海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年もセカンドライフ等について思索したく。

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圧倒的密着度で描く、戦争最後の日 |『日本のいちばん長い日』半藤一利

皆さんこんにちは。 そういえばこの前、勤める会社のアニュアルディナーというものに参加してきました。 一年間お疲れ様、という社員を労うようなディナーで、ラッキードロー(福引き)があったり、ナマ演奏があったりという、言わば宴会、ですね。 数年前は…

ピボットテーブルとエクセルマニュアル作業の力業に疲れたあなたに |『Excelパワーピボット 7つのステップでデータ集計・分析を「自動化」する本』鷹尾祥

エクセルユーザ、会社のEUC環境をグチる きっと多くの社会人の方が触ることが有るエクセル。まあ便利っちゃ便利です。履歴書に使えたり、貢献評価シートとして使ったり、まああの「枠」はいろいろ使い勝手がありますね ただ、何ていうんでしょうか。 こと数…

伊坂氏ならではの時間超越系連作、でもほっこり |『アイネクライネナハトムジーク』伊坂幸太郎

皆さん、こんにちは。 突然ですが、来年から少し楽器でも再開しようかなと考えています。 読書は好きなのですが、ゆくゆくは目も更に見えなくなると考えています。網膜剥離とかやったし、目はあまり良くありません。ひょっとしたら失明とかもあるかも? で、…

15歳の家出少年のフシギな自己陶冶小説bildungusroman |『海辺のカフカ』村上春樹

はじめに もう当たり前なのですが、いかにも村上氏らしい作品だったと思います。 洒脱さ、会話、音楽など、今度の<僕>はちょっと若め。でもぐんぐん読めちゃいます。 田村カフカ君ときた 先ずは主人公の田村カフカ君。このキャラが村上作品の伝統を受け継…

古代史、意外に面白いじゃん |『世界史(上)』ウィリアム・H・マクニール、訳:増田義郎、佐々木昭夫

皆さん、こんにちは。 軽い風邪をひきました。ということで一日お休み。 最近社内でもインフルが流行っており、体調が悪い人は無理を押して出社するほうがきっと迷惑だろうと考えました。 因みに当地ではSick Leaveという有休が、通常の有休とは別に15日ほど…

面白い!でも読後にしんみりと考えてしまう作品 |『フーガはユーガ』伊坂幸太郎

皆さん、こんにちは。 懸案の来月の引っ越しに先んじての室内塗装。これがやっとこさ終わりました。掃除を含めて計三日かかりました。もう、体がバキバキです。 老後、というか子どもたちが片付いたら、日本に帰る予定ではあります。が、住む家がないので地…

ユーモラスも「読ませる」ソマリア記。民族と国際社会 |『謎の独立国家ソマリランド』高野秀行

皆さん、こんにちは。 近頃感想を書くのが遅れています。 本は読むには読むのですが、形に残すのが面倒で。。。 ほぼ他人を意識せず、時に自分で見返しても、良く分からないこともあるレビューなのに。それでも面倒くさい。 以前、三行だけの書評ブログ、み…

起伏に富むストーリ展開。世界史との交差も | 『ねじまき鳥クロニクル』村上春樹

皆さんこんにちは。 あっという間に一年も残すところあと二月となりました。会社では、ついこの前上期(1H)の自己評価を終えたばかりですが、個人的に勝手にやっているYear Resolution(1月初めの12月終わり)はまだまだ積み残しがあります。 こちらもきちん…

数字とはいえ鵜呑みにできない |『データは騙る』ゲアリー・スミス、訳:川添節子

みなさん、こんにちは。 私事ですが、ちょっと最近マラソン、いいかも、と思っています。 といっても、フルとかではもちろんなく、ハーフでも長すぎ。ほんの10kmくらい。これを旅行がてら走る(といか歩くのもOK)ことを夫婦でやろうというアイディア。 マラ…

食べることへの愛をユーモアたっぷりに描く |『残るは食欲』阿川佐和子

世に食欲の秋と申します。 地球温暖化が叫ばれ、秋の訪れが後ズレにズレるなかで、秋の食欲への着火も遅くなるのでしょうか? アジアの端くれに住まう身には想像に任せる以外ありません。 さて、今回は食にまつわる阿川さんのエッセイを読みました。こちらの…

