海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

気持ちはエジプト・トルコ・イスラエルへ |『キリスト教の“はじまり” 古代教会史入門』吉田隆

今年の勉強テーマであるキリスト教ですが、何とか2冊目が読了。

そもそもキリスト教を勉強したい理由ですが、一つはウンチク垂れたいという(アホ)。というか、文学・歴史、色々なところに伏線というか基礎として伏流してるので、西洋の文学・哲学などのテクストの十全な理解には欠かせないと思い、取り組んでいるものです。今さらですが。

 

もう一つは旅行。こちらもほぼ上と同様です。絵画・建築・遺跡など、キリスト教関連の見ものが多いわけですが、なぜそれらが高く評価されるのか、ってことがキリスト教が分からないと深く理解できないですよね。遺跡だって勉強しないとただの廃墟じゃないですか。分かっていると「おお、これはあの有名なカッパドキアの〇▲×!&^%」とかって言えますからねえ笑

 

で、旅行だと今年個人的にアツいのは、トルコ。

ハギア・ソフィア聖堂しかり、今回読んだ本の表紙のラオディキアもトルコです。そしてエフェソス遺跡も、世界史でエフェソス公会議とか出てきましたよね。こちらもトルコです。もちろん、本作も古代教会史ということでトルコの地名が頻出していましたよ。

 


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ひとこと

いやあ、なかなか面白かったです。

キリスト教関連の本というだけでもマイナーなのに、さらに古代教会史というと一体なんなん?って感じしませんか?

でも、これが結構面白かったんです。

 

古代ローマ史にかぶる年代、初期キリスト教の労苦

で、古代ってのはどれくらい古いかというと、キリスト生誕前後から、キリスト教が公認され、そして聖典が揃うまでの間くらいのざっとA.C.0 からA.C.400年とかA.C.500年くらいまでのキリスト教を中心に、どのような運営がされていたのかを紐解いています。

 

世界史の時代でいうと、古代ローマ史、五賢帝のあたりですよね。そしてキリスト教弾圧で有名な皇帝ネロ、あのあたりです。

 

そんな弾圧を受け、疫病のように例えられたキリスト教が爆発的に広まった背景として、教科書的にパクスロマーナ、コイネーの存在、一神教たるユダヤ教の文化的地理的背景、などが簡潔に説明されています。復習としては最適。テストに出そうな内容。

 

教会がない!?聖典もない!?

ただし、本作の出色はやはりそれ以降の古代教会がどのように営まれていたかを、生き生きと描き出すところでしょうか。

 

個人的に驚いたというか、確かにな、というのは、当初は物理的な教会などなかったということ。まあそうだわな。迫害を受けるくらいだから堂々と集まったりはできません。民家の一室とか、地下とかそういうところで集会をしていたっていうのは、カタコンベなどの存在からも分かりますが、改めて、へえ、です。

もう一つ、これまた確かにそうだけど、なんですが、聖典がなかった!367年くらいまで。

これ、すごくないですか。つまり宗教として神をたたえつつ、文字として参照できるのはいわゆる旧約オンリー。一部の口承はあろうとは思いますが、いわゆる新約がでんと揃っているわけではない、と。教父達の苦労がしのばれます。

 

異端には寛容でない!?

個人的によく分からなった点は、正当と異端の間、でしょうか。

私の理解するところですと、本書ではその境目は三位一体、であると述べている気がします。教義の建付け上、ないし宗教の正当性を維持するうえではわかります。ただし、(イスラムやヒンドゥなど)別の宗教は多様性の枠内で受け入れられるのに、異端という同一宗旨の異宗派には寛容になれないのか、とちょっと意地悪に思いました。

まあキリスト教と名乗るうえでの最低限のマナーが三位一体を掲げる、ということなのでしょう。この看板を掲げない人たちはキリスト教のトレードマークをは使えないというイメージなのだと理解しました。

 

おわりに

ということでキリスト者による、熱めな古代教会史についての作品でした。

もうすでに初期の教父の名前とかは頭の霞の中に霧消しつつあります。しかし、アレクサンドリア(エジプト)、イスラエル、トルコ、ギリシア、あのあたりを旅行するとしたら絶対に再読しておいた方がよさそうな本です。

 

改めて本作、キリスト教に興味のある方、古代ローマ史に興味のある方、近々エジプト・トルコ・イスラエル近辺を旅行する予定のある方、等々にはおすすめできる作品かと思います。旅に出たくなる本です。

 

評価     ☆☆☆☆

2023/06/13

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