はじめに
塩野氏による歴史絵巻三部作の最終作。
緋色のヴェネツィア、銀色のフィレンツェ、に続き、黄金のローマ、であります。
もし本作を初めて手に取った場合は、悪いことは申しませんので、是非いちから(ヴェネツィア)から読むことをお勧めします。
歴史的深みにやや欠けたか
主人公はヴェネツィアの貴族マルコ・ダンドロ。今回もまた高級遊女である彼女のオリンピアと一緒です。
ただ、何というかマンネリ感は否めません。
これまでの塩野氏のあとがきによると、架空の人物であるマルコとオリンピアを使い、むしろ「都市を描く」ということでありました。これにはなるほどと感じました。
ヴェネツィアでは、トルコを相手にした諜報戦やヴェネツィア共和制の政治の仕組みが巧みに描かれており面白かったです。
フィレンツェでは、これまたメディチ家の家門内の政治闘争、そしてイタリア人であってもヴェネツィアとフィレンツェで考え方が違うという地方人気質の描き方が面白かったです。
そして今回のローマ。確かにローマは描かれているものの、どちらかというと架空の人物であるオリンピアに焦点が当たっていたように思います(彼女の隠し子問題やモトカレの存在など)。これはこれで面白かったのですが、歴史的な深みは前作2作よりは感じられなかった気がします。
ローマといえば、やはり法王庁ですが、この内部のドロドロさ加減にフォーカスすればもっと面白かったかも、と思った次第です。
気になる表紙
そして、自然と目がいってしまう表紙の裸婦。
これはイタリアの巨匠ティツィアーノによるもので、「ウルビーノのヴィーナス」として有名(ウフィツィ美術館収蔵)。とても肉感がありますね。Wikipediaにも「官能性をより追求した」とありました(そうやって表現するのか。危うく「エロい感じ」とボキャ貧表現をしそうになった)。
因みに上記wikipediaでは本絵画が後のマネに影響を与え、ほぼ同一構図の「オランピア」という作品に結実したことが記されています。塩野氏が高級娼婦としてオリンピアという人物を描いたことも決して偶然ではない気がします。
おわりに
ということで塩野氏のルネサンス歴史絵巻三部作の最終作でした。
マルコとオリンピアの仲は悲恋で終了したのですが、個人的には区切りがついてすっきりしました。ちょいドロドロしたところも個人的には好み。ただ歴史ネタはもう少し欲しかったですね。
それと、ローマの街の様子は沢山描写されています。テヴェレ川沿いやアッピア街道を散策される機会がある方は是非本作を片手に!少し旅行が楽しくなるかもしれません。
評価 ☆☆☆
2024/04/03