海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

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キリスト教宗教史をバックにスケールの大きいミステリを描く |『ダ・ヴィンチ・コード』ダン・ブラウン 訳:越前敏哉

過日、イタリアに行ってきました。イタリアにゆかりのある映画を物色していると、「インフェルノ」という作品に出合いました。そこそこ楽しみました。 でこの度日本に手術に帰ってきて、映画で見たことはあったダ・ヴィンチ・コードの本を偶然読んでみると、…

シニシズム、あるいは偽善者の欺瞞を描く |『死者の奢り・飼育』大江健三郎

はじめに・思い出 大江健三郎氏の初期の作品。表題作の「飼育」にて芥川賞を受賞。 本作も再読するのはかれこれ30年ぶりくらい。大江健三郎氏といえば私が大学に入った1994年にノーベル文学賞を受賞した方。 名前は知っていたものの読んだこともなく、同賞受…

小川洋子氏の幻想的世界 with 動物 |『いつも彼らはどこかに』小川洋子

はじめに 小川洋子さんによる動物がテーマの短編集。2013年発行ですからちょい前のものです。 タイトルと主人公について 作りとしては短編集となっています。相変わらず不思議な物語を綴ります。 タイトルに動物が絡みますが、物語は時として重層的に進みま…

余程のマニアではない限り、かなり役に立つ |『アウトルック最速仕事術』森新

はじめに 突然ですが、私はメールというものが嫌いです。 仕事の内容では、諸々の個人的合理化を積み重ね、やり方を変え、順序を入れ替え、マクロを作り、自分の仕事量は上司には教えられない位減りました。 ただ、メールだけはそうなりづらいのです。 役員…

「ギャング」のアクション、今度は誘拐!? |『陽気なギャングの日常と襲撃』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。 月曜日に手術をして頭蓋骨をこじ開けてバイパス手術をして、火曜日に覚醒しました。まだだるいのですが、ゆっくり元気になって、もう少し学費を稼ぐために頑張りたいと思います。 はじめに 伊坂氏の初期作品。「陽気なギャングが地球を回…

痛快コンゲーム的銀行強盗 |『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎

はじめに これまた十数年ぶりに読んだ本作。 初期伊坂作品らしい、エンタメ性・疾走感・そして洒脱なセリフとキャラ構成、と全てが光る作品でした。面白かった。 あらすじ 4人の出自や性別・年齢のばらばらな男女が銀行強盗を働くというもの。 夫々の特徴を…

強烈なシニシズムを示す作品群 |『パニック・裸の王様』開高健

はじめに 過去にも読みましたが、実に20-30年ぶりくらいの再読。 いやあ、なかなかしびれました。 本作、4編の短編から構成された作品群ですが、強烈に感じたのが、通底するシニシズムでありました。お金、権力、偽善への痛烈な批判のようなものを感じました…

外交に国運を賭するヴェネツィアと、翻弄される人民 |『緋色のヴェネツィア』塩野七生

皆さん、こんにちは。 私事ですが、毎年Year Resolutionを作成しています。簡単に言うとプライベートでのKPI。この中で数年前から旅行KPIというのを作っており(実際は奥様の満足度向上KPI、という名称なのですが)、なるべく家内を旅行に連れ出すという事を…

ノワール系エンタメ小説。最後のツイストにガクブル |『去年の冬、きみと別れ』中村文則

皆さん、こんにちは。 あっという間に2月が終わってしまいましたね。早いもので2/12が消化されてしまいました。 仕事でもプライベートでも「これやりたい」の年間計画を立てたものの、早速遅延気味です。 PDCA的にはCAをいかに上手にやるかが個人的な課題で…

読み口良すぎ。宝石をタイトルにした多様なストーリー。 |『サファイア』湊かなえ

皆さん、こんにちは。 高校卒業前の今、ムスコがこちらに友人3人を引き連れて帰ってきました。で、なんというか実に面子が多様。 うちの子が一応アジアハーフ。連れてきたのは、ドイツ在住15年の子(英語の方が得意)、カナダと日本のハーフ、そしてこの前初…

