海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年は会計と英語を勉強します!

20世紀米国で造られた金融業界の「常識」の数々 ― 『アメリカ金融革命の群像』著:ジョセフ・ノセラ、訳:野村総合研究所

50近くにもなって語彙の少なさに我ながら呆れてしまいますが、これ、すごい本だと思います。お金、証券、金利、等々に興味がある人は読んで損はないと思います。特にFP業務とかに興味ある人は是非お目通し頂きたい作品です。金融商品・サービスのみならず、その背景にあった社会事象や米国人のメンタリティまで丁寧に描かれています。


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概要

米国というと、概ね好んでリスクテイクする、借金もガンガンする、目先に集中、というイメージがありませんか。偏見であるかもしれませんし、あるいは一抹の事実を知覚しているかもしれません。しかし、こと金融周りにおいては、実は20世紀半ばくらいまでは決してそのようなメンタリティではなかったことが本作を読むと分かります。

本作は、米国での20世紀の金融史を辿ったジャーナリスティックな本です。現在ごく当たり前に享受している金融商品やサービスが、どのような背景でそしてどのような抵抗を受けつつ産声をあげ、そして米国に定着してきたのかが分かります。

 

具体的には

端的に言えば20世紀の米国金融市場、こと本作で取り上げられている内容はいわば「金融の民主化」と言えるムーブメントでして、リテール取引の拡大、商品のリテール化、そしてその立役者となった企業群がストーリの中心となります。ざっくり挙げると以下のような内容です。

・イタリア移民が作った”仲間のための銀行”(バンカメ)
・株式取引をウォールストリートから”メインストリート”へ(メリル・リンチ)
・個別与信から包括与信への進化をすすめたプラスチックカード(バンカメ・カード)
・インフレと借金とクレジットカード(VISAカード
MMFと銀行と政治家との闘い
・ディスカウント・ブローカーの黎明(チャールズ・シュワブ)
・ミューチュアルファンドの隆盛とマネー誌(フィデリティ)

概ね以上のような内容がテンポよく語られています(テンポはいいですが650頁近い2段組の大作です。。。)。

知らなかった事実は、大衆が銀行からお金を借りる時は冷蔵庫購入資金、自家用車購入資金など個別の与信を取らなければならなかったこと。こうした手間を省くためにクレジットカードが開発されたこと。当初はマニュアルの事務処理をしていたために、多くの不正取引がクレジットカードで発生したこと。市場金利が8%や10%にもなっても銀行預金金利は一律5%程度に抑えられていたこと。銀行の特権に抗いインフレ対策としてMMFが開発されたこと。MMFを売る証券会社に対し、銀行がロビー活動をして政治家を動かして州内販売を停止しようとしたこと。インフレを背景にカード借金が増えるも、それまでは借金は悪という考えが米国にもあったこと。401Kの広がりとともに渋々ながら米国民が証券投資のリスクを取るようになったこと。増えすぎた投資信託は個別株を選ぶのと同じくらい複雑な作業となり、マネー誌の情報価値が出てきたこと。

 

・・・どうでしょうか。こうして振り返ると、今では当たり前となっているお金にまつわる事象はすべて20世紀の米国で開発・推進されたと言っても過言ではありません。また概ね米国人が決して喜んで株式市場へ資金を投入しているのではなく、インフレという現実から渋々リスクテイクしているという話は実に意外な話でした。

 

おわりに

原題は”A PIECE OF THE ACTION”といい、意訳すれば「分け前」、つまり金融市場は特権階級のものから一般市民のものへとなったことを意味しているものです。著者はジャーナリストだそうですが、多分に訳者の野村総研の皆さんの能力もあるのだと思います。流石です。1997年初版の古めの本ですが、お金に興味の有る方には図書館で探してでも読んでほしい一冊です。金融商品の裏にある米国の社会事情や米国民のメンタリティまでもがしっかり描かれている秀作だと思います。

 

評価 ☆☆☆☆☆

2022/01/24

 

 

因みに日本の現代の金融史だと以下がおすすめ

lifewithbooks.hateblo.jp

 

 

海外生活模様は楽しく読めるも、そこまで絶賛するかなあ - 『サラバ!』著:西加奈子

4か月に一度くらいのペースで日本に居る息子に古本を送ってきてもらっています。本作も海外より遠隔操作でブックオフで買っておいたもので、私のお気に入りの西加奈子氏の直木賞受賞作品。2015年の本屋大賞第2位とのことです。

