海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年は会計と英語を勉強します!

時代を感じる、小中学生お悩み相談 | 『バカのものさし』養老孟子

先日知人に頂いた本です。

プライベートで追い詰められてどうしようかと考えているときに、現実逃避して数時間で読了した本笑

ちなみに困難に対しては、向き合って一つ一つ対処する以外に方法はないのですが、心が萎え気味の際はケータイに逃げるのではなく読書に逃避というスタイルを最近はとっています。


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ひとこと感想

率直に申し上げると、可もなく不可もなく、という印象でありました。

 

お悩み相談です

東京大学の養老先生が、小中学生の子供たちの質問に答えるという内容です。

子どもたちの素朴な質問にたいして、脳科学をベースにやさしく回答するというつくりで淡々と進行します。

 

なるほどと思うところはありました。

近頃の子供が切れやすいって本当ですかという中学生の質問に対して、米国の凶悪殺人犯40名の脳の状態をスキャンしたところ、前頭葉機能の低下がみられた。前頭葉は意志を司る部位であり当該機能の低下であり、おそらく現代人のそれは低下傾向であろうし切れやすいというのは概ねそのとおりだろうという返答。ただし前頭葉の機能が低下してきている要因は特定できていない、とのこと。

 

読んでいて親にキレられた感を味わえてしまう

他方で、便利すぎる社会や情報化社会への批判が多く、父親からの小言のような印象になっていると感じました。

私なぞはインターネットの出現によって劇的に世の中が便利になったその変化を、身をもって体験した世代であります。その功罪を両方理解していつもりです。昔は海外への手紙は一か月単位の時間でのやり取りでしたが、今では数日、下手すると数時間でやり取りできます。海外の情報だって、図書館に行って沢山本を借りてこずとも、インターネットで簡単に素早く手に入れることができます。勿論、ついついケータイに手が伸び注意力散漫になった自分もいるわけで、集中や自己コントロールは一層難しくなったと感じます。クレジットカードの情報が盗まれ、米国の列車の予約と欧州での病院の支払いで合計30万円ほど請求が掛かったこともありました(最終的に無事でしたが)。これらは罪の部分と言えます。

でも、養老先生の批判は功の部分に触れずやや一方的に見えてしまいました。最近の若いもんは方式のやつです。

 

また現代の、情報処理一辺倒で、自然との身体経験が希薄になった現代人を批判し、体を動かすこと・運動をすること・自然回帰等を主張する箇所がしばしば出てきます。自然に帰れ・運動せよ、という方向性は個人的には大賛成ではありますが、どうにも根拠が明示されていないように思え、そこもまた、ちょっと微妙だなあと感じてしまいました。

 

おわりに

脳の分野は日進月歩の勢いで新たな発見がなされていることと思います。

養老先生の作品を久方ぶりに拝読しましたが、残念ながらやや時代の後塵を拝しているという印象を受けました。まあ悩み相談に目くじらを立てることもないかもしれませんが。

私が高校生であった1990年代、脳といえば養老先生か立花隆氏、という構図が認知されていたように思います。日本における脳への一般的な関心を大いに高めた功績はあろうかとは思います。ただし、今の今、氏の著作を読むと、やはり時代というものを感じざるをえないと感じた次第であります。

 

評価     ☆☆

2022/11/20

 

英語でも、読む手が止まらない傑作小説 |『Not a Penny More, Not a Penny Less』JEFFREY ARCHER

Jeffrey Archerという作家さんはうっすらとお名前は存じ上げていましたが読んだことがありませんでした。

そもそものきっかけは『木曜殺人クラブ』が読みたいなあとAmazonを検索したのが端緒。一緒によく買われている作品ということでリコメンドで出てきたのがAnthony Horowitz。フーン、面白そうだけど、この人も読んだことないわ。どんな内容なんだろ、と彼の作品をクリックすると、関連商品として挙がったのがJeffrey Archer。あ、この人は確かに聞いたことある、でも読んだことない。

でも、しばしば訪れるムっくん (id:nmukkun)兄さんのところで作品が紹介されていることを思い出しました。

nmukkun.hatenablog.com

後はいつものルーティンです。日本語訳か英語版か、安い方を買って読むべし。ということで再び近所の新古品のお店で本作を買い求めた次第でございます。

 


