海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

金融・経済

金融機関収益管理とバーゼルIIIリスク指標を総合的に勘案する |『金融機関のROE戦略』金子康則・平田光義

皆さんこんにちは。 年末になると当地ではお休みを取る人が増えます。いわゆる有給消化です。 日本にいたとき、確か有給持越しは40日くらいできた記憶がありますが、ほとんど有給など使えず、毎年付与される有給はどぶに捨てるがごとく期限切れとなっていま…

マクロ経済学と歴史文化の交差点 |『波乱の時代(下)』アラン・グリーンスパン 訳:山岡洋一、高遠裕子

最近気づいたこと。 いつも本文の内容とは全く異なる「まくら」を書いてから感想を書くのですが、この「まくら」の部分が他のポストと関連していると思われることがあるようです。ウーム。 前回高校野球の本を読んだのですが、関連したポストとしてサミュエ…

セントラルバンカー回顧録、現代史的にも面白い |『波乱の時代(上)』アラン・グリーンスパン 訳:山岡洋一、高遠裕子

金融業界で業務に携わっているので、その業界のかたの回顧録は役に立とうと考え、ずっと積読しておりました。 実は一度トライはしたのですが、マジで長い!そのため一か月かけても上巻の途中までしか行かず、忙しくなったりなんだリで挫折。今回は気を取り直…

人気アナリストによるグローバル規制の解説書 |『バーゼルIIIは日本の金融機関をどう変えるか』藤田勉、野崎浩成

最近仕事の本をあまり読んでいませんでした。 ということで業務理解・復習を兼ねて再読しました。すこし古めですが。 ちなみにローマ数字って皆さんどのようにタイプされますか?日本語の全角だと文字化けしそうなので私はアルファベットでタイプします。I(…

意思決定論を超えてもはや人間論に |『ファスト&スロー』(下)ダニエル・カーネマン、訳:村井章子

昨年末から読んでいる本シリーズの下巻です。 上巻では所謂直観や素早い判断を得意とするシステム1(早い思考)と、熟慮担当のシステム2(遅い思考)についてフォーカスが当たっておりました。 下巻では上記のシステム1とシステム2が混在するいわゆる『ヒュ…

二つの思考が意思決定をつかさどる!?因みに翻訳が素晴らしい! |『ファスト&スロー』ダニエル・カーネマン、訳:村井章子

人間は思った以上に合理的ではないという言説は最近つとに聞くようになった気がします。その言説を学問として裏付ける行動経済学は、人間の非合理がシステマティックに、そしてロジカルに働く様を明示していたりします。 私もそんな人間の非合理さに深い興味…

なかなか良い。管理会計についても触れる会計入門 |『この一冊ですべてわかる 会計の基本』岩谷誠治

今年の8月に英国の某会計資格の試験を受けました。 3時間ノンストップの記述式(もちろん英語です・・・)という純ジャパには結構厳しい試験なのですが、150点満点中80点が合格点ボーダーであるところ、78点で不合格・・・泣 10月の末に発表がありました。 …

興味深いマイクロファイナンス、日本での展開は未知数 |『構想 グラミン日本』菅正広

先日、子供つながりで友人となったオヤジたちとオンライン飲みをしていて話題になったのが55歳役職定年や早期退職。会社を辞めるかどうするか、第二の人生どうするか、等々。私の会社にはそうした制度はありませんが(そもそも役職についていないし。。。)…

投資銀行のキラキラした一ページを描写。最後は勧善懲悪的か | 『トップ・レフト ウォール街の鷲を撃て』黒木亮

今期より月一回自分に課している自主出社?を先週して参りまして、休憩室にある本棚に置いてあった本作を持ってきて読んでみたものです。 二十年前以上に発表された本作。日系銀行から米系外資系投資銀行に移籍したやり手のインベストバンカーと、その同期で…

証券アナリストの何たるかを教える本 |『証券アナリストのための企業分析』著:徳増倎洪、阿部大輔、力丸洋

もうかれこれ20年ほど前になりますが証券システムのSEをやっていた時に証券アナリストの資格試験の勉強を始めました。その際の標準テキストであったものを出来心で再読したものです。 内容は、証券アナリストとしての業務内容・具体的な分析事例などを概観す…

