海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年もセカンドライフ等について思索したく。

ご自身の仕事・人生を考えるきっかけに |『「仕事ができる」とはどういうことか?』山口周/楠木建

皆さん、こんにちは。

 

昨年末の話。

遥か遠い東京の本部で開催された役員様の講話のビデオをうっかり見たらこれが意外と良かったという話です。

 

私のようにアジアの辺境におりますと、本部に対しての不感症・必要以上に斜に構えてしまうことがしばしばです。こんなことしましたというメール、動画もありますので良ければどうぞ、みたいなお知らせも通常受信後即削除でした。まあ、日本と海外拠点は違うし、とりわけ田舎の拠点にとっては東京のお話はしばしば「キレイな机上の空論」にしか見えない。勝手に本部で盛り上がっててよ、と。

 

ところが。

 

年末というのは人をおかしく?するのか、その時は心にも余裕があり、冷ややかながら見てみようという気に。東京の本部で専務様二人が職員に話をされていたタウンホール・ミーティングというのを1.75倍ではあるもの、視聴してみたのでした。

あれ?なかなか面白い。

所属する部門の全体に対する売り上げ構成比。今後どの様な方向へ行きたいのか、そのために何が必要なのか。そうした部門の志向を明示する。またこの専務様らが過去にやらかしたミスとか、そういうlife experience的な話もされており、興味深かった。

で、その中で読むべき本、みたいな話題にもなり、挙げられたうちの一冊が本書。

当地の課税所得減らしの一環で年末にぽちったものです。

 

概要

最近、人文系の要素の大切さを主張されているように見える山口氏。コンサル出身ですがちょっと毛色が異なる方だと思います。氏による対談ですが、ゲストは経営論で有名な一橋大学の楠木教授。

で、テーマというのが題名の通り、仕事ができるという意味、仕事ができる人の特徴など。

ここで両者は、センスの大切さ、スキルの大切さ、この二極を明らかにしつつ、人・会社について語ります。

 

仕事ができるひと=名前で注文が来る?

本作では色々な言葉で表現されています。

「あの人に任せたらうまくいく」、そういう人。「センス」。「コンピテンシー」。なかなか言い尽くせない。二人とも端的に言葉では表現できないことを宣言笑

ただ、読んでいるとぼんやり分かります。

 

対局の言葉で、「~でない」で表現し間隙を埋めることでも表現しようとする。

とすれば、それはすくなくとも「スキル」ではない。

AIができる人、というだけで仕事ができる人にはならない。これはITとか会計とか法律、ひいては資格や学歴で言いかえても同様。

但しここで両者はスキルを否定しているわけではないです。スキルが必要なことは認める。スキルが武器として当該部分にヒットすればその攻撃力は絶大。

但し、スキルだけではだめだということ。

 

しかるに、日本人はスキルが大好き。やれ資格、やれAIやれプログラミング等。これらは大事なのは確か。でもこれ等のスキルだけではやっぱりサラリーマンは生き残ることはできない。学歴とか語学力も同じであることは言うを俟ちません。

 

「仕事ができる」人になるために

じゃあ「仕事ができる」ようになるにはどうすればよいか?

 

色々書かれていますが、印象的だった二つの事柄を挙げたく思います。

先ず、お二人が言うには「事後性」に賭けてみること。

これはある意味で非常に昭和的なやり方を洗練して言っているようにも思えるのですが、「やってみないと分からない」という事のようです。言い方を変えれば「石の上にも三年」的な話。事前にタイパとかコスパとか実効性を検討してしまっては得られない世界。そこに学びがあるとする。

この「事後性」のリスクを回避?する方法として山口氏がすすめるのが読書。このあたり、我田引水的ですね笑。

 

もう一つ、「得意」と「好き」は違うということ。

またこの「得意」を本人が認知していないことが多いということ。これに気づく体験をえること。

そういう意味では、とりわけ若い時分の自己分析とか自己評価というのはあてにならないと喝破。

関連して、顧客の視点・第三者の視点で仕事を考えられる人、すすめられるひとは、自己陶酔から逃れて仕事ができると仰られています。

 

おわりに

いやー、全く言い尽くせていません。でもいい内容、面白いんです。

お二人とも、一段「メタ」なレベルでお話をされていると感じます。

 

少なくとも、世に出回るバズワードの類は本質ではないと確信しました。あれは視野の片隅で捉えつつ、それらが勃興する社会の動きや背景を考えるのが肝要なのかもしれません。その先に、良い仕事をする条件が隠れているのかもしれません。

 

自分のキャリアに悩む方、人生を真面目に考える方々には意外に響くと思います。

 

 

