海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

文芸・エッセイ・ドキュメンタリ

死んだ人が見える?PV。若手アーティストが誘う謎の世界の源泉とは? |『禁じられた楽園』恩田陸 

皆さんこんにちは。 いつの間にか師走ですね。 もう年末が待ち遠しい感じになってきました。当地では駐在のお偉方の年末の休暇が続々と発表になっています。皆さんクリスマス前後から三が日程度までは日本に帰られる予定のかたが多いみたいです。 対して当地…

ブラック企業に追い込まれた人々の苦境と恢復をビビッドに描く |『ちょっと今から人生かえてくる』北川恵海 

皆さんこんにちは。 先週引っ越しを完了しました。 引っ越し後困ったのは、スーパーマーケットでイマイチぴんと来る店が近くにないこと。まあ東南アジアの生鮮食品のレベルは日本と比すると雲泥の差がありますが、それでも日本人基準でまあ受け入れられると…

山をめぐる心理描写と、連作の妙 |『山女日記』湊かなえ

皆さん、こんにちは。 やっと引っ越しの目途がつき、来週には引っ越しです。 それにしても子供たちが日本に戻り、今や同居するのは夫婦のみ。子どもの着なくなった服、昔の学校の道具、果ては就学前後のおもちゃなどが出てくると時代が経ったことを実感しま…

面白い!でも読後にしんみりと考えてしまう作品 |『フーガはユーガ』伊坂幸太郎

皆さん、こんにちは。 懸案の来月の引っ越しに先んじての室内塗装。これがやっとこさ終わりました。掃除を含めて計三日かかりました。もう、体がバキバキです。 老後、というか子どもたちが片付いたら、日本に帰る予定ではあります。が、住む家がないので地…

茶道を通して、自分を受け入れる・空気を感じる |『日日是好日』森下典子

皆さん、こんにちは。 突然ですが、皆さん眠れていますか? 私は若い時から夜型・睡眠不足気味という生活で、ベッドに入ると瞬殺、週末ともあろうものなら翌日午前10時、正午、ひどい時には16時頃に目覚めるということもありました。 ところが、ところが。 4…

良き人の気持ちが「縁」と奇蹟を呼び起こす |『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾

皆さん、こんにちは。 そういえば、トランプ氏が大統領になりましたね。 突然ですが皆さん、投資はどうされますか? 私は金融機関で勤務していることもあり個別株への投資は許可制なので面倒でやりません(アジア株なんて分かりませんが)。ただ、日本を出る…

ユーモラスも「読ませる」ソマリア記。民族と国際社会 |『謎の独立国家ソマリランド』高野秀行

皆さん、こんにちは。 近頃感想を書くのが遅れています。 本は読むには読むのですが、形に残すのが面倒で。。。 ほぼ他人を意識せず、時に自分で見返しても、良く分からないこともあるレビューなのに。それでも面倒くさい。 以前、三行だけの書評ブログ、み…

女子高生らが一人称で語る、事件への顛末と真相 |『蛇行する川のほとり』恩田陸 

皆さん、こんにちは。 そういえば、この11月でこちらの会社でお世話になって10年経ちました。 思えば色々ありました。会計課には嫌われ「あいつはアホで英語も喋れないからもう話したくない」と上司にチクられたり、午前2時まで必死こいてエクセルの関数のミ…

起伏に富むストーリ展開。世界史との交差も | 『ねじまき鳥クロニクル』村上春樹

皆さんこんにちは。 あっという間に一年も残すところあと二月となりました。会社では、ついこの前上期(1H)の自己評価を終えたばかりですが、個人的に勝手にやっているYear Resolution(1月初めの12月終わり)はまだまだ積み残しがあります。 こちらもきちん…

輝いているようで茫漠たるモテ系、下位だけど打ち込むものがある非モテ系、高校生大変そう |『桐島、部活やめるってよ』朝井リョウ

皆さん、こんにちは。 私事ですが、昨日で結婚20年でした。 前々から家内とは、早いねー、あっという間だね―などと話していましたが当日まで二人とも忘れていました。仕事中ふと思い出し、どうしよっと思い、急いでグーグルマップでお花屋さんを探し、ちっち…

