海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年は世界史と英語を勉強します!

会計職には基礎固め的、関連職には入門書か ― 『金融機関のための金融商品会計ハンドブック』著:岡本修

今年の6月くらいから自分の仕事や業界をもう一度勉強し直そうと考え、本棚に眠っていた本を事業仕分けがてら読んでおります。本作はその過程で手に取ったものです。

ハッキリ言って金融関連ないし経理・会計職関連の方以外には全く面白くないと思います。だって読んでる私だって面白いと思いませんもん。50歳近いので今更ですが、仕事選び間違えたかなー??


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本作の内容ですが、本の題名の通りです。

金融機関にお勤めの方、ないしは経理・会計職の方以外には用なしの本であると思います。内容もタイトルすばりです。金融商品の会計方法の解説本です。

 

・・・とこれで終わってしまうと身も蓋もありませんので特徴をかいつまんで幾つか。

 

一番の特徴はデリバティブに関する会計に結構なページが割かれている部分だと思います。ヘッジとは何か、ヘッジ会計とは何か、包括ヘッジとは、キャッシュフローヘッジとフェアヴァリューヘッジなど、デリバティブに関する会計規則については一通り網羅していると思います(偉そうな書き方ですが私も学ぶ身です)。ですので、このあたりはぼんやり分かるけど総まとめして勉強したい人には適しているかもしれません。

 

次に、金融商品についての目配せが広いな、と感じました。

有価証券の評価方法等は当然として、ローンパーティシペーションの仕訳とか、CDSのヘッジの有効性についてとか、保険会社におけるデュレーションマッチングについてとか。私もすべてがすんなり理解できたわけではありませんが、扱ったことのない商品の会計上の取り扱いはへえーと関心するばかり。

 

おまけ程度ですがバーゼル3やIFRSへの言及もあり、まあ業界全体の会計上の論点等を概観できる点では評価できます。

 

おわりに

私は会計職でも経理職でもないのですが、実際の専門職の方にとってはより深い専門知が必要になるのではないかと思います。その意味では会計・経理職の方々にとっては入門書、会計・経理職ではないけど周辺業務として携わる方には概観を得るために役立つ本ではないでしょうか。分量も300ページ弱、論点も絞られており簡潔、好感が持てた本です。

 

評価 ☆☆☆

2021/09/25

ロンドン近郊を舞台にした連続作人事件。面白い! ― 『ABC MURDERS』著:AGATHA CRISTIE

先月読んだ『MURDER ON THE ORIENT EXPRESS』が存外に面白く、かつ直近で読んでいた英語の本が非常にストレスフルであったので、気分転換にこちらの本を読んでみた次第です。

 

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(実は5冊セットのボックスを購入しました。そのうちの一冊。相変わらず良く行く近所の新古本の店で2,500円ほどで購入したものです。デザインはすべてIndia-Subcontinent版; インド亜大陸特別版とのこと)

 

・・・

 

これまでアガサの作品は『オリエント急行~』しか読んだことがなく、本作で二作目。前回同様面白かったです。

 

さてこの『ABC~』ですが、ポワロ宛てに送られてきた殺人予告と共に、イニシャルがそれぞれA, B, Cの人が順々に殺されていくというものです。一旦容疑者が捕まりますが、実は真犯人がいる、という建付け。

 

相変わらず章立てが短く、非常に読みやすかった。

最終的に4人が殺されますが、登場人物は殺された4人と、ポアロとHastings(刑事仲間?)、英国スコットランドヤード(ロンドン市警)、そして殺された方々の遺族です。登場人物が限定的なので、演劇のような舞台で見ても面白いだろうと感じました。ほら、ロンドンは劇場が都心に沢山あると聞きましたし。

 

もうすこし、どうでもいいことを笑。

4件の殺人はすべて違う所、Andover, Bexhill,Churston ,Doncasterという所が現場になります。もしロンドンに行く機会があればこういう所を巡るような旅もしたいなあと、思いました、ってアガサマニアってわけではないですがね。

因みに4件目の殺人が行われるDoncasterってところでSt. Leger(セント・レジャー)という由緒ある競馬レースが行われるそうです。競馬にはあまり興味がないのですが、本場に行ってしたり顔で馬券でも買ってみたいです笑 そういえばこのDoncasterでの殺人予告がくしくも9月11日。本書を読んでいる最中にも米国同時多発テロ20周年を迎えました。