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ひとこと感想

いやあ、これは驚きました。実に面白かったです。英語の本では今年一番。

これまで英語の勉強として、ポアロアガサ・クリスティー)やらホームズ(コナン・ドイル)やら読んできました。しかし、手が止まらない、次のページが読みたい、英語が苦にならない(ずっとじゃないけど)という体験は初めてでありました

 

あらすじ

ポーランド移民の子Harvey Metcalfeは米国育ちの叩き上げのワル。その才能をもって悪さで財を築く。そんな彼が仕掛けたのは、北海油田掘削のダミー企業の株式を使った詐欺。不幸にも彼の術中にまんまとハマったのは、医師、美術商、伯爵のボンボン、Oxfordの学者。騙されたと気づいた被害者4人、奪われたのは合計100万ドル。彼らはMetcalfeからきっちり100ドルを奪い返すと誓いを立てるが・・・

 

止まらぬツイスト+個性が光る四人の被害者たち

さて、本作を読んでまず第一に感じたのはその引き込む力です。

Metcalfeの幼少時の悪だくみ、メールボーイとして株屋で働いていた時に稼いだ驚きの方法(現在ならばコンプラ的に完全アウト)、また被害者4人が4人独自の騙し返しプランを実行するなど、ほぼ常に展開にハラハラさせられ、ついつい手繰る手が止まらないという作品でありました。

 

さらに被害者=主人公4人の異なる個性が物語を一層豊かに彩ります。

Oxfordで研究員をするStephenは米国人。翌年にHarvardでの専任講師の枠が決まっており、今回の司令塔的役割。オヤジの遺産を投資してスってしまいました。美術商Jean-Pierreは名前からしてわかる通りフランス人。すぐに女性を口説こうとしたり、シニカルな発言が多く、スパイシー担当。医師のRobinはロンドンの開業医。イケメンで奥さんと子供二人の家庭、財産も地位も築くも、何不自由ない生活にちょっぴり飽きてしまい大枚を投資してみて大失敗。Jamesは親の庇護の下ぬくぬくと仕事もせずに生きてきたボンボン。役者の道を目指すも親から反対されプーのままでいたとき、儲け話で親を見返そうと田舎の土地を抵当に入れて借財して投資、そしてまんまと騙される。

 

出自や専門はそれぞれ異なるのですが、その異なる個性を発揮して、4つのプロジェクトでそれぞれの専門や得意分野でMetcalfeを騙し返すのです。

 

英国好きにはたまらない舞台か

さて主人公たちのモットーは、やったらやり返す、ただしぴったり一倍返し、なのですが、その舞台の多くが英国の由緒ある情景であったりします。ですから英国好きにはきっとたまらないことと思います。

例えば、ウインブルドンでMetcalfeの行動を探るとか。また競馬のAscotでMetcalfeを騙すきっかけを作りますが、彼の馬がKing George VI and Queen Elizabeth Stakesで勝利を収めたりします。さらにOxfordのEncaeniaという格式ある行事でMetcalfeをハメるなど、かの地のエスタブリッシュメントの雰囲気がわかる方ならより楽しめるのではないかと思います。

それ以外にもAnnabelというロンドンで有名なクラブとかも出てきます。庶民のハイソへの憧れをくすぐります。

 

おわりに

ということで、本来忙しくしないといけない時期でありましたが大分こちらを優先させてしまい、2週間程度で読み終えました。それくらい面白かったです。

最後はJamesの恋愛含めてハッピーエンドで終わるのですが、ラスト30ページほどのツイストには驚きとニヤニヤがたまらない展開でした。すごい。ぜひ読んで欲しい。

 

筆者は国会議員を務め、その後詐欺で財産をスって、その経験をもとに本作で作家デビューを果たされた方。議員での実績は存じ上げませんが、デビュー作でこれだけ面白いのならほかの作品はもうどうしたって面白いはず。周辺作品も少しずつ読んでみたいと思います。

 

評価     ☆☆☆☆

2022/11/19

 

 

 

文語調?がくせになる京都の学生譚|『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦

わたくし的には、今月は、「新たな作家さんを渉猟する月間」であります。

海外に居ると店頭でのジャケ買いも難しいですし、さりとてネットのAmazonでAIにリコメンドされる本を買うのもなんだか癪だし、新たな出会いを生み出すことは結構難しいかもしれません。

そういう点では、皆さまのブログというのは非常に参考になります。まさに百人百様で、自分だったら手にすら取らなそうな作品、全く知らない作品などが沢山紹介されています。