評価 ☆☆☆☆☆

2025/01/12

圧倒的密着度で描く、戦争最後の日 |『日本のいちばん長い日』半藤一利

皆さんこんにちは。

そういえばこの前、勤める会社のアニュアルディナーというものに参加してきました。

一年間お疲れ様、という社員を労うようなディナーで、ラッキードロー(福引き)があったり、ナマ演奏があったりという、言わば宴会、ですね。

数年前は更に駐在さんらによる出し物みたいなものもあり、昭和な雰囲気が濃かったです。

 

私は人付き合いが悪く久々に出席しましたが、今や会社の規模も相応に大きくなり円卓の数も多く(30卓くらい?)、知らない人たちも増え、若干居心地の悪さも感じました。

 

会社の規模によって、諸々のエクササイズも変化するべきだろうな、と感じた瞬間でありました。

 

概要

半藤一利氏による作品。

8月15日正午のポツダム宣言受諾の詔勅のラジオ放送(つまり終戦)に至る一日を一時間単位で区切り、政府、軍部、天皇、民衆の動き等を緻密に綴ったノンフィクション作品。

 

圧倒的密着度

いやあ、面白かったです。

第二次世界大戦終戦は多くの本に書かれているわけで、私も幾つか読んできました。あるものはなぜ無謀な戦いに突入したのかを論じ、あるものは日本文化論へ波及したり。またあるものは南方での戦いの無残さを記録したものなど、色々ありました。

本作では、そうした第二次世界大戦終戦に至る最後の一日を一時間単位でトラックするものです。

より具体的に言えば、内閣が受諾するかどうかを決めるわけですが、攪乱要因として陸海軍相が居ます。彼らをどうやって説得するか。そして天皇に結果を上奏する。あるいは所謂玉音放送を流すにあたり、草案を作らせ、それを内閣で揉み、それをまた天皇に見ていただく。

これらは内閣での話ですが、敗戦を受け入れるにあたり、とりわけ陸海軍の反発は強い。下級将校が陸相に迫り、本土決戦・玉砕はどうなったのですが、と詰める。そうした内部での反発も、あたかも現場に居合わせたかのような密着度で描かれます。

 

例えていえば、一昔前に流行った「24」という海外ドラマのような迫力がありました。異様に24時間長いじゃん・事件起こり過ぎでしょ、って突っ込みを入れながらも楽しく見ていましたが、本作の一日も実に濃い、そして事件や紆余曲折が頻発する24時間であったことだろうと想像します。

 

ノンフィクションから歴史へ

因みに本作は1965年に上梓した作品。

終戦が1945年でしたから、その20年後の1965年には既に鬼籍に入られていた方も相応にいらっしゃったと思います。つまり、真偽の確かめようもないものがぽつりぽつりと出てくる。

当時は作品の性格は現代史というかノンフィクションのようなものであったやもしれません。でもこうやって事件や事象が発生し、そこに立ち会った人の考えや想いを記録しておかないと、歴史は理解されないまま埋もれてしまうのだと感じたものです。

 

そう考えると、ノンフィクションやルポみたいなものは、また一つ歴史的役割を担う可能性があるのだなあ、と少し考えが変わりました。

 

おわりに

2025年の今、実に80年前の事柄について書いた60年前の本を読了したことになります。

環境も考え方も異なるなか、終戦を決める、そのための決心と人を動かす力、そういう人間の意志とそれが体現するドラマを見せつける作品でありました。

教科書の一ページに一言で片づけらている歴史的事実の重みを本作に感じます。

 

評価 ☆☆☆☆

2025/01/11

連続殺人の行く末は。刑事の心の傷と、関係者の心の傷たち。人間の暗部よ。 |『あなたが消えた夜に』中村文則

皆さんこんにちは。

年末に子どもたちとZoomしておりました。すると今春高校三年になる娘が突然「留学したいかも」とつぶやきました。

幸い、付属校に通っており、まあ大学にはそのまま行けるのですが、ただでも高い学費に交換留学でしかも2年! 別途大学のホームページでこの交換留学の制度とその費用を見てみぞおちに息ができない位のパンチを食らったかと。それくらいひりつく値段。

 

ということで、妻の就職活動にも力が入ります。

これはこれで「家にいるばかりだと暇だ、ボケる」とこぼしていた妻の為でしたが、妻にとっても就職に臨むにあたりモチベーションになっている模様。

これで妻の就職がうまくいけば、老後資金と共に子どもたちの学費の確保にもポジティブ。まあしいて言えば、おいしい妻の手作り料理を毎日アツアツで食べられた私のQoLが多少下がるか!? まあでも小さいですね。

やりたいことがある、目を輝かせてやる気になっている娘を見たら、応援したくもなります。

うまくまとまるといいなあ。

 

