海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

文芸・エッセイ・ドキュメンタリ

スリラー系作品?ひそやかな純愛小説ともとれる!? |『Nのために』湊かなえ

はじめに 湊かなえ氏の2010年の作品。『告白』での小説デビューが2008年であることを考えると、初期の作品に該当するでしょうか。 多くの人物が語り、真実がどこにあるか分からない、心理スリラー的作品。ただ読み方によっては恋愛小説? 結局どれが本当の発…

ルッキズム、個性、孤独など。寓意に満ちた短編集 |『炎上する君』西加奈子

はじめに 西氏の2010年の作品。8編の短篇からなる作品。 なお、表題作「炎上する君」は映画化もされた模様。 youtu.be ひとこと これまで「ことば」の女王として私の中で(だけ?)際立っていた西氏。 しかし、本作を読み、かなりふかぁーく感じた次第です。…

ホテルが舞台の群像劇。杉江氏の渾身の解説が印象的 |『夏の名残の薔薇』恩田陸

はじめに 最近、月一で読んでいる恩田氏の作品。 今回の作品、結構ドラマドラマしているな、というのが印象ですかね。 概要 内容をザックリ言うと、夏の人里離れた高級ホテルで繰り広げられる群像劇、といったところ。 一代で財を成した沢渡グループが運営す…

日本の日常食、ミニマムスタンダードの提案 |『一汁一菜でよいという提案』土井善晴

会社の元同僚の姉さんみたいな方からもらった本。ぷらっと小旅行に行っている時に読んだものです はじめに 料理研究家の土井善晴氏による料理本。内容はといえば、日本の日常食、ミニマムスタンダードの提案、とでも言ったものかと思います。 手作り神話と日…

内容は実はほっこり目、読み口はサラサラ。 |『ウォーク・イン・クローゼット』綿矢りさ

皆さん、こんにちは。 私、普段は不機嫌の固まりで、毒を吐き、口喧嘩も辞さない問題中年です。ところが、最近罰が当たったか、同様に不機嫌・不平を突き返されることが増えてきました(涙)。 それが影響してか、さっぱり眠れなくなったのがこの前の週末。 …

終始食い違う意見に苦笑しつつ読了・・・ |『死という最後の未来』曽野綾子、石原慎太郎

はじめに 自分の病気や親の痴呆をうけ、死について考えることが増えてきました。 で、とある日にブックオフに行って目に留まったのが本作。 石原氏は既に他界されていますが、本作上梓したとき、曽野氏90歳、石原氏89歳。この年齢で現役というのがすごいので…

<僕>の喪失と恢復の物語 | 『ノルウェイの森』村上春樹

はじめに 25年以上ぶりの再読。私にとっては村上氏の代表作といっても良い作品。 大学時代によく読んでいました。苦悩し、文学・哲学をたしなみ、音楽を愛し、性的に満たされる「僕」に憧れていたと思います。 一回読んでは期間をあけ、また読んで。そういう…

珍妙?西遊記、エクソシスト、合唱団、証券誤発注、断片的印象が残るエンタメ作品 |『SOSの猿』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。 先週家族旅行でハノイ(ベトナム)に行ってきました。 私と家内は居所のアジアの端から。大学生と高校生の子供たちは日本から。つまり現地集合。 私と家内は20年ぶりのハノイでしたが、ハノイは大分変わったという印象。観光客だらけ。で…

ドロドロ系家族ドラマ。TBSでドラマ化も。 |『夜行観覧車』湊かなえ

はじめに イヤミスの湊かなえ氏による2010年出版の作品。2013年にTBSでドラマ化されたようです。 www.tbs.co.jp 家族の物語ということで 本作、医師のエリート一家、背伸びして高級住宅街に越してきた一家、そして元から住宅街に住まうハイソも品性の汚い一…

元裁判官が主役の推理小説モノ |『象と耳鳴り』恩田陸

皆さんこんにちは。 最近日々自己分析を進める中で、如何に自分の性格が悪かったかということをつくづく思い知らされる日々であります(おっさんのくせに今更か、ですよね)。 こと両親との関係については顕著です。 これまではいつまで反抗期かというくらい…

