海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年は世界史と英語を勉強します!

前半はやや鼻につくも、後半は熱いインテリジェンス論―『インテリジェンス 武器なき戦争』著:手嶋龍一、佐藤優


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本の概要

諜報活動(インテリジェンス)に関する入門書。インテリジェンスの概要と、政治や外交での利用のされ方を実例ととに紹介。対談形式であるため、書きぶりはライトで読みやすい。著者は元NHKワシントン支局長で現在作家の手嶋龍一氏と、元外務省職員で鈴木宗男事件で逮捕された経歴をもつ佐藤優氏。

 

感想

世界を陰から動かす英米!的な陰謀論を好んで読むうちに、ここまで流れ着いてきました。

 

購入はしたものの、対談形式の作品は得てして浅薄になりがちであるため、若干の心配があった。前半は互いに褒め殺し的な様相でやや辟易したが、後半の対談ではいかに日本でインテリジェンスを養成するかを熱く語っており、その熱量が素晴らしく感じた。

 

インテリジェンスの意義

本書ではインテリジェンスについて簡潔に説明を施している。外国での情報収集を中心とした「諜報」活動、本国で外国からのスパイ活動の防止を意図している「防諜」、このほかにも「宣伝」「謀略」の4つの分野をインテリジェンスとしている(P.120)。

 

このような活動は、世界各国が行っているものある。米国ならばCIA、英国ならばMI5、そして旧ソ連であればKGB。当然のことながら、その意義というのは国家指導者の意志決定に使われるものである。またその背景としては国益のために活動がなされているという事だという。普通に納得しつつ読みました。

 

世界情勢の読み方

インテリジェンスの世界が奥深いと感じるのは、世界のどこの国であれ、諜報員が居るその地の文化や歴史・現在のキープレイヤーたちの思想や生い立ちなどを踏まえた上での情報を諜報員が提供できることであろう。当然のことながら、このような包括的な理解がないと政策決定は大きく見誤るのは想像に難くない。きっとそこらの大学教授よりもその地域の文化や歴史に精通していることなのでしょう。

 

他方一般マスコミの報道は表層の事実(事実でないこともあろうが)を伝えるだけであり、我々が接するニュースの「真の」理解は、理解には程遠いことであろう。

 

逆に言えば、世の中の出来事の意味というものは多くの事象の因果の中で理解するものであり、偶然とか間違いという言葉は理解を誤りそうな気がする。インテリジェンスの技法の知的側面は、そうした表層の理解に陥らないだけの世界理解なのではないかと一人ごちている。

 

日本にインテリジェンスは必要か

後半では日本での公的なインテリジェンスの必要性が述べられる。個人的にはこうした機関には賛成である。諜報というと、イメージとしてはミッション・インポッシブルとかハリウッド映画で出てくるCIAの悪者というイメージがある。しかし、佐藤氏が幾度となく繰り返すように「国益」のために動いている限り、インテリジェンス機関は国家の意思決定のためにあったほうがよいと思った。

 

社会人にとってのインテリジェンス

さて、本作品の内容は一般社会人には一見遠く感じられる。しかし私は、社会人こそインテリジェンスの考えは必要ではないかと感じた。私はインテリジェンスとは一言で言うと「良く理解すること」だと考えている。外交であれば首相や官僚、文化や歴史などを良く知ること。営業であれば、顧客の状況や財布の状況だったりキーパーソンの理解。私のような子会社の平社員なら、子会社トップの考え、地域統括本部の考え、本社の考えなど。つまりこうした要素にアクセスできないとよりよい判断がしづらいのである。

加えて筆者はハードナレッジ以外にも人の気持ちや思いなどもしっかりと汲み取る努力をしているように見えるが、このあたりに配慮していることも社会人には示唆に富む。

 

終わりに

改めてリキャップすると、トピックが極めて限定的なため、なかなか人には薦めづらい。ただ、インテリジェンスとは人の機微を理解しないと務まらない仕事でもあり、その点では一般サラリーマンも大いに参考になる点がある。その他、政治・外交・国際情勢などに関心のある方にはおすすめできそうです。

 

評価 ☆☆☆

2020/06/13

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