皆さん、こんにちは。
私、一人部下がおります(外国に居るので、日本人ではありません)。
採用して2年がたちましたが、正直成長は私の期待を下回ります。
今もって、何度も繰り返して説明していますが、全くと言ってよいほど伝わっている感がありません。最近、なるほど、と嘘をつくようにもなりました(その「なるほど」は分かっていませんね、と突っ込みますが)。
そして次第に私も不機嫌になり、顔にも態度にも出るようになりました。
これはまずいと思い上司(日本人)にも相談しました。
彼の答えは「もう見ない、というか物理的に見れない。それを皆さん分かってもらうことで、あ、これは自分がしっかりしなくてはダメだなと感じてもらう」とのこと。
長期的な成長を鑑みれば短期的な失敗を許容するべき、みたいな話でしょうか。
ただ(内部的ではありますが)顧客もあり期待値も相応にある中で、敢えて失敗させるべきか(どうせリカバリは私がやるのは目に見えています)。
悩ましい。
結論は出ないながら、この伝わらない状況をどうにか打開したいと思い手に取ったのが本作。

概要
本作、認知科学・言語心理学を専門とする今井むつみ氏(元慶應義塾大学環境情報学部教授、Ph.D.)の手による、多くの人が抱えるコミュニケーションの悩みの原因と解決策を認知科学の視点から解説した一冊。
言葉が「伝わりづらい」ことを前提とし、伝達エラーの仕組みを分析。特に、人の思考や知識の枠組みである「スキーマ」が伝達において重要な役割を果たすことを示し、分かり合えないことを認めた上でコミュニケーションの本質を理解し、よりよくするための具体的なヒントを提示するもの。
えー、ショックなんですけど
なんというか、いろいろとショックでした。
先ずもって、『話せばわかる』は幻想、と、私の希望を一刀両断(泣)。
氏によると、(完全なる不可知論とまではいいませんが)人間は違った「スキーマ」(思考システムのようなもの)を持っており、そもそもが話をしても伝わっているのかどうは分からない、と。違う色メガネをそれぞれかけて同じものについて語るようなイメージでしょうか。
例えば、外国語というのはまさに全く異なったスキーマであり、当然日本人は外国人と素では会話はできない。あるいは世代間ギャップなんて言いますが、同じ日本人でも話がかみ合わない。あるいは男子と女子でも話がかみ合わないことがある。これらはすべて「スキーマ」の違い、ということができる。
もう、粗々に結論をまとめると、コミュニケーションにおいて必勝法はなく、手探りで工夫と努力を重ねるしかない、と。スキーマがキーなので、相手の立場(スキーマ)に配慮して話す、また相手にも我々(ないしカウンターパート)の立場(スキーマ)に立って話してもらう、とのことでした。
なお、外国で働いたことのある方の経験談として、間違えようのない明確・明白なマニュアル(やチェックシート・手順書)を用意する、というのがありました(移民が多くて多様なレベルの方が職場にいらっしゃったら確かにそうですね)。まあそうですけど。。。
家内とは永遠に分かり合えない!?
でまあ、これを読んで、仕事そっちのけで自分のプライベートで頭くらくら。
うちは国際結婚、家庭内言語は日本語です。
まあ、家内の日本語はうまくないし、外国在住でどんどん劣化していきます。うすうす分かってはいましたが、一生理解しあえないかもしれない、というのを専門家から言われ改めてガーン、と。
多分風邪だろうなと、ごまかしながら頑張ってきたけど、熱を測ったらやっぱり風邪だった。それが分かったらもう頑張る気が失せた、みたいな。
ただ、これは言語もさることながら、個々人でスキーマが違うというのだから、正確には言語の違いによらないはず。言語の違いは一番分かりやすい例ですがね。
家内とは知り合ってもう30年も経とうというのに、やっぱり日々ぶつかることがあり、これが今後一生続くと思うと、昔流にいうとorz。
逆に、未だにこじれた母親との関係も、スキーマの違いに私は全く配慮しなかったと考えれば、これもまた納得。
自立した部下、の理想を放棄する!?
あと、絶賛くすぶり中の部下。
彼女とは、これまで禅問答のような会話ばっかりして、結果として結構イジメてしまいました。
私も同じ局面を経験し苦しかったのですが、その苦しみの先に「悟り」ではないですが、やっぱり経験と思考・試行を経て分かったものをメンターに与えて貰えたと今でも感じるのです。私も彼女には「悟」ってほしい。故の、考えてほしいがための禅問答。
でも、本作のミスコニュニケーションへの回答の一例は「明白なマニュアル」。
そうかあ…。
先ずもって、そういうものを作る手間。めんどくさ、と、ため息がとまりません。
また、部下さんの考えないで指示に従えばOKというメンタリティが気に食わないのですが、これだと一生彼女の成長が見込めません。
スキーマの違いを克服するために、敢えて成長を促さない(けど意味が通じる)やりかたをするべきなのか。
確かに前からそれも考えていました。もっとプロセスを細分化して、明確な手順を設定し、考えなくてもミスしない。そういう方法。
ただ、これだと「何故手順が変わったか」「イレギュラー事項の意味合いは?」みたいなものに極端に弱くなります。そしてきっと、仕事は断然詰まらなくなると想像しています。
それとも、言われたことをやるだけの詰まらない立場に追い込み、奮起を促すとか?
もう、どうすればいいんだよー。
おわりに
とういことで、認知心理学ついての今井氏の著作でした。
科学的知見の最前線の内容を当然のごとく提示されたのですが、救いを求めていた私は、その結論に失望を隠せませんでした。
同じような不可知論的な議論をウイトゲンシュタインやフッサールがやっていたと思いますが、哲学者は「分かり合える」希望・理論を捨てていないようにも見えました。科学は厳然としておりますね。とほほ。
あと、家族なら、それでも頑張って分かり合いたい。会社だけの関係でどこまで力を尽くすべきか、悩ましいところです。
評価 ☆☆☆
2025/12/07