人によって考えや感じ方は違う。
この至極当然な考えが本作のテーマだと思います。
未完の小説『空の彼方』をめぐる7人の物語。この未完の小説が北海道を旅する旅人たちの間を行き交う。そしてその終わり方をそれぞれ7人が考えるというもの。
面白いのは、やはり同じものを見ているのに人によって全く受け取り方が異なるというもの。また舞台が北海道ということもあり、旅行欲をそそります。
ちなみに私は、自転車で北海道を旅行する綾子が主人公の「ワインディングロード」が一番好みです。綾子が付き合っていた剛生という男のディスりが結構なくずっぷりで圧巻。また私事ですが大学生の時に自転車旅行で鹿児島や屋久島に行ったことがあり、読んでいて懐かしくなり、その点も評価が高い笑。
他方いまいちと感じてしまうのは、技巧が過ぎているというのか、物語が上手く出来過ぎており、最終章で終わりが読めてしまう感覚がありました。読み進めてきて、ああそういうことかと推測できるのも楽しい反面、そのパターンねと若干の既視感を覚えたのも事実。説明のし過ぎが即ネタバレに繋がりかねないので詳細は述べませんが、以前読んだ同氏による「花の鎖」という作品を私は思い出しました。
おわりに
少し疲れた年末の折、積読本の中でお気に入りの湊氏の本を手繰って読んだものです。パンチは弱めですが、普通に面白い人生小説?でした笑 人生は選択の連続ですが、そんな選択に対峙する個々人の真摯さに元気がもらえる作品だと思います。カバー裏が作中作『空の彼方』の原稿になっているという遊び心も素敵です。
評価 ☆☆☆
2021/12/28