短篇連作で綴る、殺し屋と泥棒の物語 |『首折り男のための協奏曲』伊坂幸太郎

皆さん、こんにちは。 そういえば選挙、あるようですね。私の居所では在外選挙として早速始まっています。 期せずして期限前であります。 因みに、投票した結果は、最終日に大使館の職員の方がフィジカルに日本に運ぶのだとかなんとか。 本当にご苦労様でご…

イヤミスあり、ツイストあり、島の閉塞感をねっとり描く |『望郷』湊かなえ

皆さん、こんにちは。 突然ですが、島って、どんな印象でしょうか? 私はもう島っていうとダイビングや海、バカンスという印象です。というか大好きです。 学生の頃は、沖縄に行って島めぐりみたいなことも。水納島、慶良間島、石垣島、波照間島、竹富島など…

食べることへの愛をユーモアたっぷりに描く |『残るは食欲』阿川佐和子

世に食欲の秋と申します。 地球温暖化が叫ばれ、秋の訪れが後ズレにズレるなかで、秋の食欲への着火も遅くなるのでしょうか? アジアの端くれに住まう身には想像に任せる以外ありません。 さて、今回は食にまつわる阿川さんのエッセイを読みました。こちらの…

戦後の昭和をリアルに表現した翻訳が影の主役か |『浮世の画家』カズオ・イシグロ、訳:飛田茂雄

はじめに 英国のカズオ・イシグロによる1986年の作品。なお彼は2017年にノーベル文学賞を受賞。 戦後間もない1948年から1950年の日本を舞台に、戦前・戦中にもてはやされた某画家の、戦後の葛藤と追想を綴る。 時代のせいか、個人のせいか 久し振りにカズオ…

形容できない物語?SF?心の話?生き方の話? | 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹

はじめに これまた25年以上ぶりの再読。奥付を見ると平成11年30刷とあります。あ、でも古本ですね。鉛筆で「2冊590円」と奥付上部にありました。まだまだ町の古本屋さんという存在がちらほらと見える時代でありました。 何が良かったのだろう いやあ、この作…

キリスト者のほんわか箴言集 |『置かれた場所で咲きなさい』渡辺和子

皆さん、こんにちは。 当地で古本を頂きました。送料300円払えばあげるよ、ということで10冊くらい?頂戴しました。 で本作はそのうちの一冊。結果はうーん、という感じ。 ところで。 海外で日本語の本を売買する人ってのに会いませんね。 私、読んだ本を処…

警察暴走のディストピア。洒脱さとツイストはデフォルト、におわせ結末は明るめ |『火星に住むつもりかい?』伊坂幸太郎

はじめに 伊坂氏による2015年の発表作品。 国家(平和警察)が市民を疑心暗鬼にさせ、火のないところに煙を立たせるかのような、ディストピア風テイストの小説。 洒脱な会話描写はいつも通り。いわゆる第二期のモヤモヤな進行ながら、最後はやや明るめな結末…

スリラー系作品?ひそやかな純愛小説ともとれる!? |『Nのために』湊かなえ

はじめに 湊かなえ氏の2010年の作品。『告白』での小説デビューが2008年であることを考えると、初期の作品に該当するでしょうか。 多くの人物が語り、真実がどこにあるか分からない、心理スリラー的作品。ただ読み方によっては恋愛小説? 結局どれが本当の発…

ルッキズム、個性、孤独など。寓意に満ちた短編集 |『炎上する君』西加奈子

はじめに 西氏の2010年の作品。8編の短篇からなる作品。 なお、表題作「炎上する君」は映画化もされた模様。 youtu.be ひとこと これまで「ことば」の女王として私の中で(だけ?)際立っていた西氏。 しかし、本作を読み、かなりふかぁーく感じた次第です。…

ホテルが舞台の群像劇。杉江氏の渾身の解説が印象的 |『夏の名残の薔薇』恩田陸

はじめに 最近、月一で読んでいる恩田氏の作品。 今回の作品、結構ドラマドラマしているな、というのが印象ですかね。 概要 内容をザックリ言うと、夏の人里離れた高級ホテルで繰り広げられる群像劇、といったところ。 一代で財を成した沢渡グループが運営す…