僕が感じた大阪、こんな感じだったなぁー |『通天閣』西加奈子

大阪、ミナミのパワー。 グリコと道頓堀がお出迎え。 20を越して初めて踏んだ大阪の地は、東京生まれ・東京育ちの私にとってはおよそ「異世界」という言葉では尽くしきれない、尋常ならざる世界でした。 天王寺公園の青空カラオケ。週末に行くたびにお祭りが…

奇怪な現象も消えた。憧れのお姉さんも消えた。 |『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦

小学四年生のアオヤマ君 小学四年生だったころ、自分は何を考えていたか。 ポテチが食べたい、アイスとか買い食いしたい、給食で友人を笑わせて牛乳吹かせたい、野球でホームランを打ってみたい。 そう、つまりは普通の、それも極めて普通の小学生。 しかし…

軽妙で肩の凝らない作品。ちょっとシュールな村上テイストも健在 |『カンガルー日和』村上春樹

皆さんこんにちは。 仕事がにわかに忙しくなり、読書はしているものの、備忘録がつけられぬ状況です。 本書も、一週間前に読了したもの。 より短く、端的に記録する、というのもで良いのかもしれませんね。 はじめに 村上春樹氏の短編小説。1983年出版なので…

生まれ変わりの神秘?恩田氏の初期作品は心なしか、初々しく癖の薄い作品 |『不安な童話』恩田陸

皆さんこんにちは。 忙しくてバタバタしておりました。そして読んだ本も記録をつけずにほったらかし。危うく忘れるところでした。 はじめに 本作、恩田氏の極々初期の作品。1992年が彼女のデビューの年で、本作は1994年のもの。 初期のころから恩田氏のごっ…

異人種家族の困難と悲劇を淡々と描く佳作 |『EVERYTHING I NEVER TOLD YOU』CELESTE NG

皆さんこんにちは。 本日Amazonから一通のメールが来ました。曰く、「あなたのレビューはコードに抵触しました。なので今までのレビューは全消し。そしてこの判定はくつがえりません」。 突然なのでちょっと驚きました。ちょっと残念。でも、ある意味Amazon…

孤児院出身の二人の異なる人生。 |『境遇』湊かなえ

ここ数カ月、野球の先発投手よろしく自分の読書にローテーションが出来つつあるのを感じます。 伊坂幸太郎、村上春樹、恩田陸、湊かなえ、西加奈子、の諸氏。このあたりがローテーションの柱。次の候補として呼び名が上がるのが塩野七生、中村文則、白石一文…

さっぱり平明、読みやすくて面白い! |『むかしのはなし』三浦しをん

皆さん、こんにちは。 日本は暑いようですが、皆さんお変わりありませんでしょうか。 暑いというと、熱い甲子園予選。とうとう始まりましたね。 便利な世の中になったもので、今や予選からネットで中継で(しかもタダで)見られる時代となりました。 昨年最…

やっぱり面白い伊坂作品。珍しい中篇集も流石の展開に即没入 |『フィッシュストーリー』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。 個人的伊坂幸太郎フェアも終盤を迎えつつあります。何とこれで通算25作目の読了。その中でも未読であった本作。 フィッシュストーリー、と聞いて、サメ脳の私は当然、魚の話かと思いました。まあ結果違ったわけですが。 でも、期待通りの…

実験的作風の短編が多いも、中村氏のエロ・ノワール?が光る |『A』中村文則

皆さん、こんにちは。 ブログを書く方にとってしばしあると思われること。 「書くのが面倒くさい」 いま、それです。 私のブログはそもそも書籍の感想を綴るもの。ベクトルは外に向いているようでむしろ自己に向いているのに、それでも心が、ああメンドクサ…

暗い将来しか見えん | 『未来の年表』河合雅司

皆さん、こんにちは。 将来の見込み・予想。たまにしますね。まあ私の場合大概外れますが笑 思えば大学時代の1990年後半、私は日本に対して大幅にネガティブ予想をしていました。 二つ上の先輩が「俺も来春からは金融マンだ、はっはっは」と山一證券への内定…