 

英語

英語ですが、『オリエント~』同様、文法は難しくないです。私は一々辞書を引いて片っ端から分からない単語を調べていきましたが、そんなことしなくても十分文意は取れるし面白さを楽しめると思います。面白い!次から使ってみたい!と思った単語は、pigeon-hole(v)思いこむ、決めつける、cream of - 最上のxx,、accomplice(n)共犯者、等々。

 

おわりに

本作、中学生の娘が先に読了していました。読む前に感想を聞くと『つまらない』と。終わり方、真犯人の殺人の理由がくだらない、とか何とか。

犯人の『動機』がテーマの一つの本作ですが、たしかに私もその動機に陳腐さを感じました。しかし、読中のテンポの良さ、真犯人の登場など読み物としては流石と思わせる作品だと思います。英語学習で、子供向けは物足りないけど大人向けの本は難しそう、という方にも最適かと思います。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/09/16

 

 

The ABC Murders (Poirot)

The ABC Murders (Poirot)

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作品の既読・未読にかかわらず誰でも読める優しい作りの書評(ネタバレ回避!)。私は読後に読ませて頂きました。

nmukkun.hatenablog.com

人間の認知・理性の「くせ」が分かる本 ― 『予想どおりに不合理』著:ダン・アリエリー 訳:熊谷淳子

先日著者の『ずる』という作品を読みました。人間が実に巧妙に自らを正当化してずるをする様子が描かれており面白く読みました。

 

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今回読んだ作品は上記『ずる』と一緒に買っておいた作品。『ずる』よりもちょっと分厚めだったのですが、はっきりいってこっちの方が面白かった!!

 


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非常に面白く読めました。彼の作品は二作目ですが、どちらも人間の非合理を明らかにしている点が非常に興味深かったと思います。

 

全部で15章もありなかなかのボリュームなのですが、私は特に『相対性の真相』(1章)、『扉をあけておく』(9章)、『価格の力』(11章)が気に入りました。

 

第1章は人間の認知力と比較についての話です。

冒頭で雑誌「エコノミスト」の勧誘画面の例を出しています。この画面は紙版($59)とWeb版($125)の二択の申し込み画面なのですが、これだと人は迷ってしまうそうです。そこで紙版+Web版($125)の選択肢をつけたすことでWeb版($125)との比較ができるようになり、紙版+Web版($125)へ購入誘導ができるというもの。本来は紙だけで十分である人も、ふらっと見ると紙版+Web版($125)へ誘導されてしまいます。同様に、コンパに行くときに自分より容姿の劣る仲間を連れて行き、自分を選んでもらうという姑息な話もありました。

人間は絶対的な基準を持ちづらく、比較可能な対象を発見してしまうとそこで優劣を選んでしまうようです。

 

第9章は将来の選択肢(オプション)の話。

一定制限時間内に3つの扉をクリックし、より多くの得点を稼ぐ実験を行う。ここでどの扉に高い得点が得られるかは分からない。そして12クリックするうちに一度でも扉をクリックしないとその扉は消えてしまう。ここで多くの学生は「高得点の扉かもしれない」という可能性を維持するために右に左にクリックし、結果としては一つの扉をクリックし続けるよりも得点が低くなったという。

これは「あるかもしれない可能性」を維持するために時間を浪費することを暗示しています。私のように出世しないとわかっていれば社内の付き合いなどは無視するのも手ですが、それでも一縷の望みをかける人は無駄?な付き合いや政治に時間を使うことがあります。子どもの可能性を考え多くの習い事をさせ、大切なふれあいの時間を無駄にすることにも当てはまります。

人間の人生は選択の連続ではありますが、オプションを維持するために時間を使い、選択と集中どころか大切な時間を失ってしまう危険性が指摘されています。

 

第11章は人の信念の力の話。

とある鎮痛剤のプラセボの実験。先ずショックを与える。次に鎮痛剤を与えた後にショックを与える。大多数が鎮痛剤の効果を感じる(ちなみにこの薬はただのビタミンC)。そして今度は通常価格(1錠$2.5)から$0.1へと値下げしている旨を伝えたのちに投薬し、ショックを与えると、効果を感じる人の割合が大幅に減ったという。