 

久し振りの中村作品でした。刑事ものですが、なかなか良かったです。

氏の雰囲気も多分にあり、刑事ものという事でシリーズ化しても悪くないかも、と思いました。

 

こんな感じのはなし

連続通り魔殺人事件が発生。目撃情報によると被疑者は「コートの男」。捜査一課が所轄に乗り込み、合同捜査に当たることになり、所轄の中堅刑事の中島と捜査一課の若手女刑事小橋が組み、捜査に当たる。

二人は事件の周辺から次第に中心へと近づくにつれ、思いもよらない真相・人間関係・背景を知ることになる。

 

 

やっぱりノワール

中村氏の作品は総じて主人公が病んでいて、そのノワールさが一種の魅力であると思っています。

今回の主人公は所轄の刑事の中島。小学生時、片親の父親が女を連れ込むのを嫌がり、クラスの嫌われものを焚きつけて家に放火をさせた中島。しかもその友人は当の中島と同様荒れた家庭であり、小学校卒業をまたずに死亡。

その友人の影に苛まれながら事件を追います。

 

因みに、この心の闇を抱える主人公という点では『何もかもが憂鬱な夜に』の刑務官の主人公もそうでした。自死した友人から、その死の直前に手紙を受け取っており、その影響を引きずっていたりして。似ているなあと感じました。

 

何か起こしそうで起こらななかった小橋

本作、文庫で2.5cm以上はあろうかという分厚い作品なのですが、やはり目立ったのは、中島と組む小橋。初っ端からとばしてくる。

中村作品にしばしば出てくる、平気で狂っている(表現おかしくてすみません)ようなキャラで、何かやらかしそうだなあ、と思っていたのですが結果は何もありませんでした。

 

聞き込みの最中に証言する人に注意を払わず、一心不乱にパフェを食したり、所轄の上司の髪型の7:3分けがなぜなのかをしきりと気にしたり、大人気アイドル「枕営業ガールズ」(てかネーミングね)について熱心に語ったり。

 

一瞬、これは小悪魔的な誘惑なのか、とも思いましたが、最後までこのズレっぱなしな感じで終了しました。

 

展開について

一応ぼんやり記しておくと、事件は、当初考えられていたシリアルキラーという線からは外れます。

3部構成で少しずつ物語は進んできますが、そこに大きなツイストはなく、徐々に予想していなかった事実が浮かび上がるという構成。

そして、関連した人たちが少しずつ損なわれていたり、歪んでいたり、というのがいかにも中村作品らしいな、と感じた次第です。

 

おわりに

という事で中村作品でありました。私にとっては6作品目となるものでした。

暗ーい感じ、刑事もの、感情の歪み、みたいなキーワードがぴんと来る方にはおすすめできるかもしれません。

 

評価 ☆☆☆

2025/01/01

ピボットテーブルとエクセルマニュアル作業の力業に疲れたあなたに |『Excelパワーピボット 7つのステップでデータ集計・分析を「自動化」する本』鷹尾祥

エクセルユーザ、会社のEUC環境をグチる

きっと多くの社会人の方が触ることが有るエクセル。まあ便利っちゃ便利です。履歴書に使えたり、貢献評価シートとして使ったり、まああの「枠」はいろいろ使い勝手がありますね

 

ただ、何ていうんでしょうか。

こと数字の集計のお仕事をしている方は、どうにも煩雑になる、マニュアル作業が入る、ピボットテーブルがいう事を聞かない、まあ平たくいうと「うまくいかない・時間がかかる」ってことが多いのではないでしょうか。

 

加えてですよ、そのデータも、システムが多くあり過ぎてデータが散逸している、しかもデータの形がバラバラ、正規化されていない、等々多くのご不満をお持ちになることも多いと思います。かといってACCESSを導入するほどでもないし(というかそんな時間もないし)、マクロは難しいし…。結局、毎月力業でレポートをまとめる、みたいな蟻地獄のような集計作業をしている作業をしている方、いると思います。

 

そうした方には本書は朗報かもしれません。

簡単ではないのですが、エクセルで集計作業をしている方に、作業効率化の提案となると思います。

 

 

 

 

シンプル要点

では本書のキモは何かと言えば、ズバリ3つにまとめて言えば、

・エクセルでRDBを構築する。

・データ取り込み時にデータ整形をルール化する。

・必要な項目を論理的に設定(以降自動化)する。

だと思います。

 

エクセルでRDBを構築する

システムに携わる方が多い中で下手に馬脚をあらわさなければと肝を冷やしていやしますが、Relational Data Baseです。

通常DBを構築するときは、複数のマスターテーブルがあり、個別レコード(例えば売り上げデータとか注文データとか)は顧客名とか商品名はなく、商品IDとか顧客IDとかあれば十分で、これらを材料にクエリを作って必要なレポートを作る、みたいな手順かと思います。

