皆さんこんにちは。
久しぶりに英語の本を完読しました。我ながら驚きますが7/1から読んでいます。むぅ、ほぼ6カ月です。
自身の健康問題だったり、仕事だったり、旅行だったり(「これで人生最後かも」の気持ちでして)、まあ落ち着かないというのはありましたが、大分かかりましたね。
でもこれは、今年一番沁みました。もう英語ができる方には全員に読んで欲しい。自分、まだまだ歴史を知らなすぎ。悲しさと感動に包まれました。
はじめに
独立前後15カ月のインドを詳述する力作。
民族の憎しみの連鎖、マウントバッテン卿の苦悩、インド首脳たちのいがみ合い、ガンジーの頑固さ、ガンジー暗殺を企てる狂信者たちの未熟さ、全てが息づくように刻み描かれる。
・・・
インドについては多少知っている知っているつもりでした。
人口が多い、ヒンドゥーやキリスト教の起源、加えてムスリム人口も多い、貧富の差や腐敗、コモンウェルスで英国の植民地だった、等々。
しかし、本作を読めば如何に自分がなにものをも知らないことに愕然するはずです。
本作は、WWII後にマウントバッテン卿(英国)が時の首相アトレーによりインドへ派遣され、インド独立(英国撤退)を施行するまでのおよそ15カ月間の様子を詳述するものであります。
人と人の憎しみあいの凄惨さ
いやあ、何から書けばよいのだろう。
とにかく色々ぶっ飛んでいたのですが、600ページにも渡る大作で最も印象的であったのは、インドおよびパキスタン独立後、パンジャブ近辺で発生した民族浄化ともいえる殺し合いの描写です。
パンジャブ(現インド領)もパキスタンもそもそもはインド。しかし独立後、虐殺を恐れたムスリムは国境を越えパキスタン側へ。同様にパキスタン側にいたシーク、ヒンドゥはインド側へ。
そのままパキスタン側居所へ残るシークの首を片っ端から切り落とすムスリム。パキスタンへ逃れようとするムスリムを片っ端から取っ捕まえて、股間の割礼を確認したらモノも首を切り落とすシークの暴徒。そんなのばっかり。
命からがら電車でパキスタンへ逃れるムスリムは、結局目的地までたどり着かず、目的地に着いた頃には電車は屍体の山と血の海だった。とか(駅員が非ムスリムだった)。
このようなことが国境沿いで頻発し、これを見た英国兵がWWIIでもここまでひどくなかったとか。10万単位以上で、もともとが隣人同士で殺しあう異常さ。呆然・愕然とする以上に、実に悲しくなる話です。
引き裂かれる愛の物語
このような凄惨さのさなかで唯一息を継げる瞬間が、シークの貧農ブータ(Boota Singh)とゼニブ(Zenib)のお話の間でしょう。
殺戮から逃げるムスリムのZenibはBootaの扉を叩き助けを乞う。追ってきたヒンドゥの暴徒はBootaにZenibを差し出すよう強要。そこでBootaはZenibを1500ルピーで「買う」。
シャイで無口、天涯孤独の初老のBootaは急場をしのぐ為こうせざるを得なかった。しかし、やがて年の差の男女に情がつき、本当の夫婦となり、娘を得る。
数年後、相続権で劣後したことに気づき怒ったBootaの甥の一人。彼はZenibが元難民(元パキスタン近辺在住)であったことを当局に通報。当局はZenibをパキスタンに送還してしまう。
どうしてもZenibを取り返したいBootaはパキスタンへのビザを申請し(のち却下)、ムスリムに改宗しパキスタン行きを申請し(のち却下)それでも埒が明かない。とうとう幼い娘とパキスタンへ密入国する。
何とかZenibを見つけ出すも、なんと親族とZenibは既に婚姻させられていた。そして早々にBootaは警察にとらえられ裁判にかけられる。
裁判官はたってのbootaの願いから、試しにZenibにBootaと婚姻関係を続けたいか、娘を引き取りたいか、と問うシーンは感涙。現夫や親族に囲まれた衆人環境でYesとは言えません。Zenibは涙ながらにNoと言わざるを得ません。
強制送還となるBootaは、もし自分が死んだらZenibの村に遺体を植えてほしいとの言伝を残し、娘とともに送還されるべき電車へ投身自殺。
娘は奇跡的に生き残るもBootaは肉片散り散りとなる。遺言通りZenibの住む村にBootaの遺体が運ばれるも、Zenibの親族は断固拒否(Zenibの母親等親族のほとんどがインド人によって殺戮されていますし)。結局、篤志家のムスリムらによってZenibの村とは違うところに手厚く葬られたそう。
こうしたお話は数えきれないほどあったのだろうと思います。貧農の土地を相続できないくらいで悪意を露出したインドの貧しさ。またZenibを暖かく包んだBootaをひとからげにインド人憎しと許せなかったZenibの親族。
キレイごとだけでは何も解決しませんが、ただただ、悲しくなるお話です。
その他もろもろ
上記の二つの話がインパクトが強く、他の主力級のトピックの影が薄くなってしまいました。
まず、マウントバッテン卿の行動力。英国王室にゆかりのあるサラブレッドの華麗なるリーダーシップの数々。奥様とインド初代首相となるネルーとの間に関係があったとかなかったとか。独立直後の混乱時、旧友たるネルーらのためにひと肌脱ぐ姿は颯爽としています。
そしてガンジーの非暴力と融和、勤労を説く姿。絶食による抗議で独立後の民族融和を一部で成功させるその熱意、他方で失意。これらがありありと描かれます。その後暗殺される。暗殺チームのそれぞれの描写も細かでありました。
それから、独立によりすべての権利をはく奪された多くのマハラジャたちのハレンチな(極端な)日々。娼婦を100人単位で抱えるとか、その子たちに好みの服を着させるのはもちろん、一部整形手術すら受けさせ、というより宮殿に整形医師を住まわせる、とか。
もうそんなこんなで驚くべき状況が詳述されているわけです。良くも悪くもAmazing Indiaでありました。
おわりに
ということで、本年の読書で一番のインパクトでありました。
上記、大分だらだら書いてしまいましたが、ほんの、ほんの一部のご紹介です。
翻訳、出ていないようですが、是非多くのかたに手に取っていただければ幸いです。”VICERO’'S HOUSE”という題名で映画化されているようですが、内容のショッキングさをどこまで映像化できているのかは不明であります。
評価 ☆☆☆☆☆
2023/12/22
貴重なお時間を頂きまして、有難うございました。