海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

企業スポーツの終焉とビジネス環境の変化を描く |『ルーズヴェルト・ゲーム』池井戸潤

スポーツが好きです。

何っうか、頑張っている姿が好きなんです。うまい下手関係なく一生懸命さが素敵だなあ、と感じます。

 

才能に完膚なきまでに打ちのめされることもある。相手に追いつくために練習し、打ち勝つための戦略やデータ収集を行い、うまくいくこともある。もちろん、ベストを尽くしてもうまくいかないこともある。

そんなスポ根モノって、誰かの人生の一部なのに、自然と自らを投影してしまうんですよね。

 

ってまあ、スポーツだけではなく人生すべてそうですけどね。

スポーツ、会社、競争とかって、まあ分かりやすいんですよね。

 

 

ひとこと

久しぶりに読んだ池井戸潤さんの作品。そして本作、企業野球のお話であります。

ありていに言えば、野球版半沢直樹、と言ったら簡便に過ぎるかしら。

 

あらすじ

ビジネスで追い詰められた中小企業の青島製作所。当該企業が抱える弱小野球チーム。大手取引先から大幅値下げ交渉を迫られ、競合先からは吸収合併のための工作を仕掛けられ、さらに取引銀行からの融資には渋い顔をされる。そうした中で企業野球部の行く末はどうなるのか。ってそういう筋です。

 

既視感!?

うーん、これはですね、以前ドラマで見た下町ロケットと雰囲気が似ていますね。

社内外に敵や問題があり、銀行もとっても意地悪、みたいな。でも最終的には青島製作所の社長の頑張り?でハッピーエンドを迎えます。

 

社長の立場は厳しい

振り返ると、急激な変化に対して経営者がとり得る手というのは、実はそんなに多くない(むしろほとんどない!?)と、本作を読んでいて感じました。

その観点ではまだ瀬戸際にいないときこそ環境分析リスク管理等を強化するべきかもなあと思いました。もちろん、中小ですと社長自らが経営企画部兼営業部長だったりしますのでリソース的に難しいところではありましょうが。

本作の場合ですと大手顧客であるジャパニクス。当社への売上比率を平準化して他社への販路を拡大するとかを掲げておくべきだったのでは、とか。作中で成功した回路の小型化により別業種へのチップの販売などは、土壇場ではなく想像して準備できなかったかなあ、とか感じました(言うのは簡単ですね。そして結果論でもあります)。

 

企業スポーツの終焉へのノスタルジー

そうそう。ビジネスとして起死回生の逆転弾を打った青島製作所でしたが、野球部は廃部となりましたね。このあたりは世の流れを感じます。

企業スポーツは衰退の一途をたどるのでしょうが、今度は地域が・で、スポーツを支えるような形になっていくのかもしれませんね。プロ野球Jリーグなどもそうですが、野球の独立リーグってのも、有名な四国のもの以外にも新潟や北海道などにもあるそうです。こうした小規模のスポーツクラブを地元の企業や個人が支えらるようになるといいですよね。

 

本作で、青島製作所の野球部員が自らの実力を揶揄して「アマチュア以上プロ未満」と表現する部分がありました。プロはほんの一握り、そしてそれに憧れるままで終わる人が大半。そうした中にあって企業スポーツは(とりわけ野球にあっては)プロと学生との間をつなぐ貴重な場として機能したと思います。

企業がこれを支える時代はもう終わりなのでしょうね。こうした状況は、独立リーグや多くの下位リーグのピラミッドによってより幅広く、豊かなスポーツ環境にとって代わられるのかなあと思います。

 

おわりに

ということで池井戸氏の作品でした。池井戸作品(本)は実は二作目でした。

本作はビジネス系というより、企業スポーツの存在意義という観点から面白く読めました。

 

野球好きのかたはもとより、スポーツに関心のある方には楽しんでもらえると思います。

 

評価 ☆☆☆☆

2023/10/15

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