会の同調圧力と狂気の一個人との相克 |『コンビニ人間』村田紗耶香

滞在先のAirbnbの宿からアルノ川を望む。一泊一部屋一万一千円也。 皆さん、こんにちは。 フィレンツェで感じたのですが、こちらは「犬天国」であります。電車の中にも犬、お店の中にも犬、散歩のお供に犬。本当に多くの現地の方が犬を連れて歩いています(…

村田さん、天才か!?すごいディストピア |『信仰』村田紗耶香

皆さん、こんにちは。 たまには気まぐれを起こすものだなという話を。 私はかなり頑固だと思います。決まった仕事を決まった計画で淡々とこなすことが好きです。 読書に関しても同様で、価値の定まったものに一定の時間を割き、じっくりと堪能し尽くしたい思…

「閉塞感」「喪失感」の中に希望と恢復を描く |『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹

(前段与太話です。失礼します。) 皆さんこんにちは。 突然ですが、今まで一度に大きな買い物(キャッシュアウト)って、どれくらいでしょうか? いやあ、実は私のところの1月のクレジットカードの請求額を見ていてちょっとたじろいだって話ですが。78万7,4…

面白いのに、イヤミス的な後味の悪さ。その癖こそが魅力!? |『PK』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。 うちの会社、始業は8:45なのですが、週3ある出社日はいつも7:00くらいに出社します。朝早く何やっているのかというと、昨年末に読んだ『メモの魔力』を片手に1000本ノックならぬ1000問自己分析をしています。 50前のおっさんが今更?な感…

ダメンズ選手権入賞はカタいか!? |『僕のなかの壊れていない部分』白石一文

皆さんこんにちは。 新年あけてはや一週間ですが、二日から仕事をしていますと普通に正月気分ではありません。むしろここ東南アジアの端くれでは、来月やってくる旧正月にむけてスーパーではミカンの販売が多くなり、街はオレンジ・赤の雰囲気が強くなります…

水郷地帯で頻発する失踪事件。人のアイデンティティとは |『月の裏側』恩田陸

皆さん、明けましておめでとうございます。 新年早々、嫁と夫婦喧嘩をしております。はあ。 今年も私は嫁の月として彼女の周りをぐるぐるとしていくことになりそうです。 そして、もう一つ。コメントをぎゅぎゅぎゅと短くしてみたく思います。時短、ですね。…

喪失感・諦観を抱え、前へすすんでいく |『羊をめぐる冒険』村上春樹

皆さん、年末いかがお過ごしでしょうか。 今回たまたま休暇の消化もあり年末居所でゆっくりしております。 準備のない休暇ということもあり本当に家に居るだけなのですが、思索の時間というか今年一年をじっくり振り返ることが出来て、実にいいじゃないか、…

肩ひじ張らない、丁寧なエッセイ |『ひとまず上出来』ジェーン・スー

ひょんなことから年末は意外にも時間が取れることになりました。 本ブログはひたすらにオッサンの読書感想文を垂れ流すものですが、ひょっとしたら雑記的なものが数日流れるやもしれません。そんなときは時は普通にスルーしてください。 ひとこと 令和の現在…

若い調律師のアツい姿勢。周囲に磨かれつつ良き仕事人へと至る成長小説 |『羊と鋼の森』宮下奈都

バンコクはマリファナが合法とか。葉っぱマークの店がいたるところに。 皆さんこんにちは。 引き続きバンコクから書いています。 子どもの学費が片付いたら、今とは違うどこかで暮らそうか、などと家内とよく話します。 今住んでいる居所もいいのですが、別…

自分は何をしたいのか。思春期の鬱屈を瑞々しく掬う佳作 |『14歳』千原ジュニア

バンコクのジャムにスタックして家内の機嫌が悪くなるさかなのバス車中 皆さんこんにちは。 東南アジアではジャカルタの渋滞がやばい、という話を聞いたことがあります。同様にバンコクの渋滞も相当だ、という話も耳にしました。 私、無駄に旅情を感じたがる…

気怠い雰囲気の中で、真面目に退廃を見つめる |『1973年のピンボール』村上春樹

皆さんこんにちは。 私、あまり作家さんは手広くは読みません。最近だと恩田陸さん、湊かなえさん、西加奈子さん、が結構多かったかと。そして本は読んだら基本的には処分(売却)です。 他方、印象に残ったもの・もう一度読むかも(読みたい)というものは…

ハードコアエロ、転じて公権力の恐怖、そして思うのは近しい人をどう理解するかという事 |『日本のセックス』樋口毅宏

こんにちは。いやあ、あっという間に今年も終わりですね。 ここでは殆ど読書にまつわることしか書かないのですが、年末は少し趣向を変えようかな、と。読書をして血肉となった知識から立てたYear Resolutionですが、その結果について記事を書きたいと思いま…

ハッピーエンドのディストピア? スリリングさに洒脱とユーモアが入り混じる傑作 |『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。 月末憂鬱なこと。私は家計簿つけですね。お手製のエクセルで管理です。 私と家内は国外で、子どもたちは日本ですので、邦貨と外貨で2シート作成し、トップに合算ベースのサマリーシートと3シート構成のエクセルです。 いやあ、今年はもう…

独特の世界観、ファン向けか |『きのうの世界』恩田陸

そういえば、そろそろ今年も残すところ一カ月半。 毎年一年の計、というか、new year resolutionというのを作っています。「今年はこういうことしたい」という決意表明ですね。 そろそろ締めにかからなねば、ですね。 出来ていることもあり、出来ていないこ…

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