つまり、そもそもの効果も、またその後の値引き後の効果の減退もすべて人間の思い込み・信念の力がもたらしたことになる。

これ以外にもプラセボの手術で効果が上がった症例の話が複数例示されていました。つまり、実際の効果云々はさて置き、どれだけ患者が医術ないし医師を信じられるかに効果がかかっていることが暗示されます。逆に言えば効果のある治療でも、医師に患者を信じさせるだけの人間力がないと全く効果を持ちえないともいえるかもしれません。

 

このような発見は、当然のことながら悪用ができる一方、これを知ることで人がより良い選択や行為を取ることができるというのが筆者の主張です。

 

おわりに

人間の認知力・感じ方の「くせ」が分かる非常に面白い本であったと思います。

一方一抹の不安を感じるのは、めざといマーケターたちはこうした研究を利用し、よりよく秘密裏にモノの購買を促そうとする、と想像できることです。

6章の性的興奮についての考察で、穏健かつリベラルな最高学府のナイスガイ達も性的興奮を経ると高確率で暴力的な想念にかられてしまうことからも、いかに人間の理性が脆く崩れ去ることが分かります。つまり、「私は大丈夫」ということはないのです。

 

そうしたことを考えると、寧ろ読後は重たい感覚を覚えました。

 

人間心理、マーケティング等に興味がある人にはおすすめできる作品です。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/09/12

暴君をいただいた家族の哀しい結末 ・・・- 『血と骨』著:梁石日

昭和を駆け抜けた韓国人の、その暴力と性と身勝手さが突き抜けており、ドライブ感に圧倒されました。ただ、読後にはどんよりと胸の底に苦しいものが残る、イヤミス的な(ミステリではないけど)感覚を憶えました。

 


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本作は筆者である梁石日氏が父親をモデルに執筆したもので第11回山本周五郎賞受賞作品。

独善、放蕩、意固地、暴力等、およそ家族を持つのにふさわしくない性格の主人公金俊平が正妻と妾と多くの子供達を成して、また事業でも成功するも、晩年は北朝鮮へ帰国し死去するまでの物語。

 

正妻の英姫、どうして逃げなかったのか

もっとも印象的なのは、家族(金俊平?)という呪縛のような逃れられない繋がり。

暴力的な夫を持った妻の英姫の逃げ場のない悲しみ。暴力を振るわれ、妾を作られ、妾の子どもを見せつけられ、夫に金策に走らされ、娘も自殺に追い込まれる。そして病気になり死んでいく。家族すら信じない夫は事業に成功するも家族を養う金すら出さなかった。

 

逃げ出す機会はあったかもしれない。でもそんな精神的余裕もないほどに忙しかったのか。あるいは人生をあきらめてしまっていたのか。読むほどに悲しくなる結末に、彼女がどのような思いで死んでいったのか気になります。

戦前・戦中・戦後の動乱を通じて、常に厳しい立場に追いやられた韓国人・朝鮮人の描写にも胸が詰まります。

 

在日韓国人モチーフの作品の中でも突き抜けている!?

また本作、ほかの韓国人を描く作品と比べても毛色がだいぶ違う気がします。

日本を舞台に韓国人を描く映画は割と多いと思いますが、主流は昭和のノスタルジーと共に家族の温かみや繋がりを描くことが多いのではないでしょうか。近年の作品を例示すれば、日本人青年と在日韓国人女性との恋愛を描いた『パッチギ』、下町の貧しくも愛すべき家族を描いた『焼肉ドラゴン』が思い浮かびます。しかし本作は、これらとは一線を画し、明るくない。

youtu.be

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おわりに

かつて私は、家族を疎み、一人を好んでいました。良き妻を得、ようやく家族を大事に出来るようになりました。そして今は『最後に頼れるのは家族』などと嘯く私を、かつての私を知る人が見れば卒倒するかもしれません。

 

一方、家族を持つこと・結婚が必ずしもハッピーエンドで終わらないことは小説を読むまでもなく理解できることです。

 

いまの世の中で、主人公金俊平のような男性は存在しえないとは思いますが、無邪気に「家族はいいぞ」等とは言えなくなるくらい重い作品でした。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/09/14

