お金の仕組みに異様に詳しい橘玲氏によるお金のショートエッセイ集。元々は日本経済新聞日曜日版の週刊エッセーをまとめたもの。
橘氏と言えば金の話です
かつて証券会社で働いていた時にFPというお金にまつわる資格を取りました。金融はもちろん、保険、税金、不動産、相続など幅広くお金の勉強ができ、知的好奇心を覚えました。
ところが、本作筆者の橘氏の知識はそんじょそこらのFP知識を遥かに上回ります。こういう人がお客さんだと証券でも保険でも営業マンは逃げていくだろうなあと思いました。それだけ金融商品の本質が見えている人かと思います。
本作でも医療保険や健康保険、生命保険の話、不動産と教育、年金など、およそ人が生きていれば人生のフェーズのどこかで出会うお金の話を展開しています。
年金どうなるんだろう
これまで氏の作品は幾つか読んできましたが、今回読んだ中で一番印象に残ったトピックは年金問題。筆者もこれは早晩破綻すると予測しています。
そこで筆者が考えるのは、『任意加入・積み立て方式・個人単位の設計を基本とする(P.171)』ものという。未加入問題はもう個人の自由にしましょうということです。
現在、国民年金は満額納付に対する給付が明確ですが、厚生年金は結局いくらくらい貰えるのかが不明(分かるのかもしれないけど複雑で分からない)だし、曰く『基礎年金の赤字の補填に厚生年金が流用されている(P.52)』ならばそれは払った分より受け取る分は少なくなろうかと思います。確定拠出年金は導入されてしばらく経ちますが、どの程度普及したのでしょうか。年金問題は末恐ろしくて真剣に考えてみる気になりません(考えていますが話が長くなるので・・・)。
おわりに
エッセイ形式で綴られるため、個々でなるほど、と思うことがありますが、筆者の考えはちょっとわかりづらいかもしれません。私は筆者の考えはまさに題名にある通り『知的幸福』と『自由』であると考えます。
家族や親や嫁さんと考えが異なると、なかなかやりたいようにはできません(不動産とか教育とか)。ただ、知らないと呻吟すらできない事実がここにあると思います。保険料が多すぎて困っている方、若くして不動産を購入しようと思っている方、年金が何となく心配な方は読んでみると参考になるかもしれません。考えるヒントになると思います。
評価 ☆☆☆
2021/03/01