海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

☆☆☆

文体からにじむユーモアと鋭さ|『やがて哀しき外国語』村上春樹

長崎に旅行で来ています。残念ながら雨模様の天気なのですが、それでもやはり日本はいいですね。海外とは比べ物にならないサービスの良いLCC、田舎に行っても便利で正確な公共交通機関、芯から温まる温泉、そして何より多彩なローカルの食べ物! 来週も仕事…

長崎のカステラから垣間見るぶっとび父ちゃんの歴史|『かすてぃら』さだまさし

私事で恐縮ですが、来週長崎に家族で旅行に行こうと考えています。 一家の人柱を自認している私は、各種予約、旅程表作成も自分の仕事と理解しております。そして最後の仕事は、旅行先が舞台になっている小説をチョイスand読むということ。 うーむ。長崎が舞…

自分の「好き・得意」を中心に自己分析。ただ、社会の変化は速いぞ |『ライフピボット』黒田悠介

日本では今週に入りぐっと暖かくなってきましたね。近所の川べりの桜の数本は慌てて少し咲き始めました。 海外に居所をもってはや9年目ですが、ことしはそれ以来のお花見が出来そうです。 会社に縛られる時代の終焉。じゃあなにする? 起業や副業・複業。 こ…

世の価値観の変遷に思うアクティビストの役割|『動物の権利』編:ピーター・シンガー、訳:戸田清

この前、高2の息子がオンラインでクラスメートとディスカッションをしていました。お題は『動物園は廃止するべきか?』 そしてマイク越しにムスコが喋った言葉に耳を疑いました。 『いや、ピーター・シンガーの議論もさあ、slkdurfap〇▽&^%#@$E』 むむ…

面白い!私家版「世にも奇妙な物語」|『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ

最近、こっそりはまっている朝井リョウ氏の作品。 エッセイはかなり面白いと感じており、ノンフィクションはどうかと、先日「どうしても生きてる」を読んでみました。まあ、それは普通かなーという感じでした。 懲りずに読んだのがこちらの作品。読後に娘に…

内容に目新しさはないも、経験者ゆえの言葉の重みあり |『50代から実る人、枯れる人』松尾一也

みなさんね、まあーこんな本、手に取らないと思うんですよ。 50代?いやあ、おっさんだし。遠い将来のことだし。って、そう思うでしょ? あっという間にやってきまから!!! ・・・ここから先の将来の仕事・お金に不安なアラフィフの私。何とか先人の知恵を…

突き抜けて人の良い肉子ちゃんに思う|『漁港の肉子ちゃん』西加奈子

本作は私にとって再読でありました。 きっかけは近くの市民ホールでやっていた映画の再上映です(因みに700円!)。 映画があるのは知っていましたが、見たことはありませんでした。ならば見た後に再読しようと思い、手に取りました。 ひとこと そうですね。…

フリーランスさんの、ほのぼのエッセイ |『フリーランスの生活をぶっちゃけてみました。』大塚さやか

この手の本を手に取るときは、エッセイなのか、はたまたハウツー系なのか、ちょっと思案します。私が求めるのはハウツー系。会社に依存しない生き方が展開できないかと検討しているからです。 フリーランスのぶっちゃけ話 で、本作はどっちかというと、エッ…

短編でも、随所に光る谷崎的エートス|『美食倶楽部 谷崎潤一郎 大正作品集』谷崎潤一郎 編:種村季弘

本作も、我が母親のスーパー積ん読文庫処分品から救出された一作。 母親に聞いたところ、生協(食品とかの宅配の)に本のカタログがあり、そこで気になる本を買うそうな。 谷崎潤一郎のイメージというと、耽美、エログロナンセンスあたりが思い浮かびます。 …

コロナを経て現実味が増すノマド的生き方 |『ノマドライフ』本田直之

お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、最近、(今いるところとは違う)海外で、雇われないで生きていけないかと思案しています。 オンラインで仕事をするとか、はたまた地域密着とか、色々な方法や可能性を考えている最中です。数年がかりの検討にはなると…