で、今回の作品は少し前にClariceさん(id:Lavandula-pinnata)のブログで発見したものです。

lavandula-pinnata.hatenablog.com

 

で、結論から言うととても「オモチロイ」作品でした(一応作中のセリフのパクリですが、おっさんが使うと只々キモいだけですね…)。

私なんぞは、趣味や関心を大分絞り込んで生きているのですが、こういう新たな出会いがあると、改めて心をオープンにすることの大事さを痛感した次第です。このジャケットはこういう出会いがなければ自分から能動的に手を取るそれじゃあないんですよね。

皆さんの日々のPostに改めて感謝致します。

 


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ひとこと

森見氏の作品、私は初めて読みました。

面白かったです。大学生+空想+京都+恋愛、等々のファクターが織り込まれた不思議な作品でした。

 

癖になる文語調

その中でも一番印象的だったのは言葉遣い。

語りの視点は、「先輩」だったり「黒髪の乙女」だったり、キーパーソンたちが折々入れ替わるのですが、彼らが皆、やや古めかしいインテリ雰囲気の言葉遣いをしているのです。その技巧的な文語調が作品全体を支配しており、最初はどうも鼻につくように感じました。

ところが、読み進めるにつれ、何だかその文語調の語りが癖になってきて心地よくなってくるので不思議です。

 

京都という舞台設定の妙

そんな文語調の語りがしっくり馴染むのは、ひょっとしたら舞台が古都・京都であるからかもしれません。

思い返すと、中学生の国語の教科書には森鴎外の「高瀬川」が収録されていました。私自身のもそうでしたし、中三の娘の教科書にもありました。つまりですね、京都・歴史もの・文語という組み合わせは非常なる親和性があり、この三点セットは日本人に言わば刷り込まれているといっても過言ではないのかもしない、と主張したくなってしまうのです。

先日も芥川龍之介の作品を読んだのですが、やはり京都を舞台にした歴史ものが多く(「邪宗門」「地獄変」など)、その美しい文語調に「ああ、京都に旅行に行きたい」とサブリミナル的な想起が展開された次第です笑。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

 

「黒髪の乙女」と友達になれたら楽しそう

また一部の男性諸氏から熱狂的な支持を受けそうなのが、この古風な「黒髪の乙女」の設定ではないでしょうか。

 

先ず、本好きという点。彼女が古本市に足を運ぶというくだりが物語前半であります。その中で彼女は、これまで読んできた本として、オスカー・ワイルドマーガレット・ミッチェル谷崎潤一郎円地文子山本周五郎萩尾望都大島弓子川原泉ロアルド・ダールケストナー、C・S・ルイス、ルイス・キャロル等を挙げています。

私も一部は読んだことがありましたし、一部は読んだことがない本です。きっと自分のおすすめとか彼女のおすすめなんかを話したら盛り上がるのかなあと夢想。

加えて彼女がいまいちイロコイに世慣れていない点などは、「先輩」と一緒で、守ってあげたい欲求が湧いてくる男性が多いのではないでしょうか。ついでにいえば、そんな世慣れない「乙女」がまさかの酒豪であるという点もギャップ萌え?なのだと思います。

 

無駄にみんなに優しいというキャラですが、これも、ウブな男性が勝手に恋に落ちてしまうやつですね。「乙女」も素直なゆえに、自分自身無意識に周囲に誤解を与えている可能性がありますね。

 

現代の大学生の描写ではない

そういえば、実は本作、ケータイが一切出てこないんです。

現代の感覚からするとケータイが無い時点で、その舞台設定は既にSFかもしれません。でも私からすると、ああ、筆者も私と同年代に大学時代を送ったんだな、と妙な親近感すら覚えてしまいます。なお作者の某インタビューによると、やはり、今の大学生を描いたものではない旨、仰ってましたね。

www.studykyoto.jp

 

おわりに

ということで、文語調が癖になる、アニメのような作品でありました。

京都にゆかりのある方、京都に行きたい方には堪らない作品なのではないかと思います。

 

評価   ☆☆☆

2022/11/19

 

大人になってからの自発的な勉強こそが勉強 | 『勉強の価値』森博嗣

 

本作ではないのですが、先日、娘がやっていた国語の問題で森博嗣氏の論説が出てきました。娘の回答は散々でしたが、筆者の作品は読んだ事がなく、氏に興味を持ちました。その結果、氏の小説と本作を購入したものです。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

