50年近いこれまでの人生で、2日だけ、仙台に行ったことがあります。
遥か昔ですが、東北大学(院生として)に行きたくて、一日は指導教官(になって欲しい)の教授にテーマの面談、もう一日は入試で。
結局、一蹴、という感じで箸にも棒にもかからず不合格。以来東北には踏み込んでいません笑 ということで今現在、私の人生における仙台率はざっと0.011%というところ。
にも拘わらず、以降なんだか勝手にシンパシーを感じ、それから伊坂氏の作品を読むようになりました。
そんな伊坂氏による仙台での暮らしを綴るエッセイ。伊坂氏のエッセイとは、珍しいですよね。
概要
仙台に拠点をおく伊坂幸太郎氏のエッセイ。
震災をはさみ、足掛け8年の仙台にまつわる氏のエッセイ集。飄々としつつ、若干小心?考えすぎ?な性格がユーモラスに描かれています。
日常の偶然をユーモラスに綴る
「〇〇が多すぎる」の定型タイトルが9つもあり、途中で強引?な印象も見え隠れ。自ら設定したマイルールに縛られ相当苦労された様子。
なかでも印象的なのは「見知らぬ人が多すぎる」で、声をかけてくる見覚えのない人と氏とのやり取りを描きます。ある時はファンであったり(当然伊坂氏は知らない)、またある時は単なる隣人が声をかけてきただけだったりします(これまた「有名人になったかも?」という自意識過剰感を恥ずかしく思う)。仙台というコンパクトな町を愛し、自らの立ち位置をユーモラスに描きます。
そんな仙台での最大のびっくりは、最後の「文庫版あとがき もしくは、見知らぬ知人が多すぎるIII」に表われています。偶然声をかけてくれたファンに手渡されたCD。その名も「ソンソン弁当箱」というバンド。さらに翌日、子供の手を引いて入った喫茶店で初老の店員から声を掛けられる。「昨日息子に会っていただいたようで」。なんと偶然にも「ソンソン弁当箱」メンバーのお父様がその店員。さらに、こうしたことを文庫版あとがきに載せたいと編集者に話すと、「あ、ソンソン弁当箱?知ってますよ」との返答。その理由については・・・読んでからのお楽しみ!
おわりに
ということで伊坂氏のエッセイでした。
得意ではないということですが、どうしてなかなか、面白いですね(プロですからねえ)。スリラーのようにツイストを期待するわけでもないし、むしろ筆者の人となり、仙台愛が伝わってくる、ほのぼのエッセイであったと思います。
仙台に暮らしたことのある方、お仕事等でご縁のある方、今後暮らしてみたい方、伊坂幸太郎氏のファン等々にはお勧めできると思います。
評価 ☆☆☆
2023/08/12