 

エクセルでこれをやります。

まあ、主旨は皆さんもいちいちごもっとも、とご理解いただけるかと思いますが、なかなか重い腰が上がらないのもまた事実ではないかと思います。

ただ、今後の自動化のためには是非とも取り組みましょうというのが本書のポイントの一つと読みました。そして完璧でなくてもいいのです。特に最初は。

 

データ取り込み時にデータ整形をルール化する

さて、マスタテーブルなどをそれぞれエクセルに取り込むのですが、ここで一つ新機能(というか私が知らなかっただけ)。

なんと、データ取り込み時にデータの整形ルールが細かく設定できるのです。

 

これはかなり大きいと思います。

例えば取り込み時に行列を入れ替えるとか、一行目は項目として取り込むとか。

取り込むマスタの生データの形が同じだとすれば、以降、このマスタデータを上書きしたうえで、そのデータを本エクセル上で再取り込み(更新・リフレッシュ)すれば整形ルールは以前のものを使ってキレイな更新後のデータが再度取り込まれるという事になります。

 

 

必要な項目を論理的に設定(以降自動化)する

そしてこちら。

私の今までのデータ操作といえば最川下の収益データに必要に応じて列(カラム)を力業で作成し、その上でピボットテーブルを作るというものです。

でも、本書ではそれぞれ取り込んだテーブル上に論理上の列を設定することが解説されています。いわゆるDAXという構文を使って行います。

これにより、これまでVlookupやマクロで作成してた追加行がエクセル内に設定され、更にマクロを組むよりかは透明性を得られる形となります。

既存の列から計算して新しい項目を作ったりできるというのが従来のピボットテーブルしか知らなった自分からすると、この設定は自由度や柔軟性が爆上がりの目から鱗の情報でした。

 

何となくイメージとして、DBのクエリ≒ピボットテーブルで、このピボットテーブルにつかう列をDAXで合成するという感じ、でしょうか。

 

その他

それ以外にもスライサーの使い方やグラフとピボットテーブル、そしてスライサーを連結させた自前ダッシュボードの作成など、できそう・だけどちょっと(かなり!?)難しそうな内容ながてんこ盛りでありました。

勉強になります。

 

おわりに

ということで、エクセルのまだ知らない機能大全、みたいな本でした。とりわけ効率化・自動化を考えている方には一読の価値があると思います。

 

少なくとも私にとってはかなり参考になりました。ただ、マクロに逃げた方がまだ楽だなあという印象はちょっとあります。他方で透明性の確保のためには今後覚える必要あり、と判断しました。

因みに一つ気になるのは最近Power BIというアイコンがデスクトップ上に出てきたのですが、本書でぐりぐりエクセルを使い倒すのとPower BIとどう違うか、どちらかを勉強すればよいのか、両方勉強していたほうがよいのか、等々を加えて考えねばならないと思っています。

 

評価 ☆☆☆☆

2025/01/06

会話のチグハグ感から明るみになる家族の不和と不義 |『Buried Child』Sam Shepard

昨年末、当地の税制で書籍が所得税の課税対象額から控除されることを理由に、新古品の本屋で洋書をドカ買いしました。

ひゃー、思い出すだけでも嬉しい! 読むより買う時の方が刺激が強いですね。それを発売年代順に並べちゃったりして、古い順に読むという算段です。

 

で、トップバッターはこちらの戯曲です。なかなか面白かった。

 

 

はじめに

米国の俳優・戯曲家サム・シェパードの作品。1979年のピュリッツァー賞(戯曲部門)受賞。

三幕構成で、ト書きも含めて120ページの極々短い作品。だけど上演すると2.5時間くらいかかるらしい。

 

っというか、そもそもピュリッツァー賞がたくさん部門があるってのを知りませんでした。いや確かに写真とかが取り上げられているのは知っていましたが、なんと、報道、芸術、文学、フィクション関連、の4部門もあるそう。更にその下に多くのカテゴリがあって、もう良く分からん。

ja.wikipedia.org

 

私が今回読んだのは、

ピュリッツアー賞>文学戯曲>戯曲、のカテゴリで受賞したとのこと。

なお今回読んだのは改訂版ということで改定前後で相応に異なるものになっているらしいです。

 

シュールで不条理な展開。あらすじとともに。

正直言うと、いまいち良く分からなかった。

でもそれでは埒があかんので軽くあらすじを。

 

