海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

ピースが連結してゆく快感 |『楽園』宮部みゆき

先日、家で仕事していると、ふと家内が背後に立ちました。
もちろん、バックハグではありません。頭ポンポンでもありません。

 

どうやら私の頭に数本の白髪を見つけて大喜びしている模様です。

遺伝的要素もあろうかと思いますが、私、50手前にして薄毛の気配もなく、髪も黒い。3つ年上の家内は、年齢相応に白髪の束が出始め、「私と合わせてよ」と無理な注文をしているところでした。

ちなみに当方は、私が白で染める・いっそ剃毛するなどを提案しましたがすべて却下されました。

 

そんなさなかでの白髪の発見。白髪・老化で喜んでもらえるんなら安いものです。これからどんどん増えるんでしょうからね。嫁の平穏こそ家庭の平穏であります。

 

 

ひとこと

宮部さんの作品は実はほとんど読んでいませんでした。

今回の作品もどちらかというと試してみる、という側面が大きかったです。

で、結論からいうと、面白かった!エンターテイメント小説です。

 

ながれ

本作は『模倣犯』という作品の続編となります。

その前作でトラウマを負った女性ライターの前畑滋子が主人公。

とある日、彼女のもとに寄せられた依頼。今はなき依頼者の子が超能力を持っていたかどうかを確認してい欲しい、と。過去の事件への弔いとばかりに、この依頼に取り組むと、思いもよらない殺人事件を掘り起こすことになり・・・。

 

パズルのピースが徐々につながる

まずもって述べたいのは、思いもよらない展開です。

当初の依頼人萩谷敏子が謎な雰囲気でしたが、彼女のファミリーヒストリーがまた濃いなか、亡くなった子供の萩谷等が幻視していた先生方の隠蔽したい事実、さらには等が幻視した殺人事件の現場の風景。殺人事件の当事者たる土井崎夫婦の独白、姉を殺された誠子の悲しさ、誠子と中の良かった地元の友達達、土井崎家を守ろうとする高橋弁護士、滋子をサポートする『模倣犯』時代の秋津警部との連携など、読中は別個に与えられるピースが徐々に連結していくところに、読者は納得のため息と快感を得ることができると思います。

 

主人公のキャラ設定

加えて、主人公滋子のキャラクター設定が良かった。真面目・真摯・やさしい。

ご主人とともに所謂DINKS家庭を営む滋子。本人もまたちょっぴり寂しさを抱えつつ、『模倣犯』時代の行動に罪の意識を持ち続ける。両親が殺人を犯したという誠子への取材を試みる際も、分をわきまえた気遣いで取材対象との距離を縮め、職業上の厚かましさと持ち前の正直さをうまくミックスさせ土井崎家付近の人々を味方にしてゆく様子なども小気味良かったです。

ご主人は親からの工場を相続した子ども好きのオッサン。彼のキャラと相まって、主人公の家庭は、幸せながらも若干の陰色が差されるように描かれています。

 

超能力を信じる方に傾く心情変化

そういえば、当の依頼人萩谷等はじめ、萩谷家のファミリーヒストリー、祈祷師の家系へストーリーを深堀りするのもまた趣がったと思います。私個人はこういう話は信じるタチですが、主人公滋子が、距離感を保ちつつ科学的に裏どりしようとしつつも、萩谷等君の能力を徐々に信じつつ変化してゆく様が、良く描かれていたと思います。

 

おわりに

ということで私として2作目となる宮部作品でした。いや、面白かったです。

模倣犯』の後続?とのことらしいのですが、本作だけで充分楽しめました。何となく筋が読めてしまう二時間ドラマではなく、これどうなるんだろ?という二時間映画的な作品だったかなと思います。

 

邦画が好きな方、一日くらい気分転換の時間が取れる方、超能力・ムーなど好きな方、スリラーが好きな方等々にはお勧めできると思います。1-2日程度での一気読みがおすすめ。

 

評価 ☆☆☆☆

2023/08/23

 

やはり『模倣犯』を読まねばならない?以下も『模倣犯』の後続作でしたが、愚息には不評でした。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

 

貴重なお時間を頂きまして、有難うございました。

 

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