最近集中力に欠けています。10月はPride&Prejudice(Jane Austen)を読んでいたのですが、英語が難しく全く集中できず、遅々として進まず。結局忙しさにかまけて読まなくなってしまい、挫折。積読棚へ移行しました笑
英語は習慣的にコンスタントに触れていたいので、取っつきやすさ第一でこちらをチョイス。実はそこまで取っつきやすい英語ではなかったのですが、結果的には大満足な読書体験でありました。
シャーロック・ホームズシリーズは今まで映像モノは随所で見ていたものの、書籍では初めてでした。1884年に医業の余暇(!)で綴った処女作、いやあ面白かったです。多才な人は羨ましいですね。
英語はちょっと難しい
さて本題。内容は非常に面白く、殺人舞台、被害者、それを推理するホームズも、すべてスリリング。ただし、英語はどうもとっつきづらい。これが第一印象。
これまでアガサ・クリスティの作品をいくつか読んできましたが、辞書を引いた単語は1ページに2,3語とか、調子が良いと数ページ辞書を引かずともすらすらと読めるものでした。しかし、本作ではコンスタントに1ページ10単語程度辞書を引いています。
この英語の難しさはひょっとすると一つのセッティングかもしれません。作中ではワトスンはアフガニスタン帰りの負傷兵(衛生兵?)で前線から戻ってきた医師という設定。その彼の一人称で物語がつづられてゆきます。医者からの視点なので、殺人は毒殺であるとか、鼻孔からの出血だとか、動脈瘤破裂だとか、そういう医学用語が多かったのは一つの理由かと。またホームズも謎のインテリといった描写をされています。やや気取った風の紳士を描写するのに、難しめの単語が多用されたのかもしれません。ま、単に私の英語力がないだけだったという可能性は多分にありますが笑。
後半の自然描写、情景描写がまた良い
前半は殺人事件とその推理に費やされますが、後半から46ページ(全体の3割強)に渡り、舞台を米国中西部の現ユタ州へと移します。遭難した開拓者とそれを助ける移動中のモルモン教徒との邂逅。やがて彼らがソルトレイクシティへ定住する様が描かれます。遭難の様子も生々しいのですが、初期のモルモン教のポリガミー・一夫多妻制やそれに反対し逃げ出したかつての遭難者父子らの様子は、新宗教からの脱退者かのようでした。この追走劇も手に汗を握るものでした。
米国に住んだことはありませんが、個人的にはモルモンは毛色はちょっと違うけど、まあまだおとなしめ?の宗教のカテゴリに今では入っているという印象でしたので、本作での邪教的扱いはちょっと驚きでした。こちらは米国の史実もベースにしているようですので、改めて米国の歴史のダイナミズムに畏怖にも似た思いを持ちました。
で、エンディングですが、なかなかキレイに終わります。勧善懲悪的な結末ですかね。まあハッピーエンドと言ってよいのだと思います。内容は読んでみてのお楽しみです。
おわりに
ということで、古さを感じさせない、まさに傑作といってよい作品であると感じました。殺人と不可解なトリック、これを解き明かす探偵。なんと、刑事ものの枠組みは今から150年前に既にここで示されていたことに驚きです。
気取った英語も学びたいので他の作品も読んでみたい気もします。探してみると、Kindleで全集みたいのが数百円という非常なる廉価で売っているんですよね。
この安さにはつられますが、紙の手触りを感じながら一冊一冊読むのもまた捨てがたいんですよね。悩むなあ。
評価 ☆☆☆☆
2022/10/28
モルモン教については当初の一夫多妻制(現在は廃止)のため、ソルトレイクが米国に併合される際にひと悶着あった旨が森本氏の著作でも書かれていました。
アガサ・クリスティの作品は実に読みやすい。5冊しか読んでいませんがそのうち一番といえばこれ。