海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

ヤンキー上がりのベトナムとの”対決”。再読したら意外と面白い!―『ベトナム怪人紀行』著:ゲッツ板谷


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本の概要

立川出身の元不良上がりのゲッツ板谷氏による『怪人紀行』シリーズの一冊。東南アジアへ旅行に出かけ”怪人”に会いに行くという言わばぶっつけロケ的紀行文。戦争カメラマンの鴨志田穣氏が同行し夫婦漫才を繰り広げる。挿絵や表紙は鴨志田の元妻である西原理恵子氏が手掛けている。なお鴨志田氏は2007年にがんで逝去している。

 

感想

COVID-19の影響で移動がままならず、あー旅行に行きたいなあと思っていたところ、再読。いやあ、なかなか良い。不良上がりの筆者が綴る下品でドタバタな紀行エピソードではあるけど、彼の心根は実はそんなに擦れていないように感じてしまいました。そんな素直な(隠し立てのない!?)現地ローカルとのやり取りが旅情を誘います。

 

気軽に読める

この本は、いわば雑誌の企画的なノリなので、お気楽に読めます。手乗り鹿を食べさせてくれる店を探す、抱きビアでぼったくられる、おかまの中学生にインタビューする、おかまディスコに乗り込む、ベトナム戦争の砲弾跡に流れ込んだ天然のエビ穴を探しに行く、相部屋相手が夜中にオ⚫ニーしている等々、かつてはテレビ局、今はYouTuberがやるようなことを地でやっているような紀行ものです。所々挿入されている写真のコメントに時代を感じます(20年前だから仕方ないか)。同時代の私としては時々吹きつつ楽しく読めました。戦争カメラマンのカモちゃんとガイドの鈴木君とのドタバタ道中が物語に花を添えます。

 

小難しくも読める

もう一つ、ちょっと小真面目に読むとすれば、ベトナムという国に深く横たわるベトナム戦争の悲惨さについてでしょうか。同じ民族同士が殺し合うという悲劇。殺さないと自分が殺されるという切迫感。戦争が終わっても勝ったほうも負けたほうも貧しい生活。このような状況を引き起こした国際政治への疑問等を感じてしまいます(なお米国はベトナム戦争について公式謝罪は一切していない)。戦争参加者のインタビューは、お気楽な旅行気分を一気に冷まします。ホーチミンにある戦争博物館那覇ひめゆりの塔等を見たことがある方は何となく分かる感覚ではと思います。

 

おわりに

旅行好き、東南アジアに興味がある方にはおすすめです。最近流行りだしたフーコックやコンタオ等に20年以上前に行っているですからなかなか筆者の目の付け所はいいと思います。そういうマイナーな土地の記述も趣深い。

全般的には肩の凝らないドタバタ紀行ものですが、妙な風俗自慢みたいなものも出てこないのでその点では比較的健全に思えます。

 

評価 ☆☆☆☆

2020/06/28

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