本の概要
米国の貧富の差にフォーカスを当てたルポルタージュ作品。学校給食と肥満、学校や病院の民営化と無保険者の増加、貧困層を狙う軍のリクルーティング等、貧困が選択肢を大幅に狭めている米国の様子が描かれています。
生の声を伝える
この作品が力強く響くのはやはり生身の人間の声が収録されているからだと思います。サブプライムローンを押し付けられ挙句に家を差し押さえられた移民のマリオ、民営化が原因でハリケーンカトリーナが襲うルイジアナを救えなかったと感じるジェフリー、学資ローンが厳しい故に海軍のリクルートを受けたダイアン等々。お金がない事で選択が極度に狭められていることが分かる。
きらりと光るコラム
また、筆者が節々で展開するコラムが非常に洞察に満ちたものとなっている。私が印象深く感じたのは「コラム④誰がメディアの裏側にいるのか」というもの。メディアすら私企業として資本で支配されており株主の意向が働いていることが良くわかる。つまりマスコミもポジショントークをしているということ。安易に信じてはいけないのだ。
市場経済は万能なのか
こうやって考えると、米国というのは極端なまでに市場主義で最適化を目指す新自由主義によって滅茶苦茶にされた感がある。この本は、そうした市場経済万能主義・新自由主義が手放しでよいのかどうかという問いを与えてくれる。
個人的には、食や医療、交通、軍需、その他の特定分野では国の介入が必要だと思う。ノーベル賞受賞のアカロフ等も一定の介入を認める意見をとっていた。
まとめ
まとめると、これはタイトルの通りルポであるので、米国人の生の声が聞ける意味では非常に貴重だと思いました。また国の在り方を考える上でもよい教材だと思います。競争は必要ですが、セーフティネットもまた相応に必要だと思わせられました。これはさらには政治や外交の在り方を考えるという事にもつながります。内容がやや古いのですが、新自由主義の流れを知る上では非常に良い教材だと思います。
評価 ☆☆☆
2020/05/01