収益管理までもを展望するリスクマネジメント |『金融工学とリスクマネジメント』著:吉藤茂

何のかのと忙しくしているうちに、読了してから大分時間がたってしまいました。おぼろげながらの記憶を頼りに記録を残しておこうと思います。 リスク。奥深い世界です。直訳すれば危険。単なる危ないこと?そんなことはありません。 リスクがないとリターン…

20世紀米国で造られた金融業界の「常識」の数々 ― 『アメリカ金融革命の群像』著:ジョセフ・ノセラ、訳:野村総合研究所

50近くにもなって語彙の少なさに我ながら呆れてしまいますが、これ、すごい本だと思います。お金、証券、金利、等々に興味がある人は読んで損はないと思います。特にFP業務とかに興味ある人は是非お目通し頂きたい作品です。金融商品・サービスのみならず、…

英字で金融情報を読みたい人には激推し ― 『金融英語入門』著:柴田真一

翻訳ものを読んでいて、原文を読んでいなくても「こなれているなあ」と思ったことはありませんか。 そういう意味で、本作は、金融英語についての「こなれた」感が強くにじみ出ている英語本だと思います。 内容は全4編で金融の内容について章だてが分かれてい…

デリバティブの仕訳の本。以上。 ― 『そのままわかるデリバティブ取引の会計・税務』編:みずほ総合研究所、プライスウォーターハウスクーパース税理士法人中央青山

新年になり、何故かちょっと忙しく本が読めていません。ということで本年一冊目は仕事の本となりました。 これまでデリバティブの本を幾つか読んできました。その多くが入門書でしたが、本書はその中でも特に仕訳に特化していると思います。ですから、デリバ…

株屋が業務説明を英語でするときには重宝しそう ― 『英和和英デリバティブ証券化用語辞典』著:可児滋

基礎的で実直な辞書・辞典だと思います。 デリバティブってホントによく分からなくて、私もいろいろと本を読んできましたが、本書は非常に基礎的な部類に属すると思います。 デリバティブというより、株式市場や先物市場の用語、テクニカル分析の用語なども…

タイトルまんまですが、基礎的銀行経理の本。 ― 『Q&A 業種別会計実務9 銀行』著:トーマツ 金融インダストリーグループ

本棚整理と復習を兼ねて再読。本サイトを見てくださっている奇特な方には申し訳ないのですが本ポストは普通に読み飛ばしてください。。。 実務書であり、題名がこれ以上内容を表すこともないと思います。そのまんま。 当然のことながら経理財務の方向けの本…

ストレステストの根本思想は経営そのもの ― 『これからのストレステスト』編:大山剛

そんなの想定して意味あるのか?という想定。 10mを越す津波がやってくる。原子炉がメルトダウンする。近所の都市銀行が破綻する。 起こる前はあり得ないと考えていたことが起こる。これが現実です。 その一見起こり得ないこと、「例外的だが起こりうること…

市場を出し抜こうとすることそのものが敗者のゲーム。市場平均(インデックス投資)で十分 ― 『敗者のゲーム』著:チャールズ・エリス 訳:鹿毛雄二

皆さん投資してますか? 個別株をマーケットで売買したり、持株会で自社株を月々購入したり、あるいは毎月分配型の投資信託とかを買ったりしていますか。 若い頃は私もしました。個別株、外国株、投信と色々やりました。幸いタイミングが良く100万ちょっとく…

会計職には基礎固め的、関連職には入門書か ― 『金融機関のための金融商品会計ハンドブック』著:岡本修

今年の6月くらいから自分の仕事や業界をもう一度勉強し直そうと考え、本棚に眠っていた本を事業仕分けがてら読んでおります。本作はその過程で手に取ったものです。 ハッキリ言って金融関連ないし経理・会計職関連の方以外には全く面白くないと思います。だ…

人間の認知・理性の「くせ」が分かる本 ― 『予想どおりに不合理』著:ダン・アリエリー 訳:熊谷淳子

先日著者の『ずる』という作品を読みました。人間が実に巧妙に自らを正当化してずるをする様子が描かれており面白く読みました。 lifewithbooks.hateblo.jp 今回読んだ作品は上記『ずる』と一緒に買っておいた作品。『ずる』よりもちょっと分厚めだったので…