ということで、本作は娘の論説文練習の本と相成ります。例によって私が先に読んでみた次第です。

 


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勉強の意義について

なんで勉強しなくてはいけないのか」という問いは中高生くらいまでは多くの学生が胸に宿す疑問だと思います。また大学生以降も「こんなの意味あんの?」「んなの将来使わないでしょー」という発言に形を変え、同質の疑問を引きずることもしばしばだと思います。

そんな、子供に問われて困ってしまうような疑問について、私の人生の中では一番しっくりくる回答を本作で頂いたと感じました。

 

子どもにとって勉強は基礎体力作り、そこからが真の勉強の始まり

その回答は本作のまえがきで早々に出てきました。ちょっと長いですが引用です。

 さて、(子供が)明確な目的を持つためには、少なからず人生経験が必要だろう。世の中には何があるのか。自分の可能性はどの範囲なのか。そういったことは、二十年くらい生きていないと理解することができない。つまり、夢を見るためには、最低限の基礎的なことを学ぶ必要がある

 そうしたうえで、自分はこれがしたい、というものを見つける。それからが、本当の勉強の始まりである。もう、そうなれば「楽しさ」というエネルギィによって、たとえ誰かに止められても前進し続けることになるだろう。

 したがって、勉強は大人のためのものである。子供が学校で習っているのは、大人になってから本当に楽しい勉強ができるための基礎体力をつけているようなものだ。

 本書は、子供向けの本ではないし、子供に勉強させたい親が読んでも、ほぼ意味がない。もし子供に勉強させたかったら、まず親が勉強すること。親が勉強に熱中している姿を見せること。そうすれば、「なにか楽しいことがあるのだな」という雰囲気が子供に伝わるはずである。教育とは、本来そういうものではないか、と僕は考えている。(P.31-P.32)(ゴシックおよび下線は森氏のものではなく当方のものです)

 

つまり子供の勉強は基礎体力作り、本当の勉強は自ら興味を持って取り組むもの。自分が好きで勝手にやることこそが勉強、とまあこういうことですね。

 

たしかにー

こうして始まった氏の勉強論には、したりしたりと膝を打つ内容が随所に見られました。

 

曰く、勉強というのは人の能力を高めるすべての行為。人それぞれにやり方があり、机の勉強だけが勉強というわけではないこと(1章)。曰く、勉強は勝つためにするのではないし、受け取り手の意欲がない限り成立しないのが教育であるということ(2章)。曰く、勉強の価値とはその内容の獲得ではなく、その過程で自己を知ることができるということ(4章)。曰く、得意不得意は問題ではなく単なる他人との差でしかないこと、また不得意・苦手の名の下で教科を排除するとその方面の可能性を失ってしまうこと(6章)、等々です。

 

ハウツー本の対極、独学大全の前段

こうした氏の意見は、近年のハウツー本にあるような嫌な勉強をなるべく効率的に・そして嫌ではないように自己暗示的に言い聞かせる?かのごときメソッドとは対極にあるかもしれません。それらで述べられる勉強の意義とは大抵は実利的・近視眼的であろうと思います。別にそれが悪いわけではありませんし、そもそも目指すところが異なるので比較すること自体間違いかもしれませんが…。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

他方、好きになってしまい自発的に学ぶ行為こそ勉強という方向であることを考えれば、本書の先には読書猿氏のごとき「どのように学ぶか」という独学の地平が開けることと思います。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

多少合わないところもあり

全体を通じて、やや理想論に寄るところもあり、時に「でも、実際にはやっぱり難しいですよ!」と反論したくなる箇所は数か所ありました。でも仰ることがいちいちごもっともで、何となく「なくやり込められた感」を感じるところも数か所ありました笑 なんか、おっしゃることが完璧で…。

 

おわりに

ということで元名大教授の勉強論でした。

語り口が平易で分かりやすく、内容も子供から成人にまで広く関わりのあるものだったと思います。その点では、筆者自身子供向けではないと言及されているものの、勉強が嫌いなお子さんから再度勉強を始めてみたいという大人の方まで、ひろく読書に値する作品であると感じました。

 

評価     ☆☆☆

2022/11/13

真剣なアホが素敵すぎる|『時をかけるゆとり』朝井リョウ

アホが真剣過ぎて素敵

青春

・・・この言葉を、すべての人が納得いくように形容したり換言してみることは、きっと難しいことでしょう。それはもちろん、その若き時代に経験した思い出深い事象が各人によって異なるからです。恋散った甘酸っぱい青春もあれば、部活に打ち込んだ汗くさい青春もあるでしょう。

