海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年は世界史と英語を勉強します!

舌鋒鋭い政府・銀行批判―『金融立国試論』著:櫻川昌哉

 本棚整理を兼ねて、以前に買った本を再読。

 なぜとっておいたのか覚えていませんでしたが、再読してやはり光るところがある(上からでごめんなさい)なあと感じました。

 


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 本書ではバブル崩壊後から21世紀初頭までの10年強の銀行・金融周りを概観しての筆者の金融立て直し論です。三点纏めますと、筆者の主張は以下の通り;

 

 ・そもそも政府の政策がおかしい

 ・銀行のガバナンスがおかしい

 ・日本は金融業で頑張れるはず

 

政府の金融政策がおかしい

 まず政府の金融政策として、ペイオフがあげられます。今となっては信じ難い話ですがかつてはペイオフがありませんでした。だから銀行がつぶれても預金は国が税金で賄ってくれる。そんなんだから預金者も銀行を選別しない、銀行への規律付けも働かない。筆者は現行の1金融機関1000万円のペイオフすら甘いとしています。金融機関ひっくるめて総額3000万円とか4000万とか閾値を設け、金融機関を選別させ、閾値を越えた保全されていない資金が証券市場へ向かうことを展望しています。

 またケインズ経済学の誤解が甚だしいとも指摘。よく公共事業で政府が金を使うことで民間を潤すという話がありますが、あれの理解がおかしいと。不況時の政府支出はケインズ経済学の「Y=C+I+G」でのGを増やすことにあります。Y(GDP)を伸ばすためにC(消費), I(投資)が伸び悩んでいるときはG(政府支出)をぶちこむ。しかし筆者は、支出対象の質とヒストリカルな視点を導入します。端的に言えば、折角Gを使うのに土建とかの伸びない分野に投入したところで、将来的な伸びも期待できないし、むしろいずれ潰れる会社・業界を少しだけ延命させるにすぎない。ならば成長(しそうな・するべき)産業等へ投入することで翌年・翌々年とCやIへの波及も展望できる分野へ支出するべきでないか、と(逆にこれまではそうした政府支出がされず多くの金が無駄になったとほのめかしています)。

 

銀行もだらしない

 銀行にも手厳しい。合併はしたが不良債権は処理しないまま。場合によっては駄目押しで貸す(今はそんなの無理でしょうが)。自己資本劣後債を組み入れ、しかも子会社や関連生保に押し付けるなど、規律付けが働かない。自己資本比率の高い銀行の方が不良債権が多い等々。ルールの裏を突くようなアクションに対し気勢を上げて反対しています。

 たしかにその通りですが、テンポラリーで脱法ギリギリを狙うのは個人的にはありだと思います。ただ常態化してしまうとただのブラックな経営でしかありませんが。

 まあ、さすがに現在ではそういう銀行は減ったと思います。

 

将来は明るい!?

 さいごにさらっと主張していますが、本来米国に対しても債権超過(米国債ホルダー)であり、資金が潤沢であるのだから金融立国して明るい未来を築こう的な結論でした。まあちょっとぼんやりでよくわかりませんでした。

 

おわりに

 少し学者然としていてやや教科書的な定型的な金融・経済のお話もありながら、舌鋒鋭く政府や銀行を批判するところは小気味良さを感じながら読めました。ケインズ経済学の話も面白かった。ただ、最後に日本の金融がどうあるべきかの具体的なところはよくわかりませんでした。やや自由主義的な香りのする本でしたが、銀行・証券等で働く方、金融業界を目指す方、経済学・商学系の専攻の方には読んで損はないと感じました。

 

評価 ☆☆☆

2021/06/24

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