海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

信じるかどうかは別として、調べる足掛かりとして―『日本が売られる』著:堤未果


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感想

 これまで読んだ堤氏の著作は米国事情・米国発のグローバル企業の話が中心の感がありました。今回はフォーカスが日本であり、一層問題意識をもって読むことができました。

 

 今回の著作のサマリは、日本政府の訳のわからん愚行によって日本の生活インフラがばんばん企業に売却されていくという話です。主なトピックは、水、土、種、農地、漁業権、学校、医療、労働、といったところです。

 

日本の食料はタネごと丸ごと企業に乗っ取られる!?

 中でも種の話は知らなかった。

 こちらは種子法改正のトピックです。私は当該分野には全くの不案内ですが、素人目に見てもかなり危険な気がしました。本文中では種子法によって管理していた都道府県レベルでの種子の管理を廃止し、民間に任せるというもの。堤氏の主張は、結果としてこれまで各地域で維持されてきた種子が公的に保存維持できなくなり、他方民間企業が提供する高価な種子が残り、農家に売りつける(農家はそれを小売価格に転嫁、最終的に消費者が負担する)というもの。また、遺伝子組み換えの種子を格安で販売する、安い作物の方が売れると農家もそうした種子を使う等々、の影響を想定しています。種子法についてははネット情報をいくつか見たのですがなかなか難しく、判断が難しいところです。

種子法廃止は誰のためか──日本の農作物への影響と今後の課題 | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」

ameblo.jp

 

 保護主義自由主義とのせめぎ合いのように見えますが、私個人は日本の父権主義的な法律が好みなので、先ずは保護を優先する堤氏の意見には賛成です。これが担保できる限りでの競争とのベストミックスが為政者に対する願いです。

 

米国のTPP離脱はトランプ後の復活を予想

 またこれまでTPPについては否定的な立場の堤氏ですが、米国がトランプ大統領となりTPPのテーブルから抜けた現状では、米国グローバル企業の日本侵略的な見方は深読みしすぎで陰謀論的であったと感じました。ところがさらに彼女の予想するところは、長くても2期しか続かない米国大統領のその後に、米国は再びTPPの議論につくというもの。このストーリーはあり得ると思いました。もし私自身がTPP交渉のテーブルに居るのであれば、確かにそのようなシナリオも考慮しながら交渉するべきだなあと感じました。

 

トピックが多すぎる

 他方一つ感じたのは、私には取り扱う論点が多すぎるということです。勿論その論点そのものは相応の真実が含まれていると思います。他方情報量が多すぎる場合、私の場合、ややもすると右から左へとすり抜けてしまいます。譬えて言えば、母(妻)の小言のようで、はいはい、わかりました、またそれですか、となってしまいそうな気がしました。

 そこで考えたのは、堤氏が伝えたい・警鐘を鳴らしたいトピックを敢えて戦略的に三つ程度あげ、それを得意のインタビューでの証言や金の流れ、政府の政策決定者やその会議等を洗い深堀りしたものをメイン記事にし、他にも伝えたいトピックはエピローグや後書き等にトピックだけの言及にとどめ、これでだけではなく日本はまだまだ売られる等と付記したら、全体的にも伝わり、次回作への宣伝にもなるのではと考えました(余計なお世話ですね)。

 

おわりに

 堤氏の言うことは本当だとしたら、日本はとんでもなくやばい状況にあるのだなあと改めて感じました。私個人は食や健康、そして公的保険に興味があります(もう人生の半分以上きてますし)ので、これを足がかりとして、読書を広げていきたいと思いました。そうしたきっかけづくりや社会への関心の出発点としては優れた著作だと思います。

 

評価 ☆☆☆☆

2020/09/20

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