海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

☆☆☆

スリラー系作品?ひそやかな純愛小説ともとれる!? |『Nのために』湊かなえ

はじめに 湊かなえ氏の2010年の作品。『告白』での小説デビューが2008年であることを考えると、初期の作品に該当するでしょうか。 多くの人物が語り、真実がどこにあるか分からない、心理スリラー的作品。ただ読み方によっては恋愛小説? 結局どれが本当の発…

会社の目標のアラインメントを整える、これ相当ムズイと思う |『バランスト・スコアカードによる戦略実行のプレミアム』ロバート・キャプラン、デビッド・ノートン、 監訳:櫻井通晴、伊藤和憲

はじめに KPIについての本は幾つか読んできました。 本作の作者のキャプラン氏、ノートン氏の著作も以前読んでみました。 lifewithbooks.hateblo.jp 結果としては本作の方が良いと思います。 会社の目標って? 私は部署の予算とかKPIとかを見るような仕事を…

ホテルが舞台の群像劇。杉江氏の渾身の解説が印象的 |『夏の名残の薔薇』恩田陸

はじめに 最近、月一で読んでいる恩田氏の作品。 今回の作品、結構ドラマドラマしているな、というのが印象ですかね。 概要 内容をザックリ言うと、夏の人里離れた高級ホテルで繰り広げられる群像劇、といったところ。 一代で財を成した沢渡グループが運営す…

日本の日常食、ミニマムスタンダードの提案 |『一汁一菜でよいという提案』土井善晴

会社の元同僚の姉さんみたいな方からもらった本。ぷらっと小旅行に行っている時に読んだものです はじめに 料理研究家の土井善晴氏による料理本。内容はといえば、日本の日常食、ミニマムスタンダードの提案、とでも言ったものかと思います。 手作り神話と日…

内容は実はほっこり目、読み口はサラサラ。 |『ウォーク・イン・クローゼット』綿矢りさ

皆さん、こんにちは。 私、普段は不機嫌の固まりで、毒を吐き、口喧嘩も辞さない問題中年です。ところが、最近罰が当たったか、同様に不機嫌・不平を突き返されることが増えてきました(涙)。 それが影響してか、さっぱり眠れなくなったのがこの前の週末。 …

終始食い違う意見に苦笑しつつ読了・・・ |『死という最後の未来』曽野綾子、石原慎太郎

はじめに 自分の病気や親の痴呆をうけ、死について考えることが増えてきました。 で、とある日にブックオフに行って目に留まったのが本作。 石原氏は既に他界されていますが、本作上梓したとき、曽野氏90歳、石原氏89歳。この年齢で現役というのがすごいので…

<僕>の喪失と恢復の物語 | 『ノルウェイの森』村上春樹

はじめに 25年以上ぶりの再読。私にとっては村上氏の代表作といっても良い作品。 大学時代によく読んでいました。苦悩し、文学・哲学をたしなみ、音楽を愛し、性的に満たされる「僕」に憧れていたと思います。 一回読んでは期間をあけ、また読んで。そういう…

淡泊かつ単調に衰退を描く | 旧約聖書 列王記 『聖書 新共同訳』

はじめに サムエル記では、ユダヤのメジャーな王、サウル・ダビデと続きました。 そしてこの列王記ですが、賢者として名高いソロモン王の話が冒頭にあります。 それ以降は小物がおおく、神の道にも従わず、結果イスラエル国とユダ国に分裂、そしてアッシリア…

ドロドロ系家族ドラマ。TBSでドラマ化も。 |『夜行観覧車』湊かなえ

はじめに イヤミスの湊かなえ氏による2010年出版の作品。2013年にTBSでドラマ化されたようです。 www.tbs.co.jp 家族の物語ということで 本作、医師のエリート一家、背伸びして高級住宅街に越してきた一家、そして元から住宅街に住まうハイソも品性の汚い一…

元裁判官が主役の推理小説モノ |『象と耳鳴り』恩田陸

皆さんこんにちは。 最近日々自己分析を進める中で、如何に自分の性格が悪かったかということをつくづく思い知らされる日々であります(おっさんのくせに今更か、ですよね)。 こと両親との関係については顕著です。 これまではいつまで反抗期かというくらい…