人は多様にずるをする!ずるの正当化がすごい!―『ずる 嘘とごまかしの行動経済学』著:ダン・アリエリー 訳:櫻井祐子

私の個人的なテーマとして人間とは何か、という疑問があります。 生物学的な仕組みも、感情の動きも、精神と肉体の繋がりもすべて興味があります。その関心は、学部生の卒論時から細々とですが途切れることなく続いています。 その点、本作も人間の癖や性向…

机のわきに置いておきたいデリバ辞書―『デリバティブキーワード300』著:住友信託銀行マーケット資金事業部門

この使い古された本は、私のメンターが日本へ本帰国になった際に置いていったものです。「じゃ、これ、どうぞ」 こういう時は、これくらい分かっておいてくださいという意味です。 ロックダウンが続き、通勤が不要になってから大分経ちますが、ふと「俺最近…

金融専門家をほぼ100%否定する投資入門―『臆病者のための株入門』著:橘玲

お金についての不安。 シングルであろうが、世帯持ちであろうが、若者であろうが、老人であろうが、この問題はついて回る。 ましてはこんな世の中。 政府は滅茶苦茶な政策ばかり、年金不安も拭えない、金融機関はお金に働いてもらいましょうとあおってくる、…

金融犯罪の裏側と送金の仕組みを教えてくれる良書―『マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで』著:橘玲

マネーロンダリング(以下、マネロン)というとちょっとおどろどろしい雰囲気があります。暴力団やテロ組織の資金洗浄とか、新聞やニュースでもよく目にする言葉です。 金融機関で働いている人でも、自信をもって説明できる人は結構まれだと思います。きっと…

舌鋒鋭い政府・銀行批判―『金融立国試論』著:櫻川昌哉

本棚整理を兼ねて、以前に買った本を再読。 なぜとっておいたのか覚えていませんでしたが、再読してやはり光るところがある(上からでごめんなさい)なあと感じました。 本書ではバブル崩壊後から21世紀初頭までの10年強の銀行・金融周りを概観しての筆者の…

偏見から逃れ、お金の自己決定を行うための一冊―『知的幸福の技術 自由な人生のための40の物語』著:橘玲

お金の仕組みに異様に詳しい橘玲氏によるお金のショートエッセイ集。元々は日本経済新聞日曜日版の週刊エッセーをまとめたもの。 橘氏と言えば金の話です かつて証券会社で働いていた時にFPというお金にまつわる資格を取りました。金融はもちろん、保険、税…

官僚はこう考える。例えば金融行政なら。―『金融システムを考える ひとつの行政現場から』著:大森泰人

これまで幸か不幸か知り合いに官僚になった人がいなかった。唯一就活時に知り合った東大君とは、ともにアセットマネジメント会社の試験を受けた。私は最終面接で役員に絡まれ落ちた。リクルートスーツにリュックにスニーカで来ていた彼は、面接の感触など一…

銀行今昔物語を有意義に読むには?―『巨大銀行の構造』著:津田和夫

今は昔の30年前の銀行業界。そんな業界本を読むことに果たして意味があるのか。 2020年の現在からすると本作はおよそ30年前の作品。実際の内容は出版よりも過去の話であろうから、内容はおおよそ1980年代程度、よくて1990年初頭ということになる。当然ながら…

新しい友人が出来ました。賢そうなんですが、まだよく分かりません(笑)―『ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質』著:ナシーム・ニコラス・タレブ 訳:望月衛

著者について レバノン系アメリカ人。ニューヨーク大学教授。元トレーダーでもあり、現在Universa Investmentsで数理顧問を務める。ペンシルバニア大ウォートンスクールでMBA、パリ大学でPhDも取得。因みに、祖父(Fouad Nicolas Ghosn)・曾祖父(Nicolas Ghos…

報道の存在意義と倫理を問いただす。皆さん新聞がなくなっていいですか―『新聞が消える ジャーナリズムは生き残れるのか』著:アレックス・S・ジョーンズ 訳:古賀林 幸

(ごめんなさい。大分長くなってしまいました。) すでに大分言い古されていますが、若者の新聞離れ(活字離れ?)が叫ばれて久しい。 若くはないのですが、私も新聞をとるのをやめてしまい、ニュースはたまのYahoo!ニュースのみです。 しかし読まないからと…

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