海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

文明は発展するも人類の本性は進歩なし!? |『歴史の大局を見渡す』著:ウィル・デュラント/アリエル・デュラント、訳:小巻靖子

昨年2021年私が最も感動したと言っても過言ではない「PRINCIPLE」という作品で言及されており、結果私のウィッシュリストに入っていた本作。この度手に取ってみた次第です。


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著者は夫婦で歴史学者・哲学者ということで、10巻にもわたる歴史書を記し、ピュリッツァー賞も受賞しているとのこと。本書はその筆者の大部にわたる代表作のエッセンスを、13のエッセイにまとめた歴史読み物。

 

本書で書かれているのは、歴史は繰り返す(正確には、類似の原因により類似の事象が生起する)とか、貧富の差が対立を生むとか、国家は自由を制限するとか、まさに『歴史の大局』の話。ある意味で新奇性があるわけでもなく、言い古されてきた言明も多いと感じました。

 

ふと私はロシアを思いました。何故、ロシアはプーチンを祭りあげるのか。何故国民はプーチン体制に反抗することが出来ないのか。プーチンや権力者が旧共産圏の国々がいわゆる西側につくことで抱く恐怖とは何なのか。

同時に思うのは米国と太平洋戦争に突入した第二次世界大戦時の日本です。何故誰も開戦を止めようとしなかったのか。国の指導者たち・エリート層はその時何をしていたのか。本当に避けられない戦争であったのか。

そうした疑問への回答の一部は、第9章「社会主義と歴史」、第10章「政治と歴史」、第11章「戦争と歴史」に示されているように思います。

・・・

さて、本書の最後部では、「人類は発展しているのか」という疑問を筆者は投げかけています。21世紀になっても一国が他国を武力で侵略するような事が起こるのですから、否と答えたくなります。でも筆者は技術の進歩、病気の撲滅や公衆衛生の発達などを大いに評価しています。

それゆえに、筆者が仄めかしていると感じるのは、文明は進歩するも人類の本性はそのまま、という事です。そしてその本性により歴史は生々流転・類似の事象を繰り返すとでも言いたげです。

 

であれば歴史を学ぶということは一体何なのか。人類の本性故に繰り返される悲劇。それに絶望しないこと?悲劇に耐えつつ、人類の本性を上回る文明の発達を期待すること(AIの進歩などまさにこの筋書きでは!?)?

疑問は絶えませんが、歴史の素晴らしいことはこうして我々を一時でも自省的にしてくれることだと思います。『人のふり見て我がふり直せ』といいますが、歴史とはまさに自らの鏡であり、他人の愚行の中に自らを見出すことだと思います。

本書はそんな歴史の良さと、人類の変わらぬ本性を思い起こさせてくれる作品でした。

 

評価 ☆☆☆☆

2022/04/22

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