日本人の『空気』の源とは ― 『「空気」の研究』著:山本七平

以前山本氏の『一下級将校のみた帝国陸軍』を読み、その徹底した日本帝国陸軍批判に感銘を受けました。軍隊という命を預かる組織にあって、非合理的な決断が横行していた様子、そして上級軍人の余りにも軽い転向がビビッドに描かれたからです。

それ以後、お名前を記憶しておりKindleで安くなっていた本作を購入した次第です。

 

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本作の印象

先ず簡単に感想を。話が具体的で分かりやすく面白い。日本人が空気に縛られる様子が良く描かれています。ただ、その先の議論について書き起こそうとすると途端に手が止まってしまいました。その意味で本作は一見簡単そうに見えますがその核心はなかなか手ごわい、と言うのが率直な感想です。

 

・・・

一昔前、空気を読めない人を「KY」と呼んでいたりしました。また無言の圧力で集団の中の個を従わせる雰囲気を「同調圧力」と言ったりもします。

 

このように日本では集団による無言の圧力が強いわけで、筆者はこの「空気」とは何なのかということを突き詰めて考えていらっしゃいます。

なんなればその「空気」こそが第二次世界大戦で日本の軍事責任者をして無残・無謀な決断をさせ多くの若者を死に至らせたものであり、しかも彼らが自身の責任を転嫁している先なのです。

幸い氏は生還したわけですが、元上官たちが言う『空気』とは一体何だったのか?というのが本書のメインテーマです。

 

『空気』から逃れるのは難しい

多くの事例や論考から、筆者は空気とは『非常に強固でほぼ絶対的な支配力を持つ「判断の基準」であり、それに抵抗するものを異端として、「抗空気罪」で社会的に葬るほどの力を持つ超能力』(位置NO.158)と断じ、その根には『感情移入を前提とする』『臨在感の支配に』よる(位置NO.378)としています。

 

私の理解するところでは、ある考え(『天皇制は死守すべき』『皇軍は立派に死ぬべき』『骨には魂が宿る』等々)を絶対のものとし、それ以外の考えが出来なくさせる雰囲気、のようなイメージです。

 

不思議なのは、その道の専門家であってもどういうわけか『空気』に絡めとられ正論を吐けなくなることです。また決定権者であっても『あの時の空気では仕方なかった』という弁明が世間でもすんなり受け入れられてしまうことです。つまり我々も言語化せずとも空気の存在を認知しているのです。

 

『空気』への抵抗は相対化?

さて、ではどうやって『空気』から逃れるのか。

中盤からは『水をさす』の表現と共に『水』の概念を論じますが漠としてすんなり理解できませんでした。その中で一番しっくりきた表現は『対象の相対化によって、対象から自己を自由にすること』(位置NO731)です。要は別の方法・それ以外の考えを想起する、という事でしょうか。

 

ここで少し疑問が沸きます。

日本人は節操なく何でも受け入れるし、それこそ相対的価値観を体現した民族と言ってもいいのではないでしょうか。封建制を捨て明治維新で市場化を画策、そして軍国主義からの世界大戦後の民主化です。変節の速さと言えばもう世界一でありましょう。その点では日本人は相対的価値観を十分持ち合わせているのでは?

 

これに対し、筆者は日本人の態度を『汎神論的神政政制』(位置NO.2713)とも呼んでいます。

 

日本人のメンタリティは多元論的ですべてを包摂するようなものなのかもしれません。君にも考えがある、私にも考えがある、それぞれ等しく貴い、昔には昔のやり方、今は今のやり方、とこれまでの価値観などをどれも受け入れつつ吸収するような。

 

このメンタリティは時間軸で見れば確かに多元的で相対的と言いうるかもしれませんが、ひょっとすると我々は今現在で相対的に物事を見ることはしていないかもしれません。例えば我々は資本主義経済に生きていますが、社会主義共産主義に立ち返ろう!などと喋ると白い目で見られそうです。資本主義一択っしょ、と思い込んだら、福祉政策とか福利厚生とか富の再配分について考えは至らなくなりそうです(勿論言葉の意味での社会主義共産主義は解っているとは思いますが)。

 

このような日本人の(歴史的相対性ではなく)局時的相対性の欠落こそが空気を生み出す原因である、と言っているように私には思えました。

 

