海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

ヒトの認知の癖に気づく |『ファクトフルネス』著:ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド 訳:上杉周作、関美和

 

会社でとっている電子版の新聞。内容は当地(東南アジア)の日系企業がらみの記事が大半。ただ、毎週月曜日に八重洲ブックセンターでの新書売り上げと文庫売り上げのベスト10が載っており、結構楽しみにしています。そのコーナーに、数年前まあーよく目にしたのが、このタイトル。天邪鬼な私は「絶対中古で買ってやる」と息巻いていました。が近頃、子供の本が入用になることが多く、うっかりポチってしまいました。

海外からアマゾンで本を購入すると送料が結構バカになりません(1万円分で大体3千円程度)。ただ消費税は海外居住者にはかからないんです。結果本体価格約0.9万円(税抜価格!)+送料0.3万円=1.2万円程度。大好きな本がDoor to doorで実質2千円程度の上乗せで届くのならばたまの贅沢には良いか、と最近財布のひもが緩みがちであります。。。

 


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「私が見ている赤が、あなたが見ている赤とは限らない」と言ったのはヴィトゲンシュタインだったかどうだったかは覚えていませんが、一部の哲学流派では「物のとらえ方」はメインテーマの一つです。いわゆる認識論です。

哲学ではないものの、本書もそうした認識・認知に関する本です。ただ、哲学書と比べると断然面白く、個々のストーリーをベースに人間が本能的に歪んだ見方をするということを縷々説明しているものです。

例えば悪いニュースは目につきやすい。マスコミはキャッチーなものを取り上げる。結果として人は世の中は悪くなりつつあると感じる(統計等で見ると全く逆でよくなりつつある)。例えば単純化本能というものでは、人は二者択一の問いを発しがちだが(共産主義や資本主義か)、世の中では異なる考えが並立することも可能だし、要素の濃淡で特徴が出てくることはよくある(AかBかなどという物事の単純化により意思決定を迫る場合、実はよりよい選択肢が隠れている可能性がある。文系人間・理系人間なんて言いますが、実生活をうまくやるにはどちらの要素も大切)。

ちなみに筆者は公衆衛生の医師であったため、ストーリは幼児の死亡率とかアフリカでの流行病の話とか、筆者の医療関連の体験談が多いという印象です。

 

認知の方法を正した後は?

で、すこしだけ、イチャモン。この本ですが、確かに自分の見方を省察し、誤った認知を正す切っ掛けになると思います。それは世界・社会を理解するうえで非常に役に立つと思います。で、もちろんですが、その見方をどう他人に伝えるか、変わった認知をもってどう社会を変えていくかは全く別の話であり、その先については言及はありません(もちろんそういうテーマの本ではないのですが)。何が言いたいかといいますと、うちの会社にいるような小賢しい蘊蓄たれが増えても、世の中全く良くならんのではないかと笑(筆者の本書での主張から類推するならば、それでも世界は良くなっていると主張するでしょうが)。

よりよく見える・認知するその先には、きっと筆者の思うより良く生きるみたいなイメージがあったのだろうと想像します。その筆者の思い描くよりよく生きる姿が描かれていたとしたらもっと面白かったのにな、と感じました。

 

おわりに

ということで知的好奇心をくすぐる本でした。人間が数式的な合理を必ずしも選択(認知)していないという観点の内容ですので、行動経済学とかがお好きな方にはお勧めできると思います。

 

評価     ☆☆☆☆

2022/06/13

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