コンパクトで理解しやすい脳梗塞入門書 |『詳しくわかる脳梗塞の治療と安心生活』監修:高木誠、四津良平

それは今年の一月二日の夕方でした。 家内の下半身のたるみが伝播して脳までたるんでボケられては困る、などと結構なディスりを吐きつつ家内をコンドのジムに連れていき、共にひとあせ流してジムから出ようとしていたところでした。 私を見る家内の顔がどん…

ロジカルシンキングで考える移住!? |『継続できる海外移住』五十嵐唯、宮下なみ子

移住って言葉は私にとってはかなり魅力的。 日本を離れて、誰も知らない国で暮らしてみたいなあって思います。というか、しちゃいましたが。ただもう9年も同じ土地に住むと少し飽きが来るのも確か。 気力があるうちにもう一か国行けるか?最近同じことを繰り…

読み聞かせに使いたい素敵な絵本 |『ラ・フォンテーヌ寓話』ラ・フォンテーヌ 絵:ブーテ・ド・モンヴェル 訳:大澤千加

うちの母ですが、積読がすごい。 一回買った本を読まずに積み、忘れてもう一度買いまた積む。それを同居するうちの息子(祖母と孫の関係)が指摘したりしなかったり。そんな母も八十の声を聞き、娘(私の姉)の助けを借りてもう読まないだろう本を根こそぎ整…

中小国家群の悲哀、違いを包含しASEANへ |『入門 東南アジア近現代史』岩崎育夫

昨年、現在居る国のいわゆる永住権を申請しました。移民局に何度か赴き、家内と一緒にインタビューを受け、さらには警察本部で現地語のインタビューも受けたのでした。英語ならまだしもローカル現地語はさらりとしか勉強しておらず、「妻を愛しています!」…

押し寄せる閉塞感。とにかく重い|『どうしても生きてる』朝井リョウ

朝井氏というと、どうしても若いなあというイメージがあります。 先般読んだエッセイ『時をかけるゆとり』も若気の至りを十全にエンジョイしている様子で、非常に瑞々しく感じました。 ならば小説はどうかと手に取った本作。前回感じた感想とは正反対の、ひ…

ジャングル版「夜のピクニック」+サバゲ-アクション?|『上と外』(上)(下) 恩田陸

気軽に手に取る本としては、ついつい選んでしまう恩田陸さんの本。『夜のピクニック』以降、どうもあの絶妙な青春描写が個人的にはまった模様であります。 今回は前回帰国した際にブックオフで仕入れておいた本作を新年一作目として読んでみた次第です。 あ…

文章は素敵、何となく面白い。でも、哲学的にはよくわからん|『この人を見よ』ニーチェ 訳:丘沢静也

ニーチェ。皆さん読んだことありますか? 実は私は初めてででありました。 何となく中二病、のイメージがあったんです。自意識やプライドが高く、劇的で劇画的。著作のなかの「神は死んだ」「ルサンチマン」などの言い回しは、哲学に関心のない方でも耳にし…

理想図は美しいも導入は相当厳しい |『キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード』ロバート・キャプラン、デビッド・P・ノートン 監訳:櫻井通晴

期末期初の悪夢 期末期初になると頭を悩ませることがあります。自分の評定についてであります。 人事課は”SMART(Specific/Measurable/Attainable/Related/Time-bound)に基づいてお願いします”、”会社の施策にあった目標を設定してください”とか言いたい放題…

二作目は肩透かしか|『獄中記(2)煉獄篇』ジェフリー・アーチャー 訳:田口俊樹

突然ですが、月曜日にコロナ陽性となり家庭内隔離をさせられています(こんなこと書くので、軽症ですが)。 先週ずーと調子が悪かった家内に代わり、掃除、洗濯、料理、子供の送り迎え、子供の教育、と仕事そっちのけで家を優先させ、「あー、たしかにワンオ…

英国ベストセラー作家の獄中記|『獄中記(1)地獄篇』ジェフリー・アーチャー 訳:田口俊樹

先日、氏の”Not A Penny More, Not A Penny Less”を読んだのですが、非常に面白く、感銘を受けました。そんな中、ブラック・フライデーセールなんでしょうか、Kindle版ですが氏の本がなんと55円で売っており、安値につられて購入、読んでみた次第です。 ちな…