おわりに

私の理解の稚拙さもありますが、それでも根っこの部分は難しいと思います。

メインは『空気』論ですが、その『空気』を成す日本人については中途半端な言及にとどまっております。それは氏の別作にて大いに論じられているのだと思います。

いずれにせよ、本作を少し時間をおいて読み返してみたいと思いました。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/09/04

かつての悲惨なロンドンが生々しい。ストーリーは普通か ― 『OLIVER TWIST』著:CHARLES DICKENS

以前、『大いなる遺産』を読みました。凄くではないのですが、150年以上前のものとしては読めるじゃん、意外と面白いよ、というのが感想でした。

 

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その時の「意外と面白かった」が頭に残っている時分、近くの新古品を売る書店でこちらの本を見つけ、購入したものです(これまた500円弱)。

 


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本作、A4より若干大きいサイズで厚さは1cmくらい。絵本です。まあこれならクラシックをすいすーいと読めそう。

 

しかし、ページを開いて驚愕。字が細かくないですか!! 絵本ですよね!?


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(これを見た途端、見なかったことにして本棚に戻しました。そして半年は寝かせました。。。これは絵本でなくて新聞だ)

 

ですので感想は、「長い、つらい、で、まあまあ面白い」というかんじ。懸命にかじりついて丁度一か月、31日で読み切りました。

 

ふと思い出したのですが、図書館で見かけたのは新潮文庫で4冊本だか5冊本だかの相当なボリュームのものでした。あれをみて日本語訳を読むのをやめた気がします。

その点、本作は大判が幸いしてうっかり買ってしまえる(一応絵付きだし)し、買ったら読まないともったいないということで読むことができたのかもしれません。

 

作者評が素直過ぎてよい

本作ですが、この出版物にSpecificに良いのは、なかなか詳しいディケンスの伝記が載っていることです。

大いなる遺産、クリスマス・キャロル、そしてこのオリバー・ツイストも、どれもロンドンの底辺層を見事に描写しているじゃないですか。ですので私、筆者はきっと心暖かな慈善文筆家だろうと勝手に想像していたのです。

 

違いました

奥さんに子ども10人産ませて、その後不倫して、初めの奥さん以外の数人の女性に遺産を残すとか、結構やりたい放題やんか!最終的にひっそりなくなるようですが、リアルな作者像の描写に妙に感激しました。

 

あらすじ

話のストーリーは今となっては目新しくもないです。

孤児のオリバーが食事もろくに与えられない生活に嫌気がさして家出してロンドンに出る(多分小学生低学年くらい)。そこで悪党の一味に助けられるも、悪事に手を貸すことを強要されそうになり、そこでオリバーだけが(ヘボく)捕まる。というのもオリバーは心根の素直な男の子。悪党どもがオリバーを奪還しようとしたり、いろいろすったもんだが有るも、オリバーは良家でその純粋な信心を認められ共に暮らす事になる。その生活の途中で彼の出生の秘密が明らかになる。最終的に彼にまとわりついていた悪党は惨めな結末を辿り、オリバーは彼らから自由になる。

 

度々申し訳ないのですが150年前なら多分めちゃくちゃ面白いのでしょうが、今なら類似の話は多くあるのではないでしょうか。そして、長い。

 

絵から学ぶロンドン

もう一つ、やはりいいのは昔のロンドンの様子が絵で出ている事です。テムズ川沿いの様子とかは東南アジアのスラムみたい。またチャリング・クロスとか、コヴェント・ガーデンとか、今も名を残す通りが書かれているのは、きっと今のロンドンを知る人にとってはあたかも古地図を見るように楽しめるのではないでしょうか。


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英語は結構苦しいですが読めます

一応読めました。でも古臭いし単語も古い感じ。なまった口語表記(visitがwisitとか書いてある)がしばしば出てくるので辞書にも載ってない単語かどうかの判断に迷うことも。柄の良くないしゃべり方、という事なのでしょうか。countenance(n)表情、とかscot-free(adj)無罪放免の、とか、死ぬほど知らない単語に出会いました。

 

おわりに

兎に角長かったです。

我ながらこんなに長い本を読むなんてどうかしていたのでは、と少し思いました。

というかどこが名作なのか?

