海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

よく書くことは、よく自分を見つめること―『伝わる・揺さぶる!文章を書く』著:山田ズーニー

 自分の言いたいことをきちんと伝えるにはどうすればよいのか?

 

 ブログ等のSNSで物事を伝える、海外で日本語以外の言語を使う、あるいは物分かりの良くない上司や社内関係者を説得したい等々、思いを理解してもらえないフラストレーションは、日本語でも外国語で多く存在すると思います。

 

 ましてやこのコロナ禍の下、対面的な接触が減り、メッセンジャーやメールなど、文字での伝達が非常に増えたと感じています。

 メール返信に費やす時間の膨大な増加、終わらないチェーンメールを見るにつけ、文章力を鍛えるべきだとの判断から手にしたのが本作です。

 


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 さて、本作ですが、めちゃくちゃ為になりました。非常に参考になったし面白かった。

 文章を上手に書くというと、表面づらをととのえるテクニック的なものを想定していました。しかし、本作はそこにとどまらず、書く人の胸にズーンと突き刺さるものを持っていたと思います。筆者は「あなたはどうなのか」というあなたの意見を徹底的に問いただす方向へと論を持っていくのです。

 

 さらにこの自分の意見だが、実はこの意見は何らかの問いに対する答えであるという。この示唆は目からうろこが落ちかの気分でした。我々が常に感じそして表現している言明は大概はQ&Aの体をなしており、そのQが何かを自覚することで自分の言明について構造的にとらえることができる。この問いは自分が常日頃から抱いている問題意識と言い換えることも出来ると思います。その問いを自覚的に理解することは、恥ずかしながら私にはこれまであまりありませんでした。

 更にはこうしたQ&Aの言明構造に対し、「他人ならどう思うか」「他人にとって意味はあるのか」という視点は、文章を洗練させ人に伝わるためには非常に役に立つと思います。

 

 上記以外にも多くのノウハウが語られます。例えば、最後に実践編として、上司の説得、依頼文、議事録、志望理由、お詫び文、メールについて例と解説を自身の経験をふんだんに取り入れて説明しています。どの修正ポイントも指摘点もなるほどと思わせるものばかりでした。

 

 私が感じたところだと、筆者が書き手に要求したいのは、自分の立ち位置の明確化、相手の立ち位置の想定、そしてお互いが見ている方向の想定、だと考えています。これらのことを線でつないだものこそが伝わる文章なのだと感じました。

 (これだけ素晴らしい教えを授かったのに、その書籍を紹介する文章が全く上手でなくて申し訳ないです笑)

 

おわりに

 実は本作を知ったのは、東大の先生の哲学関連の一般本の中ででした。

 

lifewithbooks.hateblo.jp

 

 その繋がりからも思いましたが、書くこととは畢竟、自分を見つめることであると思いました。良く書けている文は、そこに必ず良く省察的な筆者がいるのだと思います。さもなくば、よく伝わる文章は生まれえない、そう感じました。

 

 良い文章を書きたいと願い方は、是非一度読んでみて頂きたいと思います。私も時間をおいて再読したいと思います。

 

評価 ☆☆☆☆☆

2021/05/25

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