でも局所的に首肯してもらえるような青春、膝を打つようなあるある。そんなのもあると思うんです。その筆頭に私は、真剣にアホをやる青春、を挙げたいと思います。

そしてこの言葉こそ、読後にまず思い浮かんだ言葉でした。こいつらはすげえ。真剣にアホをやっている。

懐かしくも憎めない、ある種可愛いさすら感じるエッセイ体験でありました。


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つまるところ本編は、早稲田大学在学中に作家デビューを果たし男性としては最年少で直木賞でを受賞した朝井リョウ氏のエッセイであります。

 

内容は帯を見ると一目瞭然

さて、そのエッセイの内容たるや、表紙を見て、その帯の文句からしてすごい。

圧倒的に無意味な読書体験

 

初エッセイ集『学生時代にやらなくてもいい20のこと』+新作3本の完全版!

 

本というのは、そもそも何か伝えたいもの・ことが文字化されたものだと思います。伝えたい事象ってのはすくなくとも語り手にとっては幾許かの重要性があるはずなんですよね。それを「無意味」とハナから否定。しかもその否定に「圧倒的に」という形容動詞が付きます。無意味にも度合いがあるんですね。。。すんごく意味ないよ、という自己否定笑

まあでも、当初の題名「やらなくてもいい・・・」というタイトルからくみ取るに、後進たちがしなくてもよい苦労を避けるための老婆心的随筆、と言ってもよいのかもしれませんね。

 

愛すべき愚行!?の数々

ということで、朝井氏の赤裸々なアホ体験がこれでもかと披瀝されます。ハロー効果ではないのですが、若くして賞も取り、素晴らしい大学も出てるとなるときっとしっかりしている人、という印象があったんです(知り合いでもないけど)。

でも、このエッセイを見ると大分しっかりしていないですよね笑 まず、肛門がしっかりしていない。こういう下ネタで笑いを持っていくのは一部の方は反則とみなすらしいですが、私には素直に面白い。下ネタ好きだから笑

そんな中では、私としては、ノリで北海道旅行を企画し、詰めの甘さから結局行けないという「旅行を失敗する(その2)」と、これまたノリで自転車で東京から京都まで行ってみようとして、やってみたら大変つらかったという「地獄の500キロバイク」がお気に入りです。ちなみに船で御蔵島に行こうと思ったら高波で接岸できず往復して帰ってくる、そして気持ちを鎮められずその足で伊豆大島へ向かう「旅行を失敗する(その1)」も好き。

 

おわりに

ということで、一部の男子が激しく同意できるようなアホが沢山詰まったエッセイでした(女子受けはわかりませんが)。自分の来し方を思い出し懐かしむとともに、ああ、アホって素敵だな、大事だなと改めて感じました。

高校生の息子にも今度読ませてみて感想でも聞いてみたいと思います。計画とか勉強とか大事だって日頃はぎゃんぎゃん言ってしまいますが、遊び、ゆとり、こういうものも同じくらい大事だなあと改めて感じました。遊び・ゆとりだけでは困るけど。

きっと「ゆとり」ってタイトルも、筆者の皮肉なのかなと類推します。ゆとりゆとりって、全てがゆとりで構成されているわけねえだろって。だから世間の歪んだ見方に合わせて、あえてのアホ話のオンパレード。直木賞?ああ一応頂きました、ゆとり世代ですけどねえ、どうして貰えたんでしょうねえ(心:努力だってしてんだよ、運なわけねえだろ)、みたいな。違っていたらごめんなさい。

評価   ☆☆☆

2022/11/13

 

ガールズトークの盛り上がる中、男一人残された気分(話は面白いんだけど) | 『平成ガールフレンズ』酒井順子

とある日のこと、中三の娘が「古典マジで意味が分からない」と申します。見れば国語で芭蕉奥の細道を読まされているそう。

 

夏草や兵どもが夢のあと

 

・・・この儚さをどう説明する? 「もののあはれ」とか辞書で引いてみるか? 藤原氏の隆盛から凋落、武家社会と源氏の勃興とかを話すべきか? 何なら推古天皇とかの飛鳥時代の中央集権体制から説明するか? ていうか、うちの子、日本史殆ど知らないぞ。うーむ。