私は、ストーリー云々よりもむしろ、彼の他の作品同様、かの大英帝国にあってこれだけ悲惨な人たちがいた事を物語として残したことに価値があるように思いました。

皆さんはどのように読まれましたでしょうか。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/09/06

 

Oliver Twist (Illustrated Classics)

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反グローバリズム入門、かな―『グローバリズムが世界を滅ぼす』著:エマニュエル・トッド、ハジュン・チャン、柴山桂太、中野剛志、藤井聡、堀茂樹

新自由主義とかグローバリズムとか、しばしば耳にし、また口にもする割に、どこが良くて何がどう良くないのかについては、実はよくわかっていないようにふと思いました。

 

過日、トッド氏の『問題は英国ではない、EUだ』を読み、類書にあたる本書も読んでみようと思った次第です。

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グローバリズムのどこが危ない?

グローバリズムって何ぞやとなりますが、誤解を恐れずに言えば、ヒト・モノ・カネが自由に行き来できるようになることです(間違っていたらごめんなさい)。当然、その前提になるのが規制撤廃規制緩和です。さらにこうした規制撤廃規制緩和が含意するのは金融・経済・法律等における統一ルールの適用です。

 

このグローバリズムの結果どうなったかと言えば、貧富の差が激しくなったとか、よく言います。

 

本書では改めてグローバリズムの危険性を述べています。

トッド氏は、主権の喪失(国内事情を国がハンドルできなくなる)の危険性を指摘。チャン氏は、地域社会の不安定化(企業の積極的海外進出により地元雇用が削減される)や、企業の近視眼的政策(グローバル株主からの利益還元要求により長期的なコミットメントより中短期的な利益を優先)による企業の劣化などを説いています。藤井氏は、ハンナ・アレントを援用しつつ、官僚やエリート層の全体主義的思考停止を指摘。中野氏もエリート層の「レッセ・フェール」のもとの責任放棄を指弾しています。

 

たしかに実感としても、1990年代以降の各種規制緩和で生活が(金銭的に)豊かになったかと言うと全然そんなの感じません(技術的進歩の恩恵は受けていると思いますが)。でも、政策が良くないからいって官僚が失職することもないし、某自動車企業が儲かったからと言って、それが二次受け・三次受けを通じて波及効果として中部地方の景気が良くなったとかいうのもあまり聞かない。

じゃあ、規制緩和って結局市民の為と言うより、一部の金持ちをより金持ちにしただけ?という疑問であります。

 

グローバル化だって悪いばかりではない

もちろん、いいところもありますね。

ヒト・モノ・カネの自由な往来により、旅行はめっちゃしやすくなりました。格安航空券なんか昔はなかったし。国内も国外も安くいけるようになりました。また、関税の引き下げにより多様な物品が世界中から入ってきました。カルディとか見てるだけで楽しいし。

 

じゃあどうしたいのよ?

では本作に登場する識者たちは何を言いたいのかと言うと、総じて『バランスを考えようぜ』という事のようです。経済の不安定化を防ぎ、成長や変化もモデレートにし、そして官僚や政治家はもっと主体的に考え(企業や自分の利益ではなく)国益を考えるべき、と唱えているように思えます。

 

うーむ。

とはいえ、全体の有るべき姿をみても、その全体を構成するのはやはり個であります。ですから、結局我々一人の民度の向上が望まれますよね。民度の向上を目指すには? やっぱり我々が実際に政治に参加する?それも面倒臭いですよねえ。。。具体的にはわからないけど、選挙くらいは参加しないとなと改めて思った次第です(近年は非居住者も国政選挙には投票可能です)。

 

おわりに

性格や性別に『正しい』『間違っている』ということがないのと同様、国についても『正しい』『間違っている』という事は出来ないのではと感じます(少なくても他国の人が言う話ではないと思います)。もしそうだとすると、日本は米国と違ってもいいし、共産主義でも独裁を取る国でも、それはそれでその国の選択であると思います。

官僚も政治家もそして我々も、必要なことは、日本が世界標準と違うとか同じとか、はたまたおかしいとか正しいとかではなく、日本をどのような社会にしたいかと切に考えることなのではないか、と思いました。そうした地道な思考の堆積が民度をあげるのでは、と思った次第です。僭越ですが。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/08/29

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