 


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で、読後の印象ですが、「そこまでか!?」というのが率直な感想です(ごめんなさい!)。

 

あらすじ

主人公圷歩(あくつあゆむ)は4人家族。背の高いハンサムな父、いつも若々しい美しい母、父親に似てしまった猟奇的な姉、外面は母親似の空気を読むやさおとこ風の僕。家族は海外駐在を繰り返し、テヘラン、日本、カイロ、日本と渡り歩く。その個性故か、カイロからの帰国後両親は離婚、姉はイジメの末引きこもり、そして「僕」は周囲の顔を伺いつつ、波風が立たないように生きてゆく。

 

海外駐在あるあるの数々

今回の作品で特徴的で面白かったのは、主人公圷(あくつ)家の海外駐在生活です。やはり日本では滅多に目にしない生活模様などは非常に興味深いものです。

例えば主人公たる圷歩(あくつあゆむ)がテヘランの病院で生まれるシーン。日本では自然分娩が未だに一般的だと思いますが、テヘランでは帝王切開がメインで出産が計画的に行われるとか、住居も日本と比べて豪華で広い家に住めるとか。場合によってはお手伝いさんなどを雇うことができるとか。そのお手伝いさんとの関係がどうにも下手(したて)に出てしまって難しいとか。ついでに言えば駐在生活は金がたまるとか(私が言っているんではなくて作品で語られているんです)、多くの「駐在あるある」が語られていました。

 

カイロの日本人学校の話も結構あるあるかもしれません。日本人学校という守られた空間には他の駐在の子どもがおり、別れが必然であったり(みんな転勤していきますからね)、一歩外にでるとローカルの子供たちがたむろしており、貧富の差や文化の違いを子どもながらに感じる点など。

 

また、本帰国となった駐在の子供たち(いわゆる帰国生)が公立校で馴染めなかったりすることも、本作の主人公の姉(この場合は極端ですが)のようによくあることだと思います。私は駐在ではなく単に海外に住んでいるだけですが、海外だと子ども同士の世界が作られるのがずっと遅く、子どもは家族の世界に属している時間が長いと思います。結果として友達同士の雰囲気を読むというよりも、自分の思ったことをはっきり言う子が多く、ストレートな物言いに総スカンを食らう子どもが結構いるのかなと想像します。

 

後半から失速?

さて、前半はかくも色彩豊かな海外生活と帰国後の不穏な家族生活が、主人公たる歩(あゆむ)の素朴な目線で描かれます。歩が中学・高校までが前半部です。

で、後半は歩が大学生として放蕩?生活にうつつを抜かし、20代30代にバラバラになっていた家族と30代半ばになってようやく和解していく、というような流れです。

正直に言うと、後半は個人的にはイマイチに感じました。前半と比べてエピソードの描写が粗く、展開が性急に感じるのです。また精神的な傷をもったことから自堕落な大学生活を送りアイデンティティクライシスに陥るという流れは、割とよくある筋でして、その点でも既視感のある展開でした。

家族は最終的に和解・収束してゆくのですが、生まれてこの方30年にもわたり諍いがあった家族がものの数年で分かり合えるか疑問に思いました。現実にそうした家庭不和で悩んでいる読者にとっては一つの希望になりうるかもしれない一方、その性急なエンディングは私のようなシニカルな読者にとっては非現実感・創作感を強く感じさせる結果となったと思います。

 

おわりに

いつもながら西さんの関西弁を交えた語彙のチョイスや語感は私の大好物なのですが、それは本作品でもいかんなく発揮されていたと思います。また私が読んだ西作品の中では最も一般受けしそうな雰囲気を感じました。

ただ、冠モノの賞を得るほど多くの方から支持を受けるほどの作品かというとちょっと疑問に感じまして、帯にあるような「自分は何を書くべきか・・・」は明らかに誇大であると思いました。

 

変わらず私にとって西さんの作品とは、エンタメ系の作品というより、その繊細で時に荒々しい語感の大胆さを愉しむ作品であると感じた次第です。

 

評価 ☆☆☆

2022/01/23

 

 

 

 