登場人物は老夫婦のDodge(酒飲み)とHalie(狂暴)の夫婦、その子どものTildenとBradley(片足)が一家。そこにTildenの孫のVinceとその彼女のShellyが先ぶれなしに訪れてくる、というもの。

 

第一幕はリビングに寝転ぶDodgeと階上にいるHalieとのいがみ合いがメイン。日曜の朝。Dodgeの咳が止まらず、Halieが薬を飲めだとか酒飲んでんじゃねえとか文句を言う。

そのさなか、雨の中、Tildenが大量のとうもろこしを抱えて帰宅。既に作付けはとっくの昔にやめたのに、どういうわけかTildenはとうもろこしを持って帰ってきて、そして皮をむき始める。このあたりは事実関係が分からず、読み進めていてちょっと気持ち悪い。

なお、幕の最後にHalieは教会へ行き、次男のBradleyが帰宅。寝ているおやじ(Dodge)の髪の毛をBradleyが散髪する。

 

第二幕のメインは孫たち。

久々の再会を楽しみにしていたVince。そして彼女のShellyにも家族を紹介しようと思って来訪したところ、祖父のDodgeは孫のVinceを識別しない。加えて、あろうことか孫の彼女Shellyに色目を使ったりやや卑猥めな汚い言葉遣いをする。

その矢先に戻ってきたTilden、さらにはBradleyすらVinceを認識しない。

困ったのはVince。必死に過去の思い出を語ったりするが、DodgeもTildenもBradleyも誰も分かってくれない。挙句、彼女のShellyも切れ始める。

Dodgeは酒くれ酒くれうるさいので、酒を飲めば何か思い出すはずと、這う這うの体でVinceは買い物へと外出する。

 

第三幕は全員集合。

いつの間にか、一日が経過。前日Vinceは帰らず、教会にいったままのHalie(おばあちゃん)も帰らず。

月曜朝、ShellyとDodgeが会話をしているなかでHalieと神父のFather Dewisが帰宅。そしてHalieはShellyを見て驚く。誰なのあなたは、みたいな。すれ違う問答の途中でVinceも帰宅。Halieは孫のVinceを認識するが、空気は変わらずチグハグで噛み合わない。

Shellyが家族を知りたいというと、急にDodgeが正気になって、語り出す。もともとは乳牛を飼育し、ミシガン湖をいっぱいにするほどの牛乳がとれた酪農家だった。子どもたちも元気に大人になった。ところがHalieが突然妊娠した。6年間も寝室を分けて生活していたのに。

生まれた赤ん坊をTildenがあやしたりしていたが、結局Dodgeがその赤ん坊を溺死させ、埋めたと告白。

 

ここから物語はカオスと化し、Vinceは半狂乱に。そしてShellyは愛想をつかして出てゆき物語の幕は閉じる。

 

結局何なのか

こうして振り返ると、家族崩壊の話かな、と感じます。その崩壊は奥さんの浮気だったと。

ちなみに、子ども二人は舞台に出てきますが、もう1人亡くなった子ども?がいるようでAnselという子どもの名ををHalieが連呼しています。このあたりの関係はうまく読み取れず。

 

Amazonのレビューなどを見ると、この「Buried Child」はHalieとTildenの子どもであり、それがVinceなのだと書かれていたりしましたが、それもまた読み取れず。

 

とはいえ、本作はト書きがとても丁寧で舞台の進行や状況・情景はイメージしやすかったと思います。

 

英語

英語は難しくないです。普通の小説以上に難しい言葉はありませんでした。

全体が短いので気合を入れれば数日で読めます。ただ、一幕のなかに区切りがないので一幕40ページくらいはまとめて読まないと意味が分からなくなるかもしれませんね。

 

おわりに

ということで、米国の戯曲、それもピュリッツァー賞の作品でした。

機会があれば、そして安ければ、実際に劇場で見てみたいですねえ。

 

演劇好きな人にはおすすめ。

 

評価 ☆☆☆

2024/12/29

 

日本語、ありました。しっかり直訳。

 

 

2024年読書を振り返る(印象に残った8選)

皆さん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

いやあ、年内にポストしようと思いましたが、無念、時間が足りませんでした。

 

わたし的2024年の最もよく撮れた写真。トスカーナの田園と朝靄(本文とは関係ありません笑)

 

さて。

そうこうする間に、本ブログも何と満5年を迎えることが出来ました。有難うございます。

 

相変わらず、読み散らかし、ジャンル不統一、自分の忘録中心、文章力向上せず、語彙も不足、レトリックなどは言うに及ばず。唯々低頭するばかりであります。

文章のヘタさについては、直したいとは思って自分のTO-DOリストにはあるのですが、プライオリティが低くて結局手につきませんでした(これを世に言い訳と謂いますが)。