日本の日常食、ミニマムスタンダードの提案 |『一汁一菜でよいという提案』土井善晴

会社の元同僚の姉さんみたいな方からもらった本。ぷらっと小旅行に行っている時に読んだものです はじめに 料理研究家の土井善晴氏による料理本。内容はといえば、日本の日常食、ミニマムスタンダードの提案、とでも言ったものかと思います。 手作り神話と日…

内容は実はほっこり目、読み口はサラサラ。 |『ウォーク・イン・クローゼット』綿矢りさ

皆さん、こんにちは。 私、普段は不機嫌の固まりで、毒を吐き、口喧嘩も辞さない問題中年です。ところが、最近罰が当たったか、同様に不機嫌・不平を突き返されることが増えてきました(涙)。 それが影響してか、さっぱり眠れなくなったのがこの前の週末。 …

終始食い違う意見に苦笑しつつ読了・・・ |『死という最後の未来』曽野綾子、石原慎太郎

はじめに 自分の病気や親の痴呆をうけ、死について考えることが増えてきました。 で、とある日にブックオフに行って目に留まったのが本作。 石原氏は既に他界されていますが、本作上梓したとき、曽野氏90歳、石原氏89歳。この年齢で現役というのがすごいので…

<僕>の喪失と恢復の物語 | 『ノルウェイの森』村上春樹

はじめに 25年以上ぶりの再読。私にとっては村上氏の代表作といっても良い作品。 大学時代によく読んでいました。苦悩し、文学・哲学をたしなみ、音楽を愛し、性的に満たされる「僕」に憧れていたと思います。 一回読んでは期間をあけ、また読んで。そういう…

珍妙?西遊記、エクソシスト、合唱団、証券誤発注、断片的印象が残るエンタメ作品 |『SOSの猿』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。 先週家族旅行でハノイ(ベトナム)に行ってきました。 私と家内は居所のアジアの端から。大学生と高校生の子供たちは日本から。つまり現地集合。 私と家内は20年ぶりのハノイでしたが、ハノイは大分変わったという印象。観光客だらけ。で…

ドロドロ系家族ドラマ。TBSでドラマ化も。 |『夜行観覧車』湊かなえ

はじめに イヤミスの湊かなえ氏による2010年出版の作品。2013年にTBSでドラマ化されたようです。 www.tbs.co.jp 家族の物語ということで 本作、医師のエリート一家、背伸びして高級住宅街に越してきた一家、そして元から住宅街に住まうハイソも品性の汚い一…

元裁判官が主役の推理小説モノ |『象と耳鳴り』恩田陸

皆さんこんにちは。 最近日々自己分析を進める中で、如何に自分の性格が悪かったかということをつくづく思い知らされる日々であります(おっさんのくせに今更か、ですよね)。 こと両親との関係については顕著です。 これまではいつまで反抗期かというくらい…

僕が感じた大阪、こんな感じだったなぁー |『通天閣』西加奈子

大阪、ミナミのパワー。 グリコと道頓堀がお出迎え。 20を越して初めて踏んだ大阪の地は、東京生まれ・東京育ちの私にとってはおよそ「異世界」という言葉では尽くしきれない、尋常ならざる世界でした。 天王寺公園の青空カラオケ。週末に行くたびにお祭りが…

奇怪な現象も消えた。憧れのお姉さんも消えた。 |『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦

小学四年生のアオヤマ君 小学四年生だったころ、自分は何を考えていたか。 ポテチが食べたい、アイスとか買い食いしたい、給食で友人を笑わせて牛乳吹かせたい、野球でホームランを打ってみたい。 そう、つまりは普通の、それも極めて普通の小学生。 しかし…

軽妙で肩の凝らない作品。ちょっとシュールな村上テイストも健在 |『カンガルー日和』村上春樹

皆さんこんにちは。 仕事がにわかに忙しくなり、読書はしているものの、備忘録がつけられぬ状況です。 本書も、一週間前に読了したもの。 より短く、端的に記録する、というのもで良いのかもしれませんね。 はじめに 村上春樹氏の短編小説。1983年出版なので…

海外オヤジの読書ノート - にほんブログ村
PVアクセスランキング にほんブログ村