英字で金融情報を読みたい人には激推し ― 『金融英語入門』著:柴田真一

翻訳ものを読んでいて、原文を読んでいなくても「こなれているなあ」と思ったことはありませんか。

そういう意味で、本作は、金融英語についての「こなれた」感が強くにじみ出ている英語本だと思います。


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内容は全4編で金融の内容について章だてが分かれています。2章が株式、3章が債券とかそういう形です。その扱う内容は非常に基礎的で金融業界で働く我が身からすれば初歩に近い極々簡単な内容。

でも、出色はその例題。和訳と英訳の練習問題がついているのですが、この模範解答が実に「こなれている

例えば第1章の例題と模範解答はこんな感じ:

In the late 1990s, many banks and security firms poured resources into investment banking area. When the bull-run slowed down after the dotcom boom, most of them found themselves trapped between the overheads of a global network and the revenue of second-tier players.

 

「1990年代の後期には、多くの銀行や証券会社が投資銀小部門に資源をつぎ込んだ。相場の上昇局面がITブームの後減速した時、彼らのほどんどは、世界註に張った拠点の間接非常がかさむ反面、準大手程度の収益しか得られないといった板挟み状態にはまっていた」(P21-P.22)

 

とりわけsecond-tier準大手と訳した点とbetween副詞句として訳すのではなく「板挟み状態」と名詞句で訳した点に脱帽です。この訳がどれほど素晴らしいかは、近年よく耳にするAIを使った翻訳マシンのDeepLなどで試して頂きますと非常によく分かります。

www.deepl.com

(こちらの翻訳は文学系の英文とかで試すと非常に自然に翻訳してくれました。初めて見たときは驚きました)

 

これ以外にも付録には多くの金融用語の訳例が載っており、英語で金融欄を読みたい方などには非常に役に立つと思いました。

惜しむらくは、このような「こなれた」感をどうすれば身に付けられるかはどこにも書いていないこと。出来ることと言えばこういうのをまねて英文をかく、あるいは英文から和文に訳すくらいか。

 

おわりに

処分しようと思って、その前に確認がてらの再読でしたが、結局迷って本棚に戻しました。ここまでの英語力はまだまだありません。なお、金融やマーケットの世界は上げ下げなど表現する内容は単純ですが、バラエティは数多くあります(あげるでいうと grow, rise, hike, skyrocketとか)。そうした点ではIELTSなどで要求される語彙のバラエティを鍛える上でも使える可能性を秘めた本であると感じました。

 

 

評価 ☆☆☆☆

2022/01/18

大手マスコミ不信と、情報ソース取捨選択という自由と困難 | 『戦う石橋湛山』著:半藤一利

皆さんはマスコミやメディアを信じていますか?

 

恐らく多くの方が多少の疑いやポジショントークの可能性を考慮しつつも、まあ信じるという方が多いのではないでしょうか。私もそうです。

しかしもしマスコミが、戦争を推進する、戦争へのムードを後押しする、なかんずくそのムードを作り上げたとしたら、それでも我々は今まで通りの関係をマスコミと続けるべきなのでしょうか。


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本作は、2021年に逝去された半藤氏によるマスコミ批判書です。
タイトルに「石橋湛山」とありますが、決して元総理大臣の石橋湛山についての本ではありません。日中戦争開始前後に、戦争反対・満洲撤退という持説を大いに唱えた石橋湛山率いる東洋経済新報社と、それ以外の軍部追随を行った大手マスコミとの比較を通じて、これら大手マスコミを批判する内容になっております。

 

マスコミは感情的になる

読後の感想は、「マスコミも感情的になる」です。
もちろん、マスコミは集団・総体であり、それ一つとしての生き物ではありません。しかし、その意見を代表する論説委員や彼らが表す社説、そして報道記事でさえ時として感情的になるようです。満洲事変に際しての朝日新聞の様子は以下の通りです。

「十八日午後十時半、奉天郊外北大営の西北側に暴戻なる支那軍が満鉄船を爆破しわが鉄道守備兵を襲撃したが、わが軍はこれに応戦した。・・・この日北大営側にて将校の指揮する三、四百名の志那兵が満鉄巡察兵と衝突した結果、ついに日支回戦を見るに至ったもので、明らかに支那側の計画的行動であることが明瞭となった」(P.116-ゴシックおよび下線は当方による)

