こんにちは。
めっきり寒くなりましたね。毎朝血圧を測っているのですが、東南アジアの居所で測るのと比較すると、大体10-15くらい(上が)上昇しています。
気温の変化は確実に体に影響を及ぼしていますね。
そういえば、コロナもインフルも再び流行の兆しだとか。皆さまもどうぞご自愛ください。
ひとこと
舞台設定やテイストはまさに伊坂作品。
ただ、五股の別れ話ってのは曰く言い難いなあ笑
平たく言えば「五股」
太宰治の「グッドバイ」へのオマージュとして書き始められたという本作。私、当該作品も読んだこともありません。そして本作、「ゆうびん小説」として一話ずつ抽選で読者に送ったということ。これまた風変りな仕掛けをこさえたものです。
でねえ、本作の話ってのが五股の話。五股ですよ五股!
ただ伊坂氏が言うところによると、本作は恋愛小説ではない、とのことでした。ここが難しいところですよね。五名も素敵な女性が出てきて、自然と素敵な女性たちを想像してしまいますよねぇ。もう五人分、タレントを頭のなかに思い浮かべてしまいます笑
だけれども恋愛小説ではないのです。だから、ここはあらぬ妄想をぐっとこらえて、真面目過ぎる星野一彦(主人公)と五人の女性の異なる個性が描き分けられる、ということを再認識するべきなのでしょう。
結局ゲロって意味あるのか?
評価が難しいのは、分かれ話をしに行く一彦の一連のアクションではないでしょうか。
<あのバス>に連れていかれる前の、最後の願いとしてお付き合いしている女性たちにお別れの挨拶をしに行くわけです。つまりもう二度とこの女性たちには会えない。その中で、別れの挨拶をする、五股の事実を突きつける、そして挙句の果てに彼女らの将来を気にしたり、健康を案じたり、何かちょっとでも良いことをしようとする。
その心遣い?を「やさしさ」と捉えることもできますが、やはり「てかそもそも五股とかしていなければこんな悲劇おこらなくね?」みたいなそもそも論になりそうです。
繰り返し申し上げますが、本作、恋愛小説ではないそうです笑。
女性の描き分けと彼女らとの洒脱な会話、そして現実離れした設定こそが醍醐味ではあるのですが、楽しむことに集中できずに、五股の件を突っ込む方が多くありそうな気がしました笑
狂暴な繭美との夫婦?漫才
他方、一彦を<あのバス>に載せるまでの監視役として登場する繭美。彼女は、私の想像だと常にテンションの高い口汚いマツコ・デラックスみたいな方です。この繭美と一彦、シュールで乱暴・そして洒脱な、なんとも味のある会話を繰り返していました。
ただ読み続けると、最後は少し繭美も「丸くなった」みたいな感じになる気がしました。徐々に一彦のリクエストに答えるようになっていってませんか? この変化を、一彦の人間的魅力、と捉えることもできましょうし、また繭美も含めて、人の相互作用をいう事も出来ましょう。
いずれにせよ会話にリズム感があり、ギャグも私好みで楽しかったです。
終わり方も伊坂作品らしい
そして、散々繭美へ期待を持たせつつ、結局一彦は<あのバス>に乗せられて行ってしまい、物語は終わります。結局<あのバス>が何かも分からず、一彦がどうなるかも分からずに終わる。
物語の終わりを読者に託すという決着のつけ方、終わりを限定しない、という、広く地平が広がっていく所がいかにも伊坂氏らしいなあと感じました。
おわりに
ということで、今回も少しテイストの異なる、風変りな作品でした。
元ネタになっている太宰治の作品「グッドバイ」も読んでみたくなりました。
WOWOWでドラマ化もされているようですが、好きな方は見てみて良いのかもしれませんね。
評価 ☆☆☆
2023/10/13