海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

嗜好は崩しがたいが一読の価値あり-『なぜ「牛乳」は体に悪いのか』著:フランク・オスキー

 

一牛乳信者です。読後は、やはりそうなのかなあという複雑な心境です。憧れていた人にダークな裏があったような感覚です。

 

ただ、本書の記述は全般的にまとまりにかけており、これを読んだだけではまだ牛乳信者をやめる気にはなりません。

 

そのような読後感ですが、具体的に本書で印象的であったのは以下の二点です。

 

下痢をしてしまうのは、ほとんどの日本人が乳糖不耐だから

まず、牛乳を飲んでも多くの人がおなかを下してしまう乳糖について。いわゆる乳糖不耐。

世界中の多くの人が乳糖を分解することができず、日本人の乳糖不耐率は85%とあります(P.25)。その他多くのアジア系やアフリカ系民族は7割-9割方は乳糖不耐とのことです。知りませんでした。

 

またチーズやヨーグルトは発酵により乳糖が分解されているため、きちんと吸収されるらしい。よかった、チーズもヨーグルトも大好きなんです。

 

また牛乳は高脂肪飲料(飽和脂肪酸)であることから、飲み過ぎにより大腸がん・乳がん前立腺がんを引き起こす可能性があるということです。

 

まとめればこういう事でしょうか。日本人なら、飲んだら大抵下痢になるし、下痢にならなきゃ高脂肪食を促すことになってしまう。悲しいことです。

 

ミルク業界のマーケティングが怖い

もう一つ、牛乳が供給されるマーケティング環境について。

陰謀論的に本書を読み解くと、米国の白人の乳糖不耐率は僅か8%という事実は大きい(P.25)。当然企業としてはマーケット拡大のために白人以外にも売りたい。その結果、乳糖不耐の非白人にも健康食として売ろうとする。時代とともに高脂肪であることが喧伝されるが、これへの対処として脱脂粉乳低脂肪乳が開発され、販促は続く。

加えてイメージ戦略。牛乳はカルシウム豊富というマーケティングが行われるが、そもそも牛乳に含有されるカルシウムはリンと結びつき吸収されづらい。それでも給食に毎食出るくらい牛乳は体にいい飲み物としてみんなに信じられている。牛乳にカルシウムが豊富なのは嘘ではないが、実際は体に吸収されづらいのにさも体に良さそうに売られている点は逆に不信感を呼び起こす。

 

まとめ

本書の内容から判断すると、アレルギーがない限りは牛乳の多飲は避けたほうが良いのでしょう。また飲むときは、工業製品ではなくできれば地のものでかつ清潔なものを選ぶよう心掛け、顔の見える酪農家から買い、嗜好品として品質の高いものを低頻度で頂く。そうすれば悪影響も少なそうです。

 

考えれば、人間でも赤ちゃんは1年程度を経て離乳し、母乳から取れない栄養素を食品から摂取するという事でしょう。それを他の動物の乳を水替わりに飲めば、確かに体には良くはなさそうな気もします。乳はそれだけ特別なものだと思います。

 

皆さんはどう感じられたでしょうか。

 

評価 ☆☆☆

2020/04/16

なぜ「牛乳」は体に悪いのか

フランク・A.オスキー/弓場隆 東洋経済新報社 2010年08月19日
売り上げランキング :
by ヨメレバ

個人的にあまり好まない書き方(ごめんなさい)-『2022-これから10年、活躍できる人の条件』著:神田昌典

 

 

私は彼が苦手である

マインドマップは好きですが、著者のいわゆる成金的雰囲気があまり好きではなくビジネス系の本は目を通したことがありませんでした。が、かつて私がくすぶっていた時代に本屋で平積みになっている本作を購入しておりました。今回、本棚の整理もかねて再読してみました。

 

結論は表題に書いた通りですが、個人的には好きではありません。

 

一貫性がやや欠けるか

誤解を恐れずに述べさせて頂くと、本書は神田教の宗教本、という感じの書籍です。一部は確かに納得しやすいことを書いています(外国語の必要性、外国語を用途を限定して深く学ぶ等)。しかし、どうにも検証しようのないことだったり(人生7年周期説・世界70年周期説)、情緒的なことや(日本がクリエイティブかつ慈悲にあふれた国になる)、やや荒唐無稽に見えること(会社というコンセプトがなくなる)が同列で書かれていると、どう読めばよいのかと悩んでしまいます。或いはすべて信じて読める方が活躍できる人なのかもしれません。

 

他にも周期説についても複数個所で力説されています。周期的に大きな事件や事象がおきるというものです。しかし、なぜこういう周期が発生するのか迄は深堀しておらず、過去を振り返り事例や事件を当てはめ、ほら、俺は周期発見したぜ、と言っているだけに見えてしまい、ここもどうにも読む気がそがれてしまいました。