平明な英語でダイナミックなライバル劇を描く。ホテル王vs 銀行家の勝負やいかに |『KANE & ABEL』JEFFREY ARCHER

はじめに 英国の作家ジェフリー・アーチャー氏の作品。1940年生まれで若くして政治家になるが、投資詐欺にあい大金を失う。その経験をもとに作家デビューを果たす。議員活動中に偽証罪で投獄経験もあり。 本作は1981年の作品で、氏のキャリア第三作となる作…

戦後の昭和をリアルに表現した翻訳が影の主役か |『浮世の画家』カズオ・イシグロ、訳:飛田茂雄

はじめに 英国のカズオ・イシグロによる1986年の作品。なお彼は2017年にノーベル文学賞を受賞。 戦後間もない1948年から1950年の日本を舞台に、戦前・戦中にもてはやされた某画家の、戦後の葛藤と追想を綴る。 時代のせいか、個人のせいか 久し振りにカズオ…

形容できない物語?SF?心の話?生き方の話? | 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹

はじめに これまた25年以上ぶりの再読。奥付を見ると平成11年30刷とあります。あ、でも古本ですね。鉛筆で「2冊590円」と奥付上部にありました。まだまだ町の古本屋さんという存在がちらほらと見える時代でありました。 何が良かったのだろう いやあ、この作…

警察暴走のディストピア。洒脱さとツイストはデフォルト、におわせ結末は明るめ |『火星に住むつもりかい?』伊坂幸太郎

はじめに 伊坂氏による2015年の発表作品。 国家(平和警察)が市民を疑心暗鬼にさせ、火のないところに煙を立たせるかのような、ディストピア風テイストの小説。 洒脱な会話描写はいつも通り。いわゆる第二期のモヤモヤな進行ながら、最後はやや明るめな結末…

もっとも分かりやすい東氏およびポストモダン入門 |『郵便的不安たちβ』東浩紀

哲学を好きな自分が好き? 大学、大学院と哲学をやった割には哲学を知らない(というか分からなかった)私。いまだに淡い憧憬を持ち続けています。 他方で自分を疑うようにもなりました。 若い頃よく単館上映映画をよく見ていたのですが、自分が映画好きだっ…

ルッキズム、個性、孤独など。寓意に満ちた短編集 |『炎上する君』西加奈子

はじめに 西氏の2010年の作品。8編の短篇からなる作品。 なお、表題作「炎上する君」は映画化もされた模様。 youtu.be ひとこと これまで「ことば」の女王として私の中で(だけ?)際立っていた西氏。 しかし、本作を読み、かなりふかぁーく感じた次第です。…

けっこう上級者向け? でも光明が見えたかも |『VBA開発を超効率化するプログラミングテクニック』深見祐士 監修:大村あつし

はじめに 仕事でVBA、所謂マクロを使っている方は結構いらっしゃると思います。 私もその一人です。 私は幸いSEのバックグラウンドがあったためコーディングにはそこまで抵抗感がありませんでした。 ただ、次第にもたげてくるダルさ・・・。だっていつも似た…

珍妙?西遊記、エクソシスト、合唱団、証券誤発注、断片的印象が残るエンタメ作品 |『SOSの猿』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。 先週家族旅行でハノイ(ベトナム)に行ってきました。 私と家内は居所のアジアの端から。大学生と高校生の子供たちは日本から。つまり現地集合。 私と家内は20年ぶりのハノイでしたが、ハノイは大分変わったという印象。観光客だらけ。で…

インド奴隷的召使い→(殺人者)→起業家。何があった!? |『THE WHITE TIGER』ARAVIND ADIGA

はじめに みなさんブッカー賞という賞はご存じでしょうか? 私の生半可な理解では英国版の芥川賞ないし直木賞、あるいは足して二で割ったみたいな賞。英国でその年出版された長編小説に与えられる賞で、Longlisted, shortlistedと順を追って候補が絞られ、最…

タイトル通りの本です |『地域金融機関の経営・収益管理』編著:谷守正行

私の仕事 私の会社での仕事というと、所謂数字のとりまとめみたいな仕事。 財務会計のデータを勘定系システムから引っ張ってきて、諸々手補正(インセンティブデータやフロント部署の収益分け)などをして再まとめをする、みたいな感じ。 別に難しくもなくバ…