安定の「静謐」さで世界を優しく描く。 |『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

皆さん、こんにちは。 当地では旧正月を迎えました。 激しく鳴り響く爆竹を十数分と親族との過食?とを堪能しました笑 改めて思いますが、華僑の方々は本当に家族を大事にしますよね。集まりが大好き。そして話好き。私は広東語が喋れんので、連れていかれて…

社会の同調圧力と狂気の一個人との相克 |『コンビニ人間』村田紗耶香

滞在先のAirbnbの宿からアルノ川を望む。一泊一部屋一万一千円也。 皆さん、こんにちは。 フィレンツェで感じたのですが、こちらは「犬天国」であります。電車の中にも犬、お店の中にも犬、散歩のお供に犬。本当に多くの現地の方が犬を連れて歩いています(…

人間を通じて辿るローマ通史 |『教養としてのローマ史の読み方』本村凌二

皆さん、こんにちは。 数日前までローマにおりました。皇帝の像とか、ヴァチカン博物館に確かにたっくさんありました。んが、改めてローマ史は書籍で読むとなかなか難しい、と感じました。 かつてギボンの大著も、本村氏の別のものも読んだことがあります。…

村田さん、天才か!?すごいディストピア |『信仰』村田紗耶香

皆さん、こんにちは。 たまには気まぐれを起こすものだなという話を。 私はかなり頑固だと思います。決まった仕事を決まった計画で淡々とこなすことが好きです。 読書に関しても同様で、価値の定まったものに一定の時間を割き、じっくりと堪能し尽くしたい思…

世のプレイングマネージャー諸君、君たちは聖人君主たりうるか |『部下が勝手に活躍する魔法の質問』伊藤治雄

50間際の窓際として、今まで一人でやっていた仕事に、部下を付けられました。 でも、何だかうまくいきません。 アニメの世界だと無骨な職人は一見ぶっきらぼうも、大抵は根が優しいもの(無骨で恥ずかしがり屋でね)。でも私はダメでした。大声こそ出さない…

不条理の極北 |『日本軍兵士』吉田裕

皆さん、こんにちは。 私は、日本軍関連の書籍が存外に好きです。 別に、子供のように強いもの・大きいもの・早いものが好きというわけではありません。むしろ、何でここまでひどい状況になってしまったのかという組織論的な関心、あるいは、このような悲惨…

常識を覆す(非常識!?)な聖書解説 |『絵画で読む聖書』絵画で読む聖書

皆さん、こんにちは。 先日からやるやる言っていた今年の振り返りですが、お見せできそうにありません。このままいきますと、有限不実行という最もだらしのない結末に。我ながら忸怩たる思いであります。 振り返るには振り返りました。ただ、もう量が膨大に…

喪失感・諦観を抱え、前へすすんでいく |『羊をめぐる冒険』村上春樹

皆さん、年末いかがお過ごしでしょうか。 今回たまたま休暇の消化もあり年末居所でゆっくりしております。 準備のない休暇ということもあり本当に家に居るだけなのですが、思索の時間というか今年一年をじっくり振り返ることが出来て、実にいいじゃないか、…

メモによるアウトプット(+思考の深化)のススメ |『メモの魔力』前田裕二

皆さんこんにちは。 年末の雰囲気になってきましたね。 海外に居て日本のテレビを見るというと、うちではTverを使用しております。リアルタイムではありませんが。で、Tverにも広告があるのですが、年末仕様のものが増えてきたという話。 さるビール会社の広…

普及している食材が持つ数奇な歴史をつまびらかに。 |『世界史を大きく動かした植物』稲垣栄洋

皆さんこんにちは。居所に戻りました。 50手前にして部下なるものを持ちました。 ところがこれがまた、思うように動いてもらえません。ほぼ未経験ながら人柄を見込んで知り合いを採用してもらったのですが・・・。 一番困るのが、「AとBの数字が合いません」…