 

がんの部分はびんびん来るも、、、

しかしながら、一点だけ感動的だった箇所があります。自身ががんに罹患したという部分です。ここは非常に心を打つ記述でした。どれだけショックだったか、そして家族(妻)を思ったのかという事がビビッドに伝わってきました。ここでは彼の本心を垣間見た気がしました。

 

他方、完治した今上梓された本書は、どうにも浮ついた雰囲気で、誰を対象にして書いているのか、本当にその対象とした人ことのことを思って書いたのかが分かりませんでした(私が感受性が低すぎて感じ取れない泣)。過去を振り返っていましたが、こんなにイケててでも失敗してでも気づいて今がある俺ってすごいよね!?という具合に、記述が反省談から自己顕示に遷移しているようにも感じてしまいました。

 

まとめ

きっとこの本を手に取る人は、何か自分が変わらなければいけないと危機感を覚えている人だと思います。もしそう思って何かを変えたいのならば、この本よりも素晴らしい自己啓発本はいくらでもあると思います。滝本哲史氏でも、吉野源三郎氏でも、水野敬也氏でも本作よりおすすめできると感じます。

 

評価 ☆☆

2020/04/04

2022-これから10年、活躍できる人の条件

神田昌典 PHP研究所 2012年02月
売り上げランキング :
by ヨメレバ

生きている人は、みんな、自分の力で歩いて行かないといけない-『星のかけら』著:重松清

星のかけら (新潮文庫)

星のかけら (新潮文庫)

  • 作者:重松 清
  • 発売日: 2013/06/26
  • メディア: 文庫
 

 

 

ストレートに書くとちょっとダサいけど、本作のテーマは、まっすぐに素直に生きることの大切さ、だと思う。

もちろんまっすぐに生きるなんて、言うほど簡単ではない。同調圧力が強かったり、目立つことを嫌がる日本では、なおのことそうかもしれない。

 

しかし、死者が思い残した後悔から比べれば、この世の難しさはまた違った見え方になるのだろう。生きている限りはチャンスはある。後悔する機会あるというだけで死者からすれば羨ましいのであろう。

 

小学六年生のユウキ、幼馴染のエリカ、塾の友達のマサヤとその兄で引きこもりのタカヒロさん、そしてユウキをいじめているヤノ。わずか小学二年生でこの世を去ったフミちゃんが、子供たちの絡み合った糸をゆっくりほぐしていく。

 

・・・

 

著者の重松清は小中学生が主人公の小説を多く書いており、小学生向け教科書のみならず、中学受援や高校受験でもしばしば出題される。いきおい、子供向けと判断してしまうかもしれない。しかしながら、生きるということは、どの国でも、どの人種でも、どの世代・どの年代であっても共通であり、普遍的なテーマであろう。その意味では寧ろシニカルな大人にこそ読むべき作品だと感じた。瑞々しい気持ちになれる一冊。

 

評価 ☆☆☆

2020/04/14

星のかけら

重松清 新潮社 2013年06月26日
売り上げランキング :
by ヨメレバ

二度読みして味わいたいエンタテイメント-『花の鎖』著:湊かなえ

花の鎖 (文春文庫)

花の鎖 (文春文庫)

  • 作者:湊 かなえ
  • 発売日: 2013/09/03
  • メディア: 文庫
 

 

自分は割と、はまると一つの分野や一人の作家に入れあげる方かもしれない。

湊氏の作品を最近好んで読んでいる。きっかけはYahoo!の記事で同氏がこれだけヒットを飛ばすのに絶妙に直木賞に引っ掛からないことをネタにした記事であった。

 

そんなイヤミス大家の湊氏。実は本作はイヤミスではありません。むしろすっきり爽やかな終わり方。まるで恩田睦氏を思わせる作風。

 

ネタばれになりそうなので、表現が難しいのですが、彼女一流の母と娘をモチーフにした物語展開。途中までは、分かりづらい展開だなと思っていたが、実はそれこそが物語を面白くしている所以であるのは読み進めていくうちにわかります(逆に物語の中盤で気づいてしまったら、その後の展開がある程度読めてしまうのは残念)。この複雑でわかりにくい部分が徐々に分かる感覚は皆さんにも味わって頂きたい。

 

そして、最後の加藤泉氏の解説がまたいい。タイトルにも書いた二度読みを勧めています。・・・なんて書くと解説から読む方がいらっしゃいますが、ぐっとこらえて先ずは一読頂きたい。そして解説を読み、ああなるほどと感じて頂けたら是非再読して頂きたい。きっと楽しめると思います。余り他に類を見ないエンターテイメント小説でした。内容もさることながら構成も含め私はうなってしまいました。