 

まあ戯言はほどほどに、以下コンテンツにうつりたく思います。

 

 

 

0. 2024年の読書は150冊

昨年も書いたのですが、私にとって読書は、自分の状況を切り開く「相棒」「師匠」のような存在です。キャリア、仕事術、教育資金・老後資金の作り方、健康維持とコンディショニング、そして種々の知的好奇心への手引き、等々です。

 

2024年は当方の体調不良や入院などがあり、てっきり逝ってしまうつもりであったこともあり、150冊も読んだものの、文芸関連が96冊強と、もう娯楽のような読書が大半でした。歴史関連が15冊、仕事関連が18冊、英語の本が別途10冊と、このあたりにまだ成長への意志を微弱に感じます。

 

ただ、常に念じているのが「ケータイもつなら読書」。

そのふとした時間の浪費をなくしたい。だったら娯楽でも活字に溺れたい。冊数から察するに、多分集中していない時間が多かったという事でしょうか!? でもやっぱり日本の文芸書は面白いです。日本人でよかったと本当に思います。

 

そんなこんなの2024年の読書ですが、以下8つのトピックにて振り返ります。

 

1. 伊坂幸太郎作品、読み直しシリーズ

実は2023年は伊坂幸太郎を17作品も読んだそうです。よくやるねえ。

もうここまで来ると今年は読み直しではなくて新たに読んだ本が多いのですが、継続案件なので一応このタイトルにて。

 

で今年2024年は伊坂作品を12作品読みました。

そのほとんどは2010年代とすこし前の作品。初期の痛快・奇想天外な風合いから、やや内向的な、考えさせる作風が多かったに思います。

でも私は所謂第二期以降の伊坂作品の方が好きかもしれません。こう、何というか、人生って面白いだけじゃないし、人生も転変するもんだし、そういう意味で第二期以降の方が主人公の苦境は「分かるかも」「あるかもしれない」と感情移入できたように思います。

 

そんな中、今年読んだ伊坂作品12作のうちでもっとも印象的なのは『夜の国のクーパー』と『首折り男のための協奏曲』であったと思います。

 

『夜の国~』はちょっとファンタジー・サーガ系のテイストが新鮮な作品でした。

中世的ファンタジー世界に異世界ワープ?してきたのは妻に浮気され、勢いで家を出てきた男。異世界に迷い込むと、猫と話せるようになっていた。その後異世界の救世主となる主人公ですが、現実世界ではみじめな彼が『居るだけで』他人の役に立つという展開は筆者のメッセージを暗示しているかも!?とか思ったり。

 

『首折り男~』も連作の妙もありますが、心優しき殺人者とでもいうoxymoron的キャラが良かったす。しかも、この殺人者亡きあと、そのそっくりさん(いじめられっ子)がその「役」を踏襲するという展開も好き。

会社でも全く認められない私ですが、何かこう、元気をもらえた気がします。

 

年を追うごとに深みや含意が増しているのに、ユーモアは従来通り、そのような伊坂作品に浸かった一年でありました。

 

lifewithbooks.hateblo.jp

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今年読んだ伊坂作品の一覧:

アイネクライネナハトムジーク』『フーガはユーガ』『首折り男のための協奏曲』『火星に住むつもりかい?』『SOSの猿』『フィッシュストーリー』『陽気なギャングは三つ数えろ』『夜の国のクーバー』『陽気なギャングの日常と襲撃』『陽気なギャングが地球を回す』『ジャイロスコープ』『PK

 

2. 村上春樹作品、読み直しシリーズ

実家の本棚に残っている本を処分しようとしたところから始まったこのシリーズ。

私、結構断捨離には躊躇しないのですが、その私にあって結構残っていたのが村上作品。きっとスかした感じなのにモテる主人公みたいなのに憧れていたのかもしれません。

 

こちらも二作品書いておきたいと思います。

先ずは『国境の南、太陽の西』。

当作については一言、『奥さん本当にそれでいいんですか?』ということ。

本作の「僕」は自営業でバーを多店舗経営し、奥さんと子どもに恵まれ(そもそもお店だって奥さん側の実家のサポートがあって持てたものだ)、それなのに昔の初恋の人と浮気して家庭を滅茶滅茶にしてしまう。物語終盤で奥さんからお許しを頂くのだが、勝手にこの家庭のその後を心配してしまう。

 

現実を振り返る。40代にもなると、数少ない友人にも離婚家庭を見るようになります。本人たちの意見をどこまで鵜呑みにすればよいか分かりませんが、彼らの子どもは否応なく環境の変化に直面します。