世の中はディストピアに向かいつつある!? |『無理ゲー社会』橘玲

夜行列車にはなんだか修学旅行的な雰囲気がありました。車掌さんによるベッドメーク中。 皆さんこんにちは。 バンコクのBang Sue中央駅から夜行列車で国境のPadang Besarへ、そして国境を越えた後、マレーシアのButterworthという街へ来ました。ここまでで約…

自分は何をしたいのか。思春期の鬱屈を瑞々しく掬う佳作 |『14歳』千原ジュニア

バンコクのジャムにスタックして家内の機嫌が悪くなるさかなのバス車中 皆さんこんにちは。 東南アジアではジャカルタの渋滞がやばい、という話を聞いたことがあります。同様にバンコクの渋滞も相当だ、という話も耳にしました。 私、無駄に旅情を感じたがる…

ハードコアエロ、転じて公権力の恐怖、そして思うのは近しい人をどう理解するかという事 |『日本のセックス』樋口毅宏

こんにちは。いやあ、あっという間に今年も終わりですね。 ここでは殆ど読書にまつわることしか書かないのですが、年末は少し趣向を変えようかな、と。読書をして血肉となった知識から立てたYear Resolutionですが、その結果について記事を書きたいと思いま…

旧約聖書に歴史的考証を加えた良書 |『聖書時代史 旧約篇』山我哲雄

ガザ地域のハマスとイスラエルの衝突・内戦、誠に痛ましい限りです。 私の今年のテーマの一つはキリスト教の勉強でしたが(過去形!?)、その先には、いつかイスラエル近辺を聖書を片手に歩いてみたいという仄かな夢がありました。そんな矢先の紛争ぼっ発で…

京都と失恋と仲間+伝奇。色褪せない青春の爽やかさ。 |『鴨川ホルモー』万城目学

最近、死ぬことを意識してかしてないのか、ブログの記述に『昔は』『学生時代は』などの表現がおおいな、と感じます(調べていないけど)。さらには学生モノ・青春モノをふと読んでしまっています。 したらほら、今度は万城目ちゃん読んじゃった。この前は森…

奇天烈で面白いキャラと展開。なのに最後にほろっと来る。友っていいなあ |『砂漠』伊坂幸太郎

大学時代の友人とのバカ騒ぎっていうのは、多くの方の記憶に残っていると思います。 本作『砂漠』は、そういういつもつるんでいた仲間のことが脳裏に浮かぶこと間違いなしの名作であります。 僕(北村)、南、鳥井、西嶋、東堂、の五人の個性ある仲間たちの…

企業スポーツの終焉とビジネス環境の変化を描く |『ルーズヴェルト・ゲーム』池井戸潤

スポーツが好きです。 何っうか、頑張っている姿が好きなんです。うまい下手関係なく一生懸命さが素敵だなあ、と感じます。 才能に完膚なきまでに打ちのめされることもある。相手に追いつくために練習し、打ち勝つための戦略やデータ収集を行い、うまくいく…

天才打者の短い一生を寓話的に描く |『あるキング』伊坂幸太郎

50も近く、病気もあるので、徐々にですが身辺整理を心がけています。 最近進めているのは銀行口座でしょうか。かつては6つも7つもありました。80を超えた母親がかつて勝手に父親名義で作った口座を今処分できずにいる(父親は半ボケで家から絶対に出ない)の…

美しく不穏な流れの中に、多様な解釈を包含する作品 |『遠い山なみの光』カズオ・イシグロ、訳:小野寺健

長男の学園祭へちょっとだけ行ってきました。 そして顔見知りの部活のお母さまたちへ挨拶。一学年で9人も集まらない野球部で、うちを含め同学年は僅か3人。他の2名のお母さまにお会いできました。お話するのはもっぱら子どもたちの進学です。これからどうす…

自動化する「組織」に対し、個はどのように反応・反抗するのか |『モダンタイムス』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。 急に秋らしくなりましたね。部活で出ていた娘が、LINEで、「今日ご飯何?」「できれば鍋がいいんだけど」と送ってきました。それほど。 日本の秋は本当に美味い。かつて女子の食べ物と考えていた焼き芋ですが、今期より私も参戦。シルク…

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