お勧めです。

 

評価 ☆☆☆☆

2020/04/11

花の鎖

湊 かなえ 文藝春秋 2013年09月
売り上げランキング :
by ヨメレバ

実は「生き方」を問う本-『医学不要論』著:内海聡

医学不要論 (廣済堂新書)

医学不要論 (廣済堂新書)

  • 作者:内海 聡
  • 発売日: 2018/03/28
  • メディア: 新書
 

 

医療がビジネス化し、人を治療するよりも寧ろ人に病気を与えている。投薬もワクチンも、輸血も、手術も、実は大きな利権と絡んでおりしかも効果は大きくない。身の回りの製品や生活スタイルは企業側の論理で動いており、消費の結果病気になるような環境に置かれている。

 

一見するとそのようなトンデモ本のように見えてしまうかもしれません。しかし、この本は決してその手の本ではないと思えます。それは、他のトンデモ本が、半ば宗教チックな絶対的な正しさを説いたり、あるいは諸悪の根源をたった一つの原因に還元したり、ある一つの食材ですべての病気を解決などと説くのに対し、本書は自己批判や自己否定を含んだ上で展開されているからです(この教えは信じてはならない、と一見自己否定から入る新興宗教もあるかもしれませんが、そういうことを言っているのではありません)。

 

筆者のスタンスは、医療技術の発達やその貢献はゼロではなく、正当に認める部分を認め、ただしそれ以外のところは医師として或いはジャーナリストとして徹底的に調べ、批判する、というもの。誠実な対応だと思います。

 

本書を批判する人は「ではどうやって生きていけばいいのか。医療なしで生きるなら、お年寄りは死ねというのか」などと言うかもしれない(すぐに極論に走る方、沢山いらっしゃいますが)。直截的な返答はイエスなのかもしれない。でも筆者が読者に投げかけているのは(お年寄りも含め)自ら考え、自ら行動するという事に思えます(もちろん今のうちにですが)。また筆者は緊急的な医療(命にかかわるもの)を否定しているわけでもありません。

 

自ら考え、調べ、行動する。

それは医療だけではなく、あらゆることでも言えると思います。あなたの人生をどう生きるかはあなた次第、という事なのだと思います。医療について、筆者はここまで情報を共有したわけです。どのような医療人生を送るかは私たち自身が選び取る問題なのだと思います。

 

その文脈から言えば、当書は反医療の本であると同時に、どう生きるかという自己啓発的な部分を多分に含む本だと思います。現代医療に疑問を持つ方、病気がちな方、身内に病人を抱える方、これまで入院や大病をしたことがある方、守りたい人がある方には是非読んでほしい本です。

 

評価 ☆☆☆☆☆

2020/03/31

医学不要論

内海聡 廣済堂出版 2018年04月
売り上げランキング :
by ヨメレバ

背景を考慮すれば得るものはある-『漫画 君たちはどう生きるか』著:吉野源三郎

漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか

  • 作者:吉野源三郎
  • 発売日: 2017/08/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

娘が祖母から送られた本を積ん読していたので、失敬して読んでみました。

個人的には面白く読めました。

 

実はこのレビューを書く前にAmazonの評価を見てみたのですが、ボロクソに評価した☆1つのレビューが参考になった数でトップを走っていました。それはどうかと疑問に思い、大勢とは別の視点からの読書を提案してみたいと思います。

 

漫画版を作ったところに意図があるのでは?

先ず漫画である点。改めて考えると漫画という形式は伝わりやすさを優先しているものと考えます。わざわざ文芸作品を漫画にしている時点でそこには省略も想定されます。誤解を恐れずに言えば原作とは異なる作品と言ったほうがいいかもしれません。それでも漫画化したのは、一部を省略してでも伝えたい何かがある、そしてそれを年少者(あるいは漫画ならより伝わる層)に届けたいと編者が思ったからだと想像します。

 

文字でしか伝わらない内容もある

他方で、漫画のわりに文章が多すぎるという批判も見えました。一理あります。ここは悩ましい。原文の美しさや大事な部分はやはり文字で味わってほしいという編者の思いだと解しました(まあ確かに文字が多いですが笑)。例えば詩集をオール漫画化・映像化したとしても大切な部分は伝わらないでしょう。最後は文字で味わう部分が必要だと思います。語感やリズム、そこから紡ぎだされる雰囲気。

 