西さんの、ことこと、もぐもぐなエッセイ |『ごはんぐるり』西加奈子

皆さん、こんにちは。 ガールズトークで、ああいう男と付き合えるかどうかって話、することあると思います。 身長低いのはダメ、とか、鼻毛が伸びてるのだけはもう許せないとか。 当然ながら脳みその6割くらい(それ以上?)を占めると思われる若き男子たち…

イヤミスの源流は、自らを疑わない「主観と主観の殴り合い」!? |『ユートピア』湊かなえ

皆さん、こんにちは。 日本から居所に戻ってきて、はや二週間。 昨日、祖父母と同居する高校生の娘からLINEにて連絡。 「悲劇!今日、おじいちゃんが、おばあちゃんが作った昼ご飯が足らず、おばあちゃんが居ないすきに自分でレンジでチンして生肉を食べたそ…

「僕」の妻「有紀子」はその後どうなるのか・・・ |『国境の南、太陽の西』村上春樹

皆さん、こんにちは。 昨年から伊坂幸太郎読み直しフェアを勝手に開催しておりました。で、昨年と今年で結構読んだんですね。中古で廉価で買えるものについては概ね読み、いくつか残ったものを惜しみながら指折り読んでいくという感じ。 今年はもう一つ、同…

超能力夫婦の裏に潜む秘密の正体。絶妙のストーリーテリング。 |『エンド・ゲーム 常野物語』恩田陸

はじめに 常野物語の第三弾。タイトルを見ると、シリーズもこれで終わりか、と思わせますが、その真偽たるや如何に!? あらすじ で内容ですが、今回はどちらかというとモダンホラー的な風合い。 「私たち、誰かに狙われている?」「あいつらが出てきたら、…

華のない大学生活に乾杯!失恋?そういうもんです! |『太陽の塔』森見登美彦

皆さん、こんにちは。 認知症がすすみ、食欲が半端ではなくなった父。起きている間、殆ど口を動かしているのではないかというくらい。 この数カ月、私と妻がいたので、子どもたちを合わせて6人分の食事と後片付けは別に何ともない話でした。 この先、料理下…

狂気の淵に光る理性の綱渡り。そのまま生きよ。 |『何もかもが憂鬱な夜に』中村文則

中村氏の作品はこれで四作目。約三カ月ぶりの再見となります。 氏の作品はノワールで陰鬱な作風が特徴ですが、これまで読んだ「掏摸」「王国」「去年の冬、きみと別れ」と比較しても本作「何もかもが憂鬱な夜に」は、まあ暗いこと。 ただ、いろんな意味で結…

もはやロビンフッド!?痛快な四人組に拍手 |『陽気なギャングは三つ数えろ』伊坂幸太郎

皆さん、こんにちは。 陽気なギャングシリーズ(っなんて言うのかどうか…)第三弾をようやく手にしました。 第二弾まで読み返したときは4月でまだ入院中でしたが、こうして家で読書ができること、誠に有難い限りです。 第二弾を読んでいるときに作品について…

押しつけがましくないエッセイ |『歩きながら考える』ヤマザキマリ

皆さん、こんにちは。 先週末に、外科に行ってきました。 20年前に右膝の前十字靭帯の断裂後、再建手術をしたのですが、最近しゃがんだりヨガで90以上膝を曲げると膝が外れることが有るんですよ。。。 病気やケガばかりで嫌ですが、3時間ほど待たされる間に…

猫のトムとサレ男公務員「僕」が国を救う!? |『夜の国のクーパー』伊坂幸太郎

皆さん、こんにちは。 突然ですが、本当にタイトルのつけ方が無粋でセンスがなくって申し訳ないです。 作品は実に面白かったのですが、吹けば飛ぶようなわずかなセンスでタイトルをつけて、こうなりました。 そろそろAIを使わなきゃですかね。 ただ私、つい…

常野物語だけど、どちらかというと青春小説か

皆さん、こんにちは。 週末に同じ学年の高校の部活仲間の墓参りに行ってきました。 そいつが逝って、もう四人しか部活仲間がいないのですが、気づくと皆、なかなか色々だなあと。 亡くなった奴は子どもと嫁さんを残して自死。コロナ中ということもあったけど…

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