海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

チームを作り、ビジョンを語り、コモディティ化せずに生き残れ―『君に友だちはいらない』著:瀧本哲史


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著者について

 元京都大学客員准教授。投資家。麻布高校東京大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニー、その後日本交通へ。2007年より京都大学産官学連携センター客員准教授。2019年死去。(以上殆どがWikipediaの受け売りです)

 

 感想

 かつて「君たちに武器を配りたい」という不思議なスパイシーな本を読みました。経歴や本の語り口が非常に印象的な方でした。2020年のNHKクローズアップ現代「2020年の世界を生きる君たちへ ~投資家 瀧本哲史さんが残した“宿題”~」に関する記事をネットで見て、実は彼がすでに亡くなっていた事を知り、余計にどんな人なのか興味が湧き、本書を手に取りました。

 

世の中は厳しい競争社会。この荒波の乗り切り方を伝授

 本書の内容は、私の理解するところでは、厳しい資本社会での生き残りの方法についての指南であると思います。またこの厳しさの中で成功をつかむためのチーム作りを語っています。

 

 筆者の基本的スタンスとしては、現実の競争社会が非常に厳しい、いわゆるレッドオーシャン的な理解でいるのだと思います。あらゆる既存の資格や地位はグローバルな競争の中でコモディティ化し、価格競争の渦に飲み込まれる。その中で値崩れをしない価値を生み出す方法が彼の言う「チーム」作りという事だと思います。

 

 極々簡単にまとめるならば、要点は三つ

  1. 「秘密結社」の結成。バックグラウンドや個性の異なるチーム作り(『7人の侍』)
  2. ネットワークの見直し及び構築。
  3. チーム作りにあたって、ビジョンを持つこと・語ることの大切さ。

 

 こうやって合目的的なチームを結成し、コモディティに陥らず、世の中で事をを成し遂げよう、というとてもアツい内容の本です。読んでいただればわかりますが、こうするべきという命題を語る一方、その言説の背景に併せて過去の事例や物語・映画・現実の事象等々を使い説明しており、非常に分かりやすい構成となっております。

 

あなたのネットワークはあなたの鏡

 作品の本筋からはすこし逸れますが、筆者のものの見方で2点印象的だったことがあります。

 一点目はネットワークの「棚卸」についてです。自分のネットワークは自分のstatus quo

の反映といえる、と捉えています。

 

 ネットワークを構築する前には、まず今の自分が持っているネットワークの「棚卸し」をする必要があるだろう。

・自分が頻繁に会っているのはどういう人か。

・たまにしか合わないけれど、自分にとって重要な人はだれか。

・どれほど多様なコミュニティに属しているか。

・自分の近くにいる人で、別のコミュニティのハブとなてくれそうな人はいるか。

この4点を確認することで、今の自分のネットワークがどういう状態にあるか、理解することができる。その結果が望ましいものであれば、さらに良い方向に伸ばしていけばいいし、「変えなければならない」と思うのであれば一刻も早く適正化するべきだ。先述したように、ネットワークは「自分がどういう人間か」できまる。頻繁にあっている人が客観的に見てロクでもない人間であるとするならば、自分自身がロクでもない人間になっている可能性が高いのだ。(P.170-P.171)

 

 最後の2文は胸に突き刺さります。自分の周囲の環境は自分で作っているということですので、自分の周囲から自分を理解することができます。それを彼はネットワークという人間関係で説明しているわけです。このネットワークが充実していないとすれば、その人自身の活動が充実していない証左だとも思えます。私も会社や妻の文句を言う前に自分が変わらねばなりません笑

 

右翼とは貧しい人の代名詞!?

 もう一つ印象的だったのはナショナリストには貧しい人が多いと喝破している箇所。

彼らはグローバル化する世界の中で、自国でしか生きることができず、自国にとどまらなければ生活できない。そのため自分たちの「取り分」が減ることを極度に恐れて、自己を守るために他者を攻撃するのである。(P.310)

 これは地縁血縁など、自然発生的にできてしまう集団ではなく、あくまで合目的的な集団=チームを作るべき、というくだりで述べられています。他者を攻撃する人の本質が非常に簡潔に表れており、なるほどと思いました。

 右翼の方は一定程度常に存在するのでしょうが、これがマジョリティになるとすればこれは国そのものが貧困に陥っていると言えるのかもしれません。本作中でもワイマール帝国の例示がありました。日本の右傾化をつとに感じますが、これが日本の貧困を表しているのではないかと怖くなりました。

 

おわりに

 リキャップしておきます。

 この本は、若手にかかわらず、中年以降の方にも生き方の参考になる本だと思います。もちろん、本作はは基本的には若い方向けに書かれた作品です。しかしながら、コモディティ化しつつあるのは若手にかかわらず、すべての社会人・学生が同じ状況にあります。ヴィジョンをもって仲間を巻き込み物事をやり遂げるという図式は、中年以降の方にも参考になると思いました。

 なお、こうしたチーム作りも、論理的には、皆がやれば陳腐化するわけですが、これを成し遂げるのはそこそこ難しいので陳腐化するまでに相応時間がかかると思います。従い、チャレンジする価値はある方法だと思います。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/01/13

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