海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

縁遠い中東がちょっと身近になるかも-『オスマン帝国500年の平和』著:林佳代子  

興亡の世界史 オスマン帝国500年の平和 (講談社学術文庫)

興亡の世界史 オスマン帝国500年の平和 (講談社学術文庫)

 

トルコ、と聞くと皆はどういうイメージがわくのだろうか。

ある人はトルコアイス、ある人はケパブといった肉料理かもしれない。またある人はなんだかわからいけどイスラムの国という反応かもしれない。

 

実際私はあまり印象がない。高校で世界史を学ばなかったせいもある。

だからか、以前より中東やイスラムについてはいつかは勉強したいという思いがあった。

 

とはいえ、この本を実際に手に取ることになるきっかけはテレビであった。Huluで放映された「オスマン帝国外伝 愛と欲望のハレム」だ。何気なく見たら面白い。簡潔にいうとトルコ版の大奥的なストーリーであるが、そこにイスラムの影響、ヨーロッパとの文化的人的交流なども描かれている。出ている女優や素敵なものあるが。話の筋は大河ドラマ的ではあるが、私には目新しく、面白かったのだ。

 

オスマンのことを知りたいと思い買ったこの本は、当初とは全く異なったオスマン像を私に与えた。500年以上に及ぶオスマン帝国の歴史、ハレムをはじめとした取り巻きの政治・戦争と栄光・内部の腐敗や権力争い等が丁寧に描かれています(イブラヒムやヒュッレムも出てきます)。これは非常に興味深く読みました。しかしより印象的であったのは、オスマン帝国というイスラム教義下に統治された各民族や宗教の共存だ。イスタンブールというヨーロッパにごく近い土地で、エーゲ海沿岸諸国出身の商人、現在の東ヨーロッパ出身の宗教者、はたまたシリアやイラク出身の豪族などが時代時代に生きていたのだ。最終章で筆者がややノスタルジックに述べるこのオスマン帝国の特徴である多様性とイスラム法による包摂は、現在民族主義に彩られた各地での内戦や争いとは実に対照的である。

 

現在の民族紛争、宗教間の対立など、中東をめぐる問題をより深く理解するためには読んで損はないと思います。特に世界史を勉強しなかった方は必読かと思います。

 

評価 ☆☆☆☆

2019/11/10

興亡の世界史 オスマン帝国500年の平和

林 佳世子 講談社 2016年05月11日
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