海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

お笑いなし!?大阪の夜の街を綴る純文学作品 |『地下の鳩』西加奈子

皆さん、こんにちは。

突然ですが、最近体調がよろしくありません。よく眠れないのです。

これまで食事、運動、睡眠、とコンディショニングにはそこそこ気を遣ってきました。月初に旅行から帰ってきてから、旧正月のあいさつ回りを経て、昼夜逆転・飲食過多が続き、日中はもうろうとした状況。

仕事は窓際だし、適当でいいのですが(マクロが私より正確に仕事してくれます)、プライベートの読書が進みません。読みたいノンフィクションが沢山あるのですが、体力とやる気がないと読めないのです泣

深夜の2時ごろに目が覚め、体はだるい、それでもケータイで時間つぶしはしたくない、何とか生産的に生きたい。でも小難しい本を手に取る気力がわかない。せめて有効に時間を使おう、となると優しき私の味方は小説たちなのです。

ということで、今回はお気に入りの作家さんの一人、西さんの作品を読了。

 

 

はじめに

これまで西さんの作品というと、関西弁コテコテ+純文学、という印象でした。今回も舞台は大阪ですが、より純文学へシフトした印象を強く感じました。

 

あらすじ

本作は中編ともいえる「地下の鳩」「タイムカプセル」の二編からなります。

表題作「地下の鳩」は、昔はそこそこイケてた40男の吉田が、スナックでチーママを勤めるみさをと出逢い、破滅的に共依存していく話。

続く「タイムカプセル」は、奄美大島出身のオカマのミミィ(おかまバーのオーナー)が、彼(女)の半生を振り返りつつ、自己のジェンダーについて自身は正直であったかを振り返るような作品。

 

解釈の余地が読者に与えられた作品

で、先にも書いたのですが、実に「文学だなあ」と感じたのです。ま、何を文学であるかと定義もしないでお話するのも申し訳ないのですが。

勝手な感覚でいうと、「読者に判断が任される」ような作品については、私はより一層「芸術」性、芸も術も感じます。換言すると、解釈の余地が適切に確保された作品

 

、んなことを言うと、エンタメ的作品をバカにしとるんか、と怒られそうなのですが、飽くまで私の個人的な好み、であります。

 

本作でいえば、「地下の鳩」は40にもなって未だに女性に対してはイキがった態度をとる吉田、彼を恋人未満なヒモとして住まわせるみさを。この二人が出会い、もつれてゆく情景が淡々と描かれます。今回は珍しく、オチもユーモアも殆ど見かけませんでした。

「タイムカプセル」も、オカマのリリィの回顧を経て、最後は小学卒業時のタイムカプセルを掘り起こし、自分が偽って書いた文章を確認してゆく話が淡々と描かれます。

 

どちらも結末・オチが用意されず、本当に、ふと、終わります。

とすると、読者はやはり「何なんだこれ?」って思うんじゃないでしょうかね。でも、こうやってオチの部分だけさっぱり切り落とし、そこまで上手にしっとり読ませるということでは秀逸であったと思います。

 

ちなみに、これまで西さんの作品は関西弁の多用の他、擬態語や擬音語の使い方に可憐さを感じていましたが、本作ではそうした擬態語・擬音語も見られませんでした。何かありました?西さん?

 

おわりに

ということで久しぶりに西さんの作品でした(数えてみたら五カ月ぶり!)。

関西弁のアクの強さやユーモラスさが影を潜めているのですが、文学作品としては私がこれまで読んだ作品のなかでは一番完成度が高く感じました。

 

ストーリーの展開ではなく、文章の美しさを鑑賞することが好きな方にはお勧めできる作品です。

 

はたして皆さんは本作品、どのように読みましたでしょうか? 他人の感想・評論が気になる読後でありました。

 

評価 ☆☆☆

2024/02/18

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