このほかにも朝日や毎日が明らかに状況を煽情的に報道した例が本作で多数引用されます。

 

マスコミは反省しない

もちろん、過去のことを云々言っても詮無き事、何も元には戻らないということも事実です。人は歴史的動物であり、その時々の雰囲気に呑まれてしまうしまうことは致し方ないと思います。しかし、時が過ぎほとぼりが冷め、過去の自らを振り返り、それでも自らを批判的に見れなくなったとすれば、一層マスコミの信憑性に疑問符をつけざるを得ません。氏は『朝日新聞七十年小史』を繙きこのように述べます。

「「昭和六年年以前と以降の朝日新聞には木に竹をついだような矛盾が往々感じられるであろうが、柳条湖の爆発で一挙に準戦時体制に入るとともに、新聞紙はすべて沈黙を余儀なくされた」と説いているが、これは正確な認識ではないようである。「沈黙を余儀なくされた」のではなく、積極的に笛を吹き太鼓を叩いたのである」(P.121)

 

ポジティブ過ぎてもネガティブ過ぎてもいけませんが、報道機関が自省的な態度をとれないとなると致命的であると感じます。。。

 

ではどうすれば?何を信じればいいのか?

振り返り、現在。

今はマスコミのみならず、個人が意見をSNSやブログなどを通じネット上に自由に流すことが可能な時代です。多様な意見が世論形成を可能にした点は喜ばしいことでありますが、他方、自分の意見が間違っている可能性があり、それにより他人を良くない方向へ導く可能性もあること、そしてそうした場合には素直に反省する勇気も必要になると感じました。発言には責任も伴うということです。もちろん私のこの小文ですらその責を免れ得ません。

また、マスコミとの付き合い方にも注意が必要かもしれません。大手だからと言って正しい報道だけをしているとは限りません。シェア争いのために煽情的な記事が掲載されることもあります。株主の意向に沿って偏向的な意見が載る可能性もあります。或いは広告主などスポンサーを害する記事が掲載されない可能性も大いにあります。

 

では何を信じればよいのか。
それは個々人が考え、個々人が取捨選択してつかみ取るしかないのかもしれません。一国、一企業、一ブログ、そのどれもが常に考えやスタンスを変えつつ、言う事も変わるのでしょう。同じことを言っている主体も、今正しいことがそのまま将来正しいとは限りません。


ある意味でこれこそ自由の代償なのかもしません。

またこの自由の結果、多くの人が異なる意見を持ちうることになります。こうした意見の違う人々と、コミュニケーションを通じて折り合いをつける、これもまた自由の結果課された現代人の責務かもしれません。

 

本作を読み、そんな自由という難しさを思いました。

 

評価 ☆☆☆

2022/01/14

一見お下劣なYA本も、読後に強い苦み ― 『The Absolutely True Diary of a Part-Time Indian』著:SHERMAN ALEXIE

 

id:AgentScullyさんのブログで、全米の『最も抗議・異議が寄せられた本ベスト10』なるものを目にして以来、これらが一体どういう本であるのか読んでみたくてウズウズしておりました。

 

blog.the-x-chapters.info

 

最初に”To Kill A Mockingbird”(邦題『アラバマ物語』)を読んでみたところ実に面白く、これが2作目のチャレンジです。

 

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ざっくりとあらすじを言えば、居留地で悶々と生活する中学生の主人公Arnoldが、勇気を出して白人だけの高校へ転校・進学し、カルチャーショックや地元での摩擦、あるいは近親者の死を経て成長してゆく、というお話です。

ん?これってWonderに似ていないか

前半はややお下劣な言葉が満載も、エンディングがなかなか感動的な自己陶冶系小説でした。ただ、類似の作品Wonderの二番煎じに思えたのも事実。

 

Wonder

Wonder

Amazon

 

 

Wonderでは先天性の口蓋裂症の男の子が家庭学習から一転、中学入学間際に一般通学へと変更、学校生活での摩擦を乗り越えてゆく話でした。一方本作は、居留地という狭い世界で、しかも飲んだくれやアル中や暴力に囲まれた環境で育ったインディアン少年が、白人のみの学校へ転校したことで新たな世界観、価値観を得、成長していくというものです。どちらも筋が似通っています。