簡単ではないけど正しく生きよう

上記のような観点から、私は、小説「君たちはどう生きるか」とは別の作品として本作を読みました。私の読み取ったポイントは以下の通りです。

正しいと思った信念を持ち続ける。ごまかさない。貴賤の隔てなく人と接する。対して自分の恵まれた環境に感謝する。自らの誤りを認め、受け入れる。そのうえで自己決定していく。

 

初版の1938年とは、満州事変(1931)や226事件(1936)を経た後です。軍部の台頭により閉塞感とともに戦争への足音が社会へ色濃く滲み出してきていたことでしょう。その中で、上のような人道主義的で清廉な考えを言うことは実に難しいことだと思います。

 

初版から80年余りの時が過ぎた現在、自由主義全盛の中で、それでもなお本作が流行するということは、引き続き日本は、言いたいことも言えない社会であり続け、自己決定が難しい社会なのでしょう。また、本書の掲げる道徳律が変わらず日本人から求められているという事なのでしょう。その限りにおいては、この作品は今でも失うことのない価値があるのだと思います。

 

最後に。この本はあくまで触媒です。道具です。この作品で感じ取ったことを生かして、どうやって私たちの人生を作り上げていくか、それこそが大事な点なのだと思います。そして簡単ではないからこそ、引き続き向き合うことに価値があるのだと思います。

 

評価 ☆☆☆☆

2020/03/30

漫画 君たちはどう生きるか

吉野源三郎/羽賀翔一 マガジンハウス 2017年08月24日
売り上げランキング :
by ヨメレバ

社会学者が語るキリスト教とその社会への影響。思想系に興味のある方は必読!-『ふしぎなキリスト教』著:橋爪大三郎×大澤真幸

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

 

 

しばしばキリスト教西洋文化の起源の一つだから勉強した方がいいという。現状のすべてをキリスト教一つに還元はできないと思うが、確かに今ある多くの西欧文化キリスト教の影響はあると私も思う。それを勉強したとは思うが、どこから手を付けていいのかわからない。そんな人は多いのではないのではないか。

 

本書はこのような疑問に対する最良かつ最大の答えになりうる。

 

筆者は、日本の社会学のスーパースター(と私が勝手に思っている)大澤氏と、これまた社会学の大御所の橋爪氏との対談集。

対談は、とかく浅くなりそうなところだが、この本は大澤氏のねちっこい揚げ足取り的な質問に対し橋爪氏が丁寧に答える形で一部でユダヤ教、二部でキリスト教についてその特徴や本質が語られる。そして三部ではこの二つの宗教の果てにある現代社会を概観する。

 

この第一部や第二部は神学や哲学に興味がある人にはおすすめ。ツンデレ的な神と人との関係、聖典の各所に見られる矛盾の理解の仕方、神とのコミュニケーションの方法、預言者の立ち位置、等々についてどのように理解するべきかを橋爪氏が丁寧に解説している(なお旧約聖書について基礎知識を手っ取り早く得たい方には里中満智子氏の『マンガ 旧約聖書』シリーズ三巻をおすすめします)。

 

そして出色は第三部の「いかに「西洋」を作ったか」。キリスト教の歴史の変遷とその意味合いについて解説し、その他の歴史的事項とも合わせて読み解きます。東方教会西方教会は何が違うのか、プロテスタントはどうやってカトリックから生まれたか、中世キリスト教ギリシア哲学との邂逅の影響とは、近代哲学(というかカント)へ逆説的に影響したキリスト教的要素とは、新大陸発見の理由はキリスト教精神の発現ではないか等々。救済を、予定説と現世での努力との二項でとらえ、これゲーム理論で解き、さらにこれを宗教者の目でどう理解するか、というのも面白かった。最終的にイスラム教やヒンドゥー教、そして共産主義までをも見渡した上で現代のグローバリズムの状況を本書の見方に沿って読み解く。この第三部後半のドライブ感は半端なかった。

 

ただ当然ではあるが、本書ですら単なる二次文献に過ぎない。我々は筆者の用意した高性能の乗り物で知的ドライブをしただけだ。より深く学ぶためには、我々読者自身が聖書を読み、哲学書も読み(まあ難しいだろうが)、そのうえで幾許かでも自分の意見や見方を持ち、その上で改めて本書を読む。そうやって個々人が個々人なりの意見や見方を持つようにできれば、著者である二人の社会学の泰斗も教育者として本望であろう。そして私もできればそのように思考をすすめていきたい。一生かけてになるでしょうが笑

 

評価 ☆☆☆☆☆

2020/03/29

ふしぎなキリスト教

橋爪 大三郎/大澤 真幸 講談社 2011年05月18日
売り上げランキング :
by ヨメレバ
海外オヤジの読書ノート - にほんブログ村
PVアクセスランキング にほんブログ村