やっぱり面白い伊坂作品。珍しい中篇集も流石の展開に即没入 |『フィッシュストーリー』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。 個人的伊坂幸太郎フェアも終盤を迎えつつあります。何とこれで通算25作目の読了。その中でも未読であった本作。 フィッシュストーリー、と聞いて、サメ脳の私は当然、魚の話かと思いました。まあ結果違ったわけですが。 でも、期待通りの…

管理会計のカバレッジを詳述。計数担当におすすめ。 |『基本も実務もこれ一冊で! 管理会計本格入門』駒井伸俊

なかなか良かったと思います。 私は会社では計数担当と呼ばれていますが、自身ではいわゆる管理会計の担当と考えています。 大き目の金融機関の、とはいえ海外の辺境にいるので、基本的には東京の本部や地域本部(アジアのリージョナルヘッドはシンガポール…

暗い将来しか見えん | 『未来の年表』河合雅司

皆さん、こんにちは。 将来の見込み・予想。たまにしますね。まあ私の場合大概外れますが笑 思えば大学時代の1990年後半、私は日本に対して大幅にネガティブ予想をしていました。 二つ上の先輩が「俺も来春からは金融マンだ、はっはっは」と山一證券への内定…

ただただ、米国ダメ系の人生をアルコールとともに見つめる |『アメリカ死にかけ物語』リン・ディン、訳:小澤身和子

皆さん、こんにちは。 本書のタイトル、インパクトありますよね。死にかけって…。 ちなみに原題は Postcards from the End of America. 「End」の思い切りのよい意訳がすごい。 ちなみに、かなり面白かったです。おすすめ。 光輝き、闇も深い国、アメリカ 米…

相手の真意を知る、人間力爆上げの会話テク |『できる上司は会話が9割』林健太郎

皆さん、こんにちは。 引き続き部下をどうやって自律的で探求心あふれる私のような(!)ビジネスパーソンに仕立てるかのヒントを得るべく、本書を手に取りました。 ただ、最近、50を前にして1000問の自己分析を絶賛断行中で、自分の切れやすさ・感情的な性…

狂気の淵に光る理性の綱渡り。そのまま生きよ。 |『何もかもが憂鬱な夜に』中村文則

中村氏の作品はこれで四作目。約三カ月ぶりの再見となります。 氏の作品はノワールで陰鬱な作風が特徴ですが、これまで読んだ「掏摸」「王国」「去年の冬、きみと別れ」と比較しても本作「何もかもが憂鬱な夜に」は、まあ暗いこと。 ただ、いろんな意味で結…

もはやロビンフッド!?痛快な四人組に拍手 |『陽気なギャングは三つ数えろ』伊坂幸太郎

皆さん、こんにちは。 陽気なギャングシリーズ(っなんて言うのかどうか…)第三弾をようやく手にしました。 第二弾まで読み返したときは4月でまだ入院中でしたが、こうして家で読書ができること、誠に有難い限りです。 第二弾を読んでいるときに作品について…

猫のトムとサレ男公務員「僕」が国を救う!? |『夜の国のクーパー』伊坂幸太郎

皆さん、こんにちは。 突然ですが、本当にタイトルのつけ方が無粋でセンスがなくって申し訳ないです。 作品は実に面白かったのですが、吹けば飛ぶようなわずかなセンスでタイトルをつけて、こうなりました。 そろそろAIを使わなきゃですかね。 ただ私、つい…

戦前戦中の朝鮮半島での一日本人のオーラル・ヒストリー |『私が朝鮮半島でしたこと 1928年-1946年』松尾茂

皆さんこんにちは。 本作は以前からwish listに入っていたものです。 Amazonで中古のものを買ったら、カバー無しの本が送られてきました。 文句を言うのも面倒で、結局そのまま読みました。内容は良かったですけどね。 右翼的発言に辟易 巷やネットで嫌韓論…

吉野氏の半生で見る戦前・戦中のアメリカ・ドイツ・日本 |『私が最も尊敬する外交官』佐藤優

佐藤氏の作品は結構好きです。 その博学に裏打ちされた諜報インテリジェンスの話、外交の話等は、私の知らない映画のような世界。知らない世界だけど、厳然として存在する、熾烈な世界。 そんな佐藤氏にあって他の著作で言及があったのがこの吉野文六氏。 吉…

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