もちろん違いもあります。Wonderがミドルクラスの割と裕福な白人家族の話である一方、本作では、居留地の、解決しようのない貧困という現実がハッキリと描かれます。私は居留地 Reservationというと、もっと手厚く保護され、補助金はじめ大学進学などについても白人より優遇されているイメージがありました。真実はわかりませんが、少なくとも物語中ではむしろ貧しく、そしてその苦しさから安酒に溺れるアル中だらけの悲惨な環境として描写されています。こうした環境からか、物語では祖母が飲酒運転の車にひかれて死亡、姉は自宅兼キャンピングカーでパーティーをしたところゲストがガスに火をかけたまま忘れて帰り、焼死。父親のベストフレンドEugineは酔っぱらった友達により酔った勢いで射殺される。さらに撃った友人は刑務所で自殺。とにかく命が続かない。

読後の後味をさらに苦くさせるのが筆者のあとがき。私、てっきり本作は物語と思っていました。が、筆者は正真正銘のインディアンで、実話に基づくもフィクションとしてこれを書いている模様。作中で主人公Arnoldのベストフレンドであり転校後は反目しあうRowdyも、Randyという現実の友人をモデルにしたそう。しかもその現実のRandyは晴れた日の見通しの良い道路を飲酒運転し、対向車線に突っ込んで亡くなったそう。彼はシートベルトを着けず、酔っぱらいながらスマホをいじっていたと想定されているようです。ちょっとワルだったり欠点があったり、でも心根は優しかったりする友人たち。大切だからこそ彼らの自暴自棄や無謀を直してくれるよう頼むも、絶対に言う事を聞かない彼ら。そんな頑固さに対する筆者の苛立たしさや悲しさが漂うあとがきは非常に重たいものでした。

 

英語汚い!ゆえに反対される?

さて英語ですが、YA向けを強く意識しているのか、或いはこれが若者言葉の常なのかわかりませんが、きれいでない言葉のオンパレードで、非常に勉強になりました。tonto (n) 気違い, wuss (n) 臆病者, boner (n) いわゆるイチモツ, flip off (v) 中指を突き立てる, homophobic (j) ホモ嫌いの, fag (n) オカマ、などなど。これ以外にもまあ自慰行為の話なども出てくることもあり、下ネタが原因で抗議が来るのならば分からなくはないと笑

 

おわりに

読み始めは、「これは小中学生向けのただのYA本だわ」と失敗した感が強かったのですが、最後の数章とあとがきでひっくり返されました。綺麗に言えばこれも多様性であり自由であり、またそれらの代償なのかもしれませんが、世界大国たるアメリカの暗部を覗いた気分になったことは否めませんでした。

 

評価 ☆☆☆☆

2022/01/14

 

 

アメリカの暗部というと堤氏のルポは結構インパクト大。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

戦争での行き過ぎを米国人が反省するという珍しい本。本国ではどのような評価なのかなあ。

lifewithbooks.hateblo.jp

デリバティブの仕訳の本。以上。 ― 『そのままわかるデリバティブ取引の会計・税務』編:みずほ総合研究所、プライスウォーターハウスクーパース税理士法人中央青山

新年になり、何故かちょっと忙しく本が読めていません。ということで本年一冊目は仕事の本となりました。

 


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これまでデリバティブの本を幾つか読んできました。その多くが入門書でしたが、本書はその中でも特に仕訳に特化していると思います。ですから、デリバティブの仕訳を知りたい人には最適。

デリバティブの仕訳を知りたいという方は本職で経理をしている方、金融企業の有価証券報告書を芯から理解したい人、あとは、、思いつきませんが、そういう方にはベストチョイスです。

かれこれ20年前の本ですので現状と違うところも多いかとは思いますが、そこがまた基礎を学びたい方などには逆によろしいような気もします(包括ヘッジとかそういうトピックなども入っていませんでした)。

なお、デリバティブ商品そのものについて小脇に事典を抱えたいという方ならば『デリバティブキーワード300』がお勧め。

 

評価 ☆☆☆☆

2022/01/06

社会での不正にどう向きあうか ― 『To Kill a Mockingbird』著:HARPER LEE

公民権運動を経て黒人差別が撤廃されてからまだ100年もたっていないと聞くと、私なぞはちょっと驚いてしまいます。LGBTQなど多くの性的な差別すら解消されようとしつつある昨今に対し、自分たちの父母ないし祖父母が若かったころ、アメリカではいまだに堂々と黒人差別がまかり通っていた。そして本作は、そのような差別に対する善良な人々の対応を描く素晴らしい作品でありました。