軽妙な死にまつわるエッセイ |『遺言未満、』椎名誠

脳梗塞をきっかけに、40代にして死を意識し始めました。 もちろん、死に対する意識は長らく持っていました。小学生で飼っていた猫が死んだとき、大学生で友人を亡くしたとき、30前後に立て続けに3回ほど入院をしたとき。 そしてこの度、脳の血管のバイパス手…

僕が感じた大阪、こんな感じだったなぁー |『通天閣』西加奈子

大阪、ミナミのパワー。 グリコと道頓堀がお出迎え。 20を越して初めて踏んだ大阪の地は、東京生まれ・東京育ちの私にとってはおよそ「異世界」という言葉では尽くしきれない、尋常ならざる世界でした。 天王寺公園の青空カラオケ。週末に行くたびにお祭りが…

奇怪な現象も消えた。憧れのお姉さんも消えた。 |『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦

小学四年生のアオヤマ君 小学四年生だったころ、自分は何を考えていたか。 ポテチが食べたい、アイスとか買い食いしたい、給食で友人を笑わせて牛乳吹かせたい、野球でホームランを打ってみたい。 そう、つまりは普通の、それも極めて普通の小学生。 しかし…

介護の声掛け、事始め |『認知症の人にラク伝わる言いかえフレーズ』佐藤眞一、島影真奈美

皆さん、こんにちは。 独り言ですが、どうやら今後年に3、4回、各一か月くらいの長さで一時帰国をするようになりそうです。 実は、私が勤める会社では自宅勤務が週二日できるという内部制度になっています。ただ結構緩い制度なので拠点長がOKを言えば(加…

軽妙で肩の凝らない作品。ちょっとシュールな村上テイストも健在 |『カンガルー日和』村上春樹

皆さんこんにちは。 仕事がにわかに忙しくなり、読書はしているものの、備忘録がつけられぬ状況です。 本書も、一週間前に読了したもの。 より短く、端的に記録する、というのもで良いのかもしれませんね。 はじめに 村上春樹氏の短編小説。1983年出版なので…

美少年ダビデの成り上がり的ストーリーが印象的。でもオイタでつまづくってねぇ。 |旧約聖書 サムエル記 『聖書 新共同訳』

はじめに サムエル記は、サムエルという預言者が概ねカバーした時代のお話です。 これまでユダヤの民は政教分離、というよりも、『教』しかなかったところに、『政』が持ち込まれます。つまり、民が王を持ちたい言いだしたのです。 その結果、サウル王、つい…

東洋哲学も勉強したいな、とつらつら思わせる佳作 |『ハーバードの人生が変わる東洋哲学』著:マイケル・ピュエット&クリスティーン・グロス=ロー、訳:熊谷淳子

タイトルがいいのか悪いのか 結論から言うと、なかなか良かった。 こういってしまうのも少し癪なのです。というのは、『ハーバード式』『スタンフォード式』『成功者が実践する~』などというタイトルが個人的には大嫌いだからです。 ではなぜ買ったか。 東…

生まれ変わりの神秘?恩田氏の初期作品は心なしか、初々しく癖の薄い作品 |『不安な童話』恩田陸

皆さんこんにちは。 忙しくてバタバタしておりました。そして読んだ本も記録をつけずにほったらかし。危うく忘れるところでした。 はじめに 本作、恩田氏の極々初期の作品。1992年が彼女のデビューの年で、本作は1994年のもの。 初期のころから恩田氏のごっ…

孤児院出身の二人の異なる人生。 |『境遇』湊かなえ

ここ数カ月、野球の先発投手よろしく自分の読書にローテーションが出来つつあるのを感じます。 伊坂幸太郎、村上春樹、恩田陸、湊かなえ、西加奈子、の諸氏。このあたりがローテーションの柱。次の候補として呼び名が上がるのが塩野七生、中村文則、白石一文…

さっぱり平明、読みやすくて面白い! |『むかしのはなし』三浦しをん

皆さん、こんにちは。 日本は暑いようですが、皆さんお変わりありませんでしょうか。 暑いというと、熱い甲子園予選。とうとう始まりましたね。 便利な世の中になったもので、今や予選からネットで中継で(しかもタダで)見られる時代となりました。 昨年最…