ということで、日本の文化・歴史・地理等がわからいキコクの子に、古典の良さ・面白さを説明するのは存外に難しいと感じたのでした。今さらですがね。

 

長男の時はもっとガサツなアプローチで、「伊勢物語」を音読させて体で覚えさせるという戦法でした。そこそこ試験問題で「伊勢物語」も出てきてましたし。で、うまくいったかどうかは分かりませんが、高校では確実に古典嫌いになりました(完全に失敗)。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

同じことを娘に試してもいいのですが、内容的に娘にはちょっと疑問ですよね(嫁からクレーム入りそう)。

ということで、困ったときのAmazon頼み。そして発見したのがこちらの作品。この本を娘に読ませよう! あれ、でももう中三の11月じゃん、今更読ませても・・・という考えも頭をよぎります笑 まあでも買ってしまったのだから、とまずは私が読んでみた次第です(もう殆ど自分のために買ってますね)。


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ひとこと感想

しょっぱなから筆者の共感力の高さに感動しっぱなしでした。古典女流作家の作品の内容から作者の性格・行動を解釈し、上手に現代に当てはめます。するとどうでしょう、あれほど訳が分からない古典の人物でも、あら不思議、確かにそういう人いるよね、という人物像へと見方が大きく変化するではないですか。

 

女流作家キャッチコピー

ということで、本作、平安時代の女流作家とその作品を、現代の状況に置き換えるという試みであります。まずはこちらをご覧ください。

清少納言徒然草

紫式部源氏物語

藤原道綱母更級日記

菅原孝標娘「蜻蛉日記

和泉式部和泉式部日記」

大学受験前の日本文化史の勉強(丸暗記)を思い出します。でも筆者の分析だと上記の作家達はこのような性格分析となります。

清少納言:承認されたい自慢しい

紫式部:ねっとりこじらせ女子

藤原道綱母:夫の不倫で親子密着

菅原孝標娘:腐女子の元祖

和泉式部:不幸で才能を磨く

こんなキャッチコピーだと、確かに興味が湧きますよね。

 

ガールズトーク全開!?

より詳細に説明すると、筆者の試みは、ガールズトーク的味付けで古典の偉人たちを分析している、ということです。ガールズトークってのは要は恋愛観ですね。

清少納言はサバサバしているので、名門の殿方も寄ってきやすい。それをサラリと振って、言い寄られたことをインスタとかで上げちゃうタイプ。

他方、紫式部はそういう出しゃばりなタイプが一番嫌い。故に清少納言とか大っ嫌い。でも実は本人もそういうのがしたいのに、性格が許さないタイプ。メンドクサ!

藤原道綱母は、今でいうところのサレ女か。招婿婚で一夫多妻の当時でも、ほかの妻にジェラシーをめいいっぱい感じて、新しい妻が自分の夫から愛想をつかされると大喜びするという。。。原典を読んでいないのにヒステリックさが伝わります。『死の棘』を彷彿とさせます。

菅原孝標は恋に恋しちゃうタイプ。源氏物語光源氏が夕顔を連れ去るシーンがありますが、そういう「連れ去り」をしてくれる王子様が早く出てこないかなーなんて願っちゃうタイプ。

和泉式部は、恋愛体質。その気がないのに自然と愛想を振り舞いてしまうのか、男が絶えない。挙句に死んだ元カレの弟とも結ばれちゃう(ちなみにその弟も死ぬのだが)。今ならばあざといとかって言われちゃうんでしょうね。

こういう分析をして、この子は友達になれるとかなれないとか、私ならばどうこうアドバイスするのにな、などの想像のやり取りが盛り上がります。確かに面白い。

 

おわりに

ということで、古代の女流作家をその恋愛観などで読み解くような作品でありました。

「する」とか「した」とか、シモの話が多く、読んでいる最中は、女子の集団にうっかり男一人で迷い込んだような気分になりました。が、平安時代の女流作家はばっちり頭に焼き付きました。原典もちょっと目を通してみたくなります。

 

本作は当初、中三の娘の古典苦手意識解消のために購入したものでした。確かに非常に面白く、苦手意識も消えるかもって思いましたが、内容がなあ・・・読ませてみるか悩みどころであります笑

 

評価     ☆☆☆

2022/11/12

 

