皆さん、こんにちは。
息子を含めた高校三年生4人組。せっかく東南アジアの端っこまで来てくれたのだからと、やれ世界遺産の街へだとか、やれこれがおいしいから食ってみろとかで、有給をとってあっちこっちへ連れまわしています。
4人もいると性格も行動もそれぞれ違っていて、なかなか見ていて面白いですね。
かばんのパッキングから、服装へのこだわり、大人や友人にもストレートに意見する子。逆に、服装とか髪型とか、あんまりこだわりもなく、へらへらしつつ「僕そういうタイプなんです」と分かっているのか分かっていないのか、のらりくらりな子。周囲の空気を適切によみ、適度な突込みできつめな子も緩めな子も一丸にしてしまうまとめ役の子。皆それぞれ。
それでも集まれば、夜は遅くまでギャハハと馬鹿笑いをして夜更かししています。いいねえ、若いって。
どんな大人になるのかねえと、寝室にこもった私と家内は、彼らに期待しつつ眠りにつくのでした。
そんなさなかに読んだのが本作であります。伊坂作品は一か月ぶりです。着々とコンプリートに近づきつつあります。
はじめに
伊坂氏の作品が好きで、この一年、過去作から振り返るかのように、既読未読ともにいちから読んできました。
本作は短編集ですが、伊坂色がありつつもこれまでと趣を異にする作品でありました。
異色のディストピア短編
その中でもSF色が強くこれまでと趣向が異なるのが「ギア」であったと思います。近未来のディストピア的世界では「セミンゴ」に地表という地表が食い荒らされているのです。バスに乗り込んだ数名の老若男女と運転手との会話から徐々に様子が浮かび上がるものです。
安定の伊坂風エンタメも
それ以外で私のお気に入りは、「一人では無理がある」と「彗星さんたち」。
「一人では無理がある」は、言わば「本当の」サンタクロースを営むNGOの話。それぞれの家庭の事情からプレゼントなど望むべくもない子供にプレゼントを届ける団体の話。ここの人事がこれまた適材適所としか言えない個性的な人物をリクルーティングし、多少のトラブルがあっても、適切なプレゼントが子どもたちに配られるというもの。思いこの団体側の内情・視点から物語が描かれます。
「彗星さんたち」は、新幹線の清掃係の方々の話。これまた当該業務に就く方々が個性的で、かつ遭遇するお客様が非常にユニーク。やや業界よりな所が気にかかるものの、倒れて意識の戻らないリーダー「鶴田さん」を思うそれぞれの視点がやがて新幹線で出会うお客様の様子と重なる様は秀逸。
そのほか、「浜田青年ホントスカ」「二月下旬から三月上旬」「if」「後ろの声がうるさい」を収録。どれも伊坂色が大なり小なり混じっているものの、どこか新たなエッセンスが感じられました。
おわりに
ということで伊坂氏の短編集でした。
あとがきとして対談が掲載されていました。15年を振り返ってと銘打って、デビューから15年間の作品を振り返るものです。そこに、作風の変化への意欲等も書かれていました。
まあ確かに、おんなじやり方を一定年限続けていると、少しやり方を変えてみようと思うものですよね。私も今の業務、10年続いてしまいました。そして少し飽きがあります笑。
当初はいつもの伊坂氏とちょっと違う、と少し違和感(不満?)がありました。とはいえ、ここから更に進化するのかもと思えば、この試みもまた将来の傑作への布石となるはず。今後の作品についてもまた期待しております。
評価 ☆☆☆
2024/02/24