はじめに
齢90にて2021年に逝去された半藤氏。
いつかはその著作を読んでみたいと思っていました。そしてこの度某中古本屋で裏表紙も見ず、タイトルだけで購入した次第です。ちなみに本作は著者が88歳の時に出版したものだそう。すごいですよね。
第一印象は・・・
作品そのものの第一印象はちょっと残念、あーあー、という感じ。
というのも、本作はこれまでの著作集の良い部分などを部分部分取り出して、編者が「リーダーとは」とか「漱石について」などと章立てをしたものゆえ。
個人的には誤った理解でも良いから「直接」著者を感じたかった。編者の介入なくダイレクトに著者のエッセンスを吸いたかったのです。まあ選んだ自分がダメなんですが・・・。
良い部分も
とはいえ、とはいえ。
やはり瞠目するものが幾つもありました。
まず、日本語が骨太で美しい。
折々に俳句などを挟み、風雅でかつ洒脱な文章を書かれる方。筆者は歴史探偵というだけあって色々と博学なのですが、言葉にも歴史があります。どうやら万葉の時代はもっと荒々しく情熱的だったとか、そういう話にもへえーとなりました。日本語の起源や、万葉の世界、このあたりもいつか攻めたいところです。
次に良かったのは、明治の文豪の描写。
永井荷風の戦前戦中の徹底した戦争反対とその孤高ぶり、漱石の「学者ではなく著者として100年1000年単位で名を遺す」決意。
このようなことを読むにつけ、これは荷風も漱石も読まねばならないなあ、と思わせるのです。
そして最後に反戦への思い。
やはり半藤氏は戦争経験世代なので、日本人という集団になると流されやすい国民(どこもそうなのかな?)がすっかり戦争を忘れてまたぞろ9条を捨ててしまうのではないかと危惧。
これは深く膝を打った点でした。
マスメディアやYoutubeもそうですが、お金という資本中心の世界で動いています。正しいことを報道するよりも、より視聴者・スポンサーが集まる見せ方をするわけです。自分が豊かになり、自分が気持ちよくなるために。
例えば戦争主義者のインフルエンサーが政治家、よしんば首相になったらどうか。「いやあ、それとこれとは違うでしょ」というのが常識的な反応。でも私自身は自信を持てません。戦争を経験していないから。
どれほどあっという間にあれよとあれよと戦争へと突き進んだのか、半藤氏は体感していたのです。このあたりもまた興味深いポイントです。
おわりに
ということで初半藤作品でした。
自称歴史探偵という半藤氏ですが、歴史が好きになりつつある私には、半藤氏は逝去した年の離れた憧れパイセンみたいな感じ。でも全然堅苦しくない。半藤氏が好きだという永井荷風や夏目漱石含め、今後読んでみたいと思います。
評価 ☆☆
2024/04/11