突然ですが、私、古典が好きです。
誤解を恐れずに言うと、時の洗礼を受けた作品をこなすだけで私の読書人生はもう十分だ、と時に思います。
しかし他方で、だとすると私が今に生きる意味は何なのかとか考えてしまう、と。また、子供を読書教信者にするべく、彼らが読みやすそうな本も渉猟する、というお題目も堅持。ということで結局現代の作品も読んでいます。
・・・このあたりの気持ちを深く掘り下げて表現してみたいのですが、時間切れにつきバッサリ削除。じゃあ書くなよって話ですよね。その通りっす。
ひとこと
いやー、どうにもエグめな作品でした。
ラノベ、オカルト、猟奇的、このあたりの筋が好物ならばドンピシャです。
こんな話
作品は、バラバラ連続殺人犯のもとの思しき日記を、主人公「僕」の友人、森野が拾ったところから始まります。
通常ですと、そんな気味の悪いものは拾ったらそのまま捨てるか、即警察へ届け出、というのが筋です。ただし本作で特徴的なのは、「僕」が殺人のあった場所に立ってみたいと思う人間(変態やな)、そして友人の森野についても、死への憧憬があるという点です。
両高校生は死について深く関心があり、連続殺人犯について恐怖もなければ、それに対する強烈な正義感も持っていないという設定。従って、むしろ殺人犯の死への感情を確かめたいという「確認」を動機として動き、結果として「僕」たる高校生探偵が殺人の謎を解く、といった感じ。
なかでもなかなか面白いなと感じたのは「夜の章」(上巻)の「犬」と「僕の章」(下巻)の「土」かな。
前者は、先ずは犬の視点で始まります。小学生である飼い主の下、殺したくないけど近所の飼い犬を殺す犬の独白から始まります。この犬は最終的には人殺しを行うのですが、もちろん理由があるというもの。
後者は生き埋めをしたいという欲望にとらわれた男の話。結局、近所の男の子を生き埋めにし、また他の女子高生をも殺そうとして、悲しみと喜びに打ち震えるという実に猟奇的な話でした。勿論、それを楽しむかのように犯人に近づく「僕」が一番のド変態ですが。実際の殺人犯の職業が最後に読者を震わせます。
おわりに
ということで乙一氏の作品を初めて読みました。
このような作品をうまく判断できないのですが、まあ新しいのだと思います。推理系ダーク探偵物語、とでも言いましょうか。筆者はいわゆるラノベ出身とのことで、多少都合よすぎな展開も見られますが、ノワールな探偵、むしろダークサイドにいる探偵というのは珍しいかな、と思いました。
そうした点では、新しい物好き(といっても初版は平成14年、2002年と20年以上前ですが)猟奇系・ホラー系が好きな方、また探偵/警察官が場を仕切るDetectiveものが好きなかたにはお勧めできると思います。
評価 ☆☆☆
2023/08/14
貴重なお時間を頂きまして、有難うございました。