海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

大人の入り口を描く、やや酸味のあるユーモラスな作品―『カラフル』著:森絵都


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本の概要

自殺した少年の体の中へホームステイし、人生の再挑戦のチャンスを得たぼくが、人の欠点や優しさを見ながら成長していく。ぼくがみた世界は必ずしも綺麗ではなかったけれど、優しさもあったし、僕を見てくれる友達もいた。筆者の森絵都さんは直木賞受賞作家で、ティーンズ小説に定評がある作家。

 

感想

森絵都さんはティーンズ小説で有名な作家。読書嫌いの子供たちに読ませるために購入。以前読んだ『DIVE!』も面白かったのですが、本作品もなかなか良かったです。

 

神々もまた人間臭い笑

先ず面白かったのが神々の描き方。天使が住む天界での人間模様(天使模様?)を天使業界と言っていますが、天使業界ってなんやねん?突っ込みたくなりました。そんな生死や輪廻といった重い話題をビジネスライクに描いている点がユーモラス。天使にボス(勿論神さま)がいたりとか、その意向に逆らえないとか、超越した存在かと思いきやサラリーマン的悲哀を漂わせる描写が面白かったです。

 

人は不完全な生き物です

次に、私がいいなと感じたのは、登場人物の不完全さが描かれているところ。お母さんは浮気してるっぽいし、お父さんは上司の失脚を喜んでいるし、お兄ちゃんは自殺に失敗した真にシニカルな言葉を投げる。真はそんな家族や周囲の友達にも反発しますが、これこそが思春期の子供達が乗り越えるべき・受け入れるべき現実かもしれないと思いました。

 

親だからちゃんとしているとか、教師だから何でも知っているとか、警察だから常に正しいとか、現実は決してそうはならないですよね。親だって間違えるし、先生だって知らないことあるし、警察だってミスることもあります。そして自分もそういう不完全な大人にもうすぐなるのです。

 

こうした現実をきちんと(シニカルではない形で)受け入れられることが、大人になることの要素の一つだと思います。こうした他人を受け止める寛容さという器は、穴が開いていたり割れたりしてなかなか満ちることがありません。自分は40半ばにしてまだまだ道の途中ですが、子供達にもこのあたりについて思考を始めてもらいたいと考えています。 

まとめ

纏めますと、教育的見地からもエンタテイメントからも私にとって満足度の高い作品でした。ティーンばかりでなく、その親御さん世代にもおすすめします。読了後の爽快感は、金子みすずの詩『私と小鳥と鈴と』の最終句を想起させます。「みんなちがって、みんないい」。というか、これは子どもにわからせることというより、大人が理解するべきことかもしれませんね。。。。

 

評価 ☆☆☆☆

2020/05/02

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