人というものは一人では生きていけません。自分らしく生きる、人に迷惑をかけずに生きる、とは言いますが、生きているだけで大小様々な影響を周囲に与えています。

 

そういう視点から本作を読み、上記のような感想を持った自分に、改めて大人になったなあと感じました。

 

 

もう一作は『ねじまき鳥クロニクル』ですかね。

おっさんになってから世界史を勉強しましたが、ノモンハン事件などを薄っすらでも分かってから読むとより作品の深みを味わえると思います。

不思議な運命論的村上ワールド的展開に、戦争という残酷な運命、巻き込まれてしまった不条理、みたいなエッセンスをより感じ取れるようになったとおもいます。

 

lifewithbooks.hateblo.jp

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今年読んだ村上作品の一覧:

ダンス・ダンス・ダンス』『国境の南、太陽の西』『カンガルー日和』『ノルウェイの森』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ

 

3. アウトルック最速仕事術

私ですね、本当にメールが嫌いなんです。ちなみにメールより嫌いなのがTeams。インスタント・メッセンジャーなんかが導入されたおかげで仕事中に気軽に邪魔されるようになったと思いませんか?

 

・・・それはいいとして、メールです。皆さん一日あたり二桁の量はメールを打つと思います。これをどうにか手数少なく完結させたいと思って読んだ本作。

エクセルのショートカットは相応に覚えましたが、アウトルックは未踏のフロンティアでした。

 

本作読後はかなりメーラー使用の時間効率が上がったと思います。たまにショートカット使い過ぎて自分に酔っている自分がいます。危険。

 

lifewithbooks.hateblo.jp

 

 

4. Everything I never told you

本作は、米国におけるアジア+白人のミックスカップル家庭での不幸を描きます。

子どもの死亡(実際は自殺)をきっかけに壊れてゆく家庭の描かれ方は、国際結婚をした私としては他人事ではないと感じつつ読了。

社会で「異邦人」として生きている方には是非読んで欲しい一作。

 

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5. white tiger

こちらは2008年のMan Booker Prizeの受賞作品。

インドの「起業家」が中国のおエラいさんへメールを綴りつつ、自らの殺人を独白するという設定。

すこーしおかしい英語や間投詞(Ha!みたいなの)が多用され、いかにもインド人英語っぽい作為的チープさも良かった。

そして何より、独白から垣間見えるインドの階級社会とその変化、暴力的とも言えるダイナミズムみたいなものが描かれていて面白かった。

日本語訳も出ているらしいですし、Netflixで映像化もされているとのこと。悲しいくらいの人間の不平等、生まれの違いの差異に思いを馳せられるとすれば手にとってもよい作品。

 

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6. コンビニ人間

村田さんの2016年の作品。155回芥川賞受賞作品。

今更かよっていうセレクションですが、ようやく古本で手頃な値段になったことで読むことが出来ました。

本作で感じるのは、これでもかというくらいの社会での生きづらさ、不適応感、じゃないでしょうか。

コンビニ店員18年、彼氏なし、結婚歴なし、なんて今となっては取りたてて珍しいようなプロファイルでもないのですが、作品で描かれる主人公はその社会での「ズレ」とその違和感が見事に絵かがれていると思います。

 

生きづらい社会で心を殺して生き抜こうとするかのような主人公≒作者?と勘繰りつつ、どうか今後も新たな作品を村田氏に書いていただきたいと願っております。

 

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7. まんまことシリーズ

世に歴史を語り出すとおじさんだと謂いますが、更に時代ものが好みになりますと、もうこれは真性のおじさん。

まあ、年齢的におじさんで構わないのですが(むしろおじいさん、でもいいくらい)、この畠中恵氏の時代物小説を試しに読んだら実に面白かった!

主人公麻之助はだらけた人物像を装いつつ、心に想うものありっていう状況を、ユーモラスに描く本作との出会いはヒットでした。

畠中氏の作品で値ごろ感が出ているものは今後購入してゆきたいと思います。

 

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8. 新旧聖書、全章読破作戦

これももう苦行に近い。

西洋文化を理解するにはこれだ、とぼんやり思い立ち実行しましたが、なかなか終わらない涙

 

旧約のモーセ五書は終わりましたが、それからも長い長い。2025年も引き続き旧約を読み続けます。旧約が終わったら新約に進みますが、実は新約が終わったらシェークスピア読破作戦に続きたいと思っています。

まあ、息長く進めてゆきたいと思います。

 

本年読破した旧約聖書の章は以下(だらだらリンク、ゴメンなさい):

lifewithbooks.hateblo.jp

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おわりに

ということで2024年の読書、8つの切り口で振り返りました。

 

2025年はもう少し自己研鑽、修養みたいな観点から読書をしたいと考えております。

 