文語調?がくせになる京都の学生譚|『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦

わたくし的には、今月は、「新たな作家さんを渉猟する月間」であります。 海外に居ると店頭でのジャケ買いも難しいですし、さりとてネットのAmazonでAIにリコメンドされる本を買うのもなんだか癪だし、新たな出会いを生み出すことは結構難しいかもしれません…

大人になってからの自発的な勉強こそが勉強 | 『勉強の価値』森博嗣

本作ではないのですが、先日、娘がやっていた国語の問題で森博嗣氏の論説が出てきました。娘の回答は散々でしたが、筆者の作品は読んだ事がなく、氏に興味を持ちました。その結果、氏の小説と本作を購入したものです。 lifewithbooks.hateblo.jp ということ…

真剣なアホが素敵すぎる|『時をかけるゆとり』朝井リョウ

アホが真剣過ぎて素敵 青春 ・・・この言葉を、すべての人が納得いくように形容したり換言してみることは、きっと難しいことでしょう。それはもちろん、その若き時代に経験した思い出深い事象が各人によって異なるからです。恋散った甘酸っぱい青春もあれば…

オルタナティブ進路で世間を生き抜く?でも決めるのは難しい | 『13歳の進路』村上龍

『13歳のハローワーク』という本とセットで買いました。“ハローワーク”は世の中にどんな仕事があるのかを紹介するいわば職業図鑑。職業が教科別に配置されており、教科についての興味から職業を引くという謂わば職業事典とでもいった風采でした。 こんな進路…

漢字とひらがなによる日本語が美しい|『蜘蛛の糸・地獄変』芥川龍之介

この前、海外にきて初めて本を売りました。今でいうところの海外版「メルカリ」みたいなサイトでのことです。今まで3回売れたのですが、ぜーんぶ現地の方が購入者。ちょっと驚きました。ひょっとしたら業者か?笑 で、せっかくだから何か出物はないか、安く…

李鴻章は河豚を食べなかった!もったいない! | 『歴史のかげに美食あり』黒岩比佐子

食べることが好きです。 食材が調理によって姿を変える――千切り、短冊、乱切り、千切る、そぎ切り、ぶつ切り、サイコロ、三枚おろし等々の下ごしらえ。そしてこれらを、焼く・炒める・揚げる・蒸す・煮る等の加熱を施す。あるいは生食も。たった一つの食材で…

くすっと笑える米国版爆笑小ネタ集 |『ANT FARM』SIMON RICH

お笑いやジョークというのは実は非常に高度で難しいものだと思います。あえて言葉を字義通りに表現せず同音意義をとってみたり、有名な諺やクオートに当て擦ってみたり。 かくいう我が愛妻も「日本のお笑いで笑えるようになってやっと日本語が上達したって感…

コンパニオン嬢が活躍!肩がこらない推理小説|『ウインクで乾杯』東野圭吾

こらえ性のない長男が唯一読書でとっかかりを見いだした東野圭吾先生。二年半ぶりに会う彼の本棚にたたずむ本作。「どうだった?」と聞くと「うーんいまいち、あんま覚えてない」とのこと。神通力もこれまでか、親として確認してみた次第です笑 裏表紙あらす…

ワークライフバランス先駆者の人生談。壮絶 | 『50歳からの生き方』 佐々木常夫

アラフィフの私。窓際であり昇進がなく、その上子供たちが高大へと進学する一番家計的に厳しい時。そんな折、何かの足しにはならないかと本作を手に取った次第です。ちなみに2年半ぶりに帰った実家で親父が初期の痴呆であることがわかり(私の勤務先を毎日聞…

自己省察力が光る幸せ追求ノンフィクション | 『THE HAPPINESS PROJECT』 GRETCHEN RUBIN

「幸せ」とは、なかなかにむつかしい。 特に日本人は幸福度ランキングが低いことで有名?です。他国や他人と比較すれば、色々な点で恵まれている。だけど幸せと感じない。。。 そんな「あるある」に正面から取り組んだのが本作。ちなみに筆者の義理の父は米…

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