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あらすじ

本作の語り手であるScoutは兄Jem、弁護士である父親Atticus、通いのお手伝いのCalpurniaとアラバマ州のMaycombという田舎町で生活をしている。とある日、父親は公選弁護士として黒人被疑者のTomのレイプの罪を弁護することに。子供たちがこっそり潜入し裁判を見届けるなか、Atticusは証人たちの偽証を暴くも、最終的にTomは有罪判決に。そればかりか…。

 

みどころ

で、本作の最も素晴らしい部分はやはりそのテーマではないかと思います。私は個人的には本作のテーマは『社会の恥部にどのように対峙するのか』という事だと考えています。具体的には、黒人への偏見ということになります。レイプ犯被疑者のTomは推定無罪ともならず偏見のもと有罪に。小学生ならがこの裁判をこっそり目撃したScoutと兄のJemは当然のことながらショックを受けます。こうした社会悪に対する父親の冷静な態度が秀逸でありました。

“but let me tell you something and don’t you forget it -- whenever a white man does that to a black man, no matter who he is, how rich he is, or how fine a family he comes from ,that white man is trash. ” (拙訳) ”だけどこれだけは言わせてほしい、そして忘れてほしくない。黒人を騙そうとする白人が居る時は、いつだって必ずその白人はクズだ。それがだれであれ、金持ちであれ、いい血筋であれ、関係はない。”(23章)

 

この判決がおかしい事を理解している近所のおばさんMs.Maudieも、そもそもAtticusが公選弁護人に選ばれたことの意味を子どもたちに諭します。本来選ばれるべきは経験の浅い弁護人であったのに、他でもない公正なAtticusが弁護人として選ばれたことは、つまりTomの無罪を陪審制というスキームの中で実現できるよう取り計らった人がいるということです。

最終的に努力叶わずTomは有罪になり、そして死んでしまうのですが、そうしたことを含め、社会の良くない点を認知し、その仕組みの中でよりよく機能させようとする誠実さには心打たれます。『悪法も法なり』と毒杯をあおって冤罪判決に従って死んだソクラテスを想起させるかの遵法精神です。

加えて、社会の矛盾をどう子どもに教えるのか(黒人差別の現実とキリスト教の平等理念、さらに不公正な判決)、偽証しようとした同じコミュニティの構成員を悪く言わないように諭すなど、その人の立場や境遇を推し量るAtticusの度量の広さは私には素敵に感じますが、恐らく多くの人は賛否両論あるのではなかろうかと感じました。

そうした意味で、本作は、色々な倫理的状況が設定されており、議論の例題として非常に良い出発点になりうると感じました。

 

英語は癖強い

英語は非常に癖のあるものでした。be動詞のスラングであるainは多用され、’で省略された表記や省略した音・癖のある音をそのまま英語表記してあったりで一部は非常に読みづらいと感じました。前半に多い米国南部の四季の移り変わりの描写は、確かに美しいのですが、読書速度を大分落としました。他方、中盤以降は裁判でのやり取りはじめ展開が早く、多少の難しい単語も気にならずに割と早く読み進められます。

 

おわりに

実に面白かったです。米国では親が子どもに読ませたくない本のランキングに名を連ねる常連作品だそうですが、私は寧ろこれを子どもたちに読ませてどう感じるか聞きたいと感じました。そして皆さんにも是非読んでいただき、その意見や感想を聞きたいとも思いました。日本では『アラバマ物語』という名前にて翻訳されているようです。

そういえば、結局原題”To Kill A Mockingbird”の意味が分からなかった。美しく鳴くだけの小鳥を打ち落とす合理などはないという記述はありましたが、黒人を小鳥になぞらえていたのか。。。まあそんなのが分からずとも120%楽しめる作品です。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/12/30

 

『最も抗議・異議が寄せられた本ベスト10』についてはid:AgentScullyさんのエントリを参考にさせて頂いております。本作の米国での反応もまた興味深いものがあります。

blog.the-x-chapters.info

 

 

To Kill a Mockingbird

To Kill a Mockingbird

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