では皆様、良いお年をお迎えください。

 

思考術としてのメモ、自己分析にも使える |『メモの魔術』前田裕二

突然ですが、来年で50歳になります。

日本では全く芽が出ず(役に立たず)、10年前に逃げるように海外に来ました。ところが、ローカル社員ということで駐在さんの給料の1/3、また現地人ローカルスタッフ優先の国策もあり、日本人ローカル社員として昇進の目途がありません。ということで、窓際、であります。

 

でも、時は経ちます。どんどんお金が必要になります。

親の介護がそろそろ必要になってきたり、下の子の大学進学(2人の子供が同時に大学生である2年が学費のピーク)を見据え、よりお金が稼げる体制を考える必要があります。でも、同時に、キャリア志向ではなく自分がここから死ぬまで何をやりたい、どうしたい、というのを真剣に考えるようになりました。

 

とりわけ今年は脳梗塞のバイパス手術をしたこともあり、親の介護云々より、私がお先に失礼する可能性をありありと感じたこともあります。まあ手術は幸いうまくいってしまいましたが。

 

ということで、会社では頑張るものの、その話は擱いておいて、プライベートの方、自分のやりたいことできることをきちんと探るべく、本作を再読し、自己分析1000本ノックに挑みました。

 

 

改めて概要

改めて本作の内容をサマっておくと、SHOWROOMという会社を起業したベンチャー社長の前田氏による、メモを使った思考術、自己分析術の本です。

 

平たく言ってしまえば、兎に角メモを取り、相手の話を構造化し理解する、そして「要は」の形で抽象化しつつ、ビジネスアイデアとして「転用」というメモ欄を用意し、ある物事を他へ流用したり、他のカテゴリで同じことをやってみたらどうなるか、みたいなことをメモで実践しよう、というものです。

 

私の自己分析

氏は日常のビジネスシーンでメモ魔として有名らしいのですが、新卒時の上記のようなメモ術により本作添付の1000問自己分析を経て戦いに挑んだそうです。

 

「好きな色は?」みたいなふざけた質問にも、答えと理由とそれを裏付ける経験談みたいなものを用意できたということ。まあそれだけやれば大抵のところは受かると思います。

 

でも、50のおっさんはそこまで厳密にやりませんでした。

色の嗜好などは幼稚園児の時にはなかったし、他人と勝負して採用してもらうための自己分析ではないから。

で昨年の12月末からマイペースで始め、1000問答えるのに13カ月かかりました。そしてノートは36使いました。

・・・

いやあ、面白かったです。

薄々分かっていた自分の良しあし・クセ・特徴を、改めて言語化し、認知することができました。

 

1000問の後、たどり着いた自分の「人生の軸」を恥ずかしながら披露申し上げますと、

・世界を知り、味わいたい(旅行、歴史、文化、文学、音楽)

・そのために一生、成長・学習を止めない

・生きる支えとなっている家族への恩返しをし、子どもたちのロールモデルとなる

・次世代へつなぐ、貢献する

 

私ではない皆さまには「なんのこっちゃ」だとは思うのですが、私自身は結構納得感がありました。

 

私の中期経営計画

他方、自分の性格や嗜好を再認知したはいいのですが、何をやる、どうやってやる、いつまでにどれくらいやる、つまり嗜好の具体化・具現化、は手つかずです。

本作ではそのあたりまでは踏み込んでいないのです。

 

ということで2025年は自分の中期経営計画を作るために書籍を渉猟しようと思います。

表現を変えると、自分の知りたい(旅行、歴史、文化、文学、音楽)につき、どの部分を優先させ、いつまでにどのように実行するのか、これについての方法論・道程などをまとめ上げ、2026年からスタートさせたいと思います。

 

一年も道程をまとめるには理由があります。

この1000問で自分の戦略思考のなさを感じたのです。猪突というか、ふと決めて、がーっと走る。でも世界は他人との駆け引き、マーケットを見ながら進むことも必要だなと改めて感じた次第です。少なくとも、自分以外の他人の方法ややり方は十分に参考にしたい、と考えています。

 

ということで「オレの中期経営計画」は一年間かけて、時に家内も交えて作り上げてゆく所存です。

 

おわりに

以上、前田氏の作品の再読でした。再読して気づきましたが、結構自己流でノート取っていました。

 

まあでも、良かったです。物理的な日記をつけて自分の気持ちや感情の動きを振り返ることは始終していますが、今までの人生を振り返るともう少し俯瞰的に自分の特徴を認知することができます。

 

迷える子羊だと感じる方にはおすすめ出来ると思います。あ、でも、本書のベースはあくまで仕事術ですよ。

 

評価 ☆☆☆

2024/12/27

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