ここ数年、純文学系の読書は子どもたちに読ませるための下読みでありました。
今般、下の子も高校に上がり、もはや言うことを聞くような距離にもおらず、そうした下読みは一旦ストップ。
では何を読むかというと、Wish Listに入っていたけど長らくそのままになっていた本です。
今回の本は毎度お世話になっているブックオフで二冊で220円で購入、あまりに面白く一日で二冊読んでしまいました。
もう少しゆっくり読めばよかったかな!?
ひとこと
今更感ありありですが、初めて中村文則氏の作品を読みました。
いやあ、面白かった!ノワールっていうんすか?犯罪小説系ですが、没入してしまい、二作連作で一日で読んでしまいました。
抑揚の効いた表現、微熱感あるノワール
『掏摸』『王国』とも、非常に静かな、それでいて犯罪の起こる熱感が筆致に表われており、非常に引き込まれました。ハードボイルドというほど劇がかってもいないし、所謂純文学というほど流麗な表現というわけでもないと思います。本当に冷静に、熱さが伝わってくる書きぶりに非常に好感を持ちました。
内容ももちろん良かったです。
『掏摸』はタイトル通りの作品。お金持ちからしかすらないスリグループも、いつの間にかとある黒幕の下で働くことに。その神がかった絶対者の下でしのいで生きるスリの命運を描きます。
『王国』は前作『掏摸』の兄妹版と言われています。こちらも見ての通りですが、主人公は女性。言わば美人局的なワルです。こちらも今を生き抜くための犯罪でその場をしのいでいたものの、例のとある黒幕に目を付けられ絶体絶命に。王国という名の通り、その絶対的権力の下での無力感・無防備感がぎらぎらと描かれています。主人公ユリカの饒舌すぎるセリフが逆に彼女の焦りを演出しており、臨場感あふれるセリフであったと思います。
おわりに
ということで中村氏の作品を初めて読みました。
筆致がなんというか好きです。印象を例えると「アクアリウム」「夜」「バー」みたいな感じです。
本作、犯罪ものが好きな方、夜の街が好きな方、それでも美しい言葉遣いが好きな方などには楽しんでいただけると思います。
評価 ☆☆☆☆
2023/07/17