海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

痛快コンゲーム的銀行強盗 |『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎

はじめに

これまた十数年ぶりに読んだ本作。

初期伊坂作品らしい、エンタメ性・疾走感・そして洒脱なセリフとキャラ構成、と全てが光る作品でした。面白かった。

 

あらすじ

4人の出自や性別・年齢のばらばらな男女が銀行強盗を働くというもの。

夫々の特徴を生かして、華麗にかつユーモラスに強盗を働き、かつ誰をも傷つけないという、ある意味善良な強盗団の話。

そしてさる機会に、この強盗団がこともあろうか、他のワルに強盗されるという結果に。背景には何が?そしてどうやってやり返すのか?

 

他作品のプロトタイプが本作に

初期の作品から読み進め、改めて本作を読んでみると、他の作品と類似点に気づきます。

別の言い方をすれば、本作に以降作のプロトタイプが見え隠れしていた、とも言えます。

 

例えば、本作の強盗団の紅一点雪子の息子、慎一。彼の悩みに強盗のヘッド成瀬やその幼馴染の饗野が応じる様子は、「オーファーザー」での高校生由紀夫とその四人の父親たちとの関係を彷彿とさせます(頼りにならない大人たちと子ども)。

 

また、銀行強盗とういモチーフですが、「チルドレン」で陣内(はちゃめちゃ)・鴨井(陣内のお世話?)・永瀬(盲目)が偶然居合わせたのが、これまた銀行で強盗に押し入られたシーンでした。ちなみにそのシーンの詳細は覚えていませんが、ひょっとしたら本作の強盗シーン(饗野の自信満々の演説シーン)などが描かれていたかもしれません(手元に本がなく確認できません。すみません)。

 

もう一つ。本作銀行強盗のグループとよりワルなグループの対決という、言わばアウトロー vs アウトローという構図は、空き巣の黒澤が悪を懲らしめるかのように空き巣を働く「ラッシュライフ」を想起させました。

 

おわりに

ということで初期の伊坂作品の再読でした。

活劇的に生き生きと人物が動く絶品エンタメ小説であったと思います。

一番初めに読めば、以降の伊坂作品の部分部分にその似姿を認めることが出来ると思います。逆に多くの伊坂作品を読んだ後に本作を読めば、それぞれの作品のプロトタイプの人物像が本作で試行されていることに気づくと思います。

 

いずれにせよ、一言、痛快エンタメ小説でありました。おすすめ。

 

評価 ☆☆☆☆

2024/03/31

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