オルタナティブ進路で世間を生き抜く?でも決めるのは難しい | 『13歳の進路』村上龍


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13歳のハローワーク』という本とセットで買いました。“ハローワーク”は世の中にどんな仕事があるのかを紹介するいわば職業図鑑。職業が教科別に配置されており、教科についての興味から職業を引くという謂わば職業事典とでもいった風采でした。

 

こんな進路もあるという気づき

一方、本作『13歳の進路』は一般的ではないかもしれないけど役に立つ道筋、の紹介とでも言ったものといえるかと思います。

前提にあるのは、多くの子供たちが一般的的な中学卒業後、普通科の高校へ進学、そして大学へ進み、就活を経て就職というものです。ただしこのマジョリティたちは、一部のトップティアのタレント以外は差別化が難しく、レッドオーシャンでの厳しい戦いを強いられるという見込みがありそうです。故に、世の中がかつてなく厳しい状況(非正規ばかりであったり、私のように全く出世しないとか泣)であることを認識し、(風見鶏のごとく)時流の有利不利を選ぶのではなく、自分にあう「生き延びる」方法を模索してほしいということのようです。

もっと簡単に言うと、一般的でなくてもしっかり生きていけるし生きていってほしい、ゆえにこれを参考にでもして、と言っているように感じました。

そういうわけでか、高校、高専フリースクール、大検、大学、職業能力開発校奨学金自衛隊等々の説明が縷々され、その活動内容や得られる資格等がまとめられております。高校の紹介もありますが、普通科はほんのわずかで、農業科、水産科、商業科、工業科、福祉科、看護科とか所謂実学の紹介に力が入っている印象です。

職業能力開発校、私は全然知らなかったです。公立高校と同等以下の学費で自動車整備やエンジニアリング等が学べるらしい。こういう進路は確かにもっと知られてもよいと思います。

 

営業という職業についてフィーチャー

それから、営業・販売がどういう仕事か、というエッセイ集が巻末にまとまっていました。なかなか面白い。全16社のトップが自社や自分の営業について語っています。営業・販売というのは営利活動で必要不可欠の機能ですし、多くの人が望む望まない?にもかかわらずつく可能性が高い職種です。きっとこの特集は、若者が世を「生き抜く」ための村上氏一流の老婆心の発露であるととらえました。

印象的なのはティア(葬儀屋)の富安氏のパート。営業・販売でもっとも大事なことは「その扱っている商品(サービス)にほれ込むことです。」 まあ確かにそうだよなあ。ただ、現実にほれ込むほどの商品やサービスに出会うことは稀であったり、人事や経理などの本部業務を希望したら、営業配属・ガーン、みたいなこともあるので難しいところだなあ、と感じました。喧嘩を売りたいわけではないのですが、正論過ぎて参考にならないかもしれない泣。

 

新版では、可塑的なキャリア展望の記述を希望!

でも、読んでいてじわじわ感じてくるのは、やっぱり中高生はそんなに進路を簡単に決められないし、親としても決めさせ難いなあ、という思いです。

私もキャリアについては真摯に何十年も悩んできました。今もよく分かりません。ましてや子供という他人を前に、その将来を固定的に追い込んでしまうとしたら恐怖感しか感じません。

むしろですよ、キャリアの入り口だけでなく、その展開や(今はやりの)リスキリングなどについてもモデルケースを展示した方が、若者の将来展望の一助になるのでは、と感じました。いくつかのモデルケースを示すことで、読者は着せ替え人形のようにキャリアの組み立てみたいなものを頭でシミュレーションできるかもしれないと思いました。

かくいう私も哲学科→証券システムSE→証券会社営業→海外で銀行勤務、と微妙なキャリアですが何とか生きてきました。歩みの過程で得たシステム開発スキル(コーディング)や金融会計知識は今でも役に立っています。ま、キャリア双六的には成功しませんでしたが、楽しい人生は送れています。

 

 

おわりに

ということで、謂わば進路に関するオルタナティブの紹介とでも言った作品でした。

本来は、中高生の子どもたちに自分たちにの進路についてより具体性を持たせようという思いで購入したのですが、読んでいるうちそういう気持ちはなえてきました。

あと、オルタナティブ進路という観点から言えば、海外青年協力隊、ワーキングホリデーなどが取り上げられてもよかったように思います。

 

悩める中高生やその親は、得るものがあると思います。読んで余計にわからなくなる場合もあるかもしれませんが笑

 

評価     ☆☆☆

2022/11/09

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