実験的作風の短編が多いも、中村氏のエロ・ノワール?が光る |『A』中村文則

皆さん、こんにちは。 ブログを書く方にとってしばしあると思われること。 「書くのが面倒くさい」 いま、それです。 私のブログはそもそも書籍の感想を綴るもの。ベクトルは外に向いているようでむしろ自己に向いているのに、それでも心が、ああメンドクサ…

西さんの、ことこと、もぐもぐなエッセイ |『ごはんぐるり』西加奈子

皆さん、こんにちは。 ガールズトークで、ああいう男と付き合えるかどうかって話、することあると思います。 身長低いのはダメ、とか、鼻毛が伸びてるのだけはもう許せないとか。 当然ながら脳みその6割くらい(それ以上?)を占めると思われる若き男子たち…

女で失敗したサムソン、異邦人も義母に尽くしたルツ | 旧約聖書 士師記/ルツ記 『聖書 新共同訳』

皆さん、こんにちは。 6月の半ばに居所に戻ってくると、仕事場の同僚は大体私の病欠の旨を知っている様子でした。 一部Confidentialなことでもあり、一般に個人的な事柄、ましては病気などは聞きづらい風潮もありますが、聞きたそうな顔をしている人も沢山い…

イヤミスの源流は、自らを疑わない「主観と主観の殴り合い」!? |『ユートピア』湊かなえ

皆さん、こんにちは。 日本から居所に戻ってきて、はや二週間。 昨日、祖父母と同居する高校生の娘からLINEにて連絡。 「悲劇!今日、おじいちゃんが、おばあちゃんが作った昼ご飯が足らず、おばあちゃんが居ないすきに自分でレンジでチンして生肉を食べたそ…

自分の至らなさが身につまされる本 |『上司の壁』白戸三四郎

ここ一、二カ月、部下育成関連の本を読んでいます。 で、かなり食傷気味になりつつあります。というのも、「お前がまずしっかりせいや」と、上司の心構え・心持ち・態度・対応を諫める書籍にしか出会っていないからです。 改めて感じましたが、全部出来たら…

「僕」の妻「有紀子」はその後どうなるのか・・・ |『国境の南、太陽の西』村上春樹

皆さん、こんにちは。 昨年から伊坂幸太郎読み直しフェアを勝手に開催しておりました。で、昨年と今年で結構読んだんですね。中古で廉価で買えるものについては概ね読み、いくつか残ったものを惜しみながら指折り読んでいくという感じ。 今年はもう一つ、同…

内容は基本をしっかり押さえ、広角に将来を見渡す。 |『相続は怖い』天野隆

はじめに 名前がちょっと「釣り」っぽいですね。 このタイトルは、正確には「何も知らないと」「何も準備しないと」、という従属節がついて初めて意味が通るものかとは思います 内容について 章立てはシンプルで以下の通り。 序章:役所は何も言わずにあなた…

超能力夫婦の裏に潜む秘密の正体。絶妙のストーリーテリング。 |『エンド・ゲーム 常野物語』恩田陸

はじめに 常野物語の第三弾。タイトルを見ると、シリーズもこれで終わりか、と思わせますが、その真偽たるや如何に!? あらすじ で内容ですが、今回はどちらかというとモダンホラー的な風合い。 「私たち、誰かに狙われている?」「あいつらが出てきたら、…

イスラエルの民、約束の地へ |旧約聖書 ヨシュア記 『聖書 新共同訳』

皆さんこんにちは。 実はですが、今春から大学生の息子は、縁あってキリスト教系の高校に行っていました。授業でキリスト教概論というコマがあったからか、この前みたら彼の本棚に聖書が鎮座しておりました。勉強嫌いな彼は「聖書?いらない、ってか捨てるつ…

華のない大学生活に乾杯!失恋?そういうもんです! |『太陽の塔』森見登美彦

皆さん、こんにちは。 認知症がすすみ、食欲が半端ではなくなった父。起きている間、殆ど口を動かしているのではないかというくらい。 この数カ月、私と妻がいたので、子どもたちを合わせて6人分の食事と後片付けは別に